今まで自分たちが知り得なかった世界を知り、まずは受け入れてみる。それは難しいことだけれど、とても大切なことなんだって思えてきたから。

 マリみてがイライラせずに読めるのは主人公のこういった姿勢によるところが大きいです。僕は随分とマリみては相互理解の話だなぁということを言ってますけど、この辺りの姿勢が相互理解の基本かと。自分と異なる考え、価値観、大きく言えば異なる世界の存在を認めることができるかどうかが初歩の初歩だけど最も基本。
 『最後の審判』の絵画を見て涙を流して感動する志摩子さんと、「太ったイエズス様だ」と評価する由乃さんという両極端な二人に対して、それでも二人とも大切な友人なのだと祐巳が述懐する場面が象徴的。様々な主観、評価があるのは当たり前。それを違えたからといって、大マジの対立になることなどバカバカしい。違う世界の存在を認められる人にとってはその辺りは余裕。小説やら漫画やらに関して自分と異なる評価を目にするや否や排他的に否定に走る幼稚な人々なんかと比べると、作者は遙かな高みにいます。

 本編は、旅行気分を届けてくれた点では楽しかったけど、随分と物語に起伏がない感じ。タメの部分とヤマの部分とか、伏線を張っておいてそれをちょっと意外性をもって消化とか、そういうのが全然無し。淡々とした旅行記といった趣。イタリアこそ直接行ったことはないものの、近隣諸国に行ったことがあるので僕は楽しめましたけど。

 あとは、イタリアと聞いた瞬間から出るか出るかと思ってた蟹名静が出てきたのはファンサービスを分かってらっしゃるという感じで満足。なんだってこの人はこんなにカッコいいんだ。白薔薇姉妹と蟹名静さまで、マリみてのカッコいい成分の大部分を担ってます。


現在の人気blogランキングをCHECK!



前巻の感想へ次巻の感想へ