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秘密の花園 「おまえには、ほしいだけの地面をあげるよ。おまえをみていると、地面や、そこに生えるいろんなものを愛したあるひとのことを思いだすんだ。おまえのほしい『すこしばかりの地面』がみつかったら、おまえはそれを自分のものにして、そこでいろいろなものをそだててみるんだね」

 世界中で読み継がれている名作ここにあり。
 名作たる一番の理由なんだけど、読んでて元気が出るからじゃないかなぁ。作中で人を元気にする不思議な力をコリンが「魔法」と呼びますが、その「魔法」がこの小説にも宿っているかのよう。作中で起こる元気の連鎖に読み手も巻き込まれるかのような作品です。
 この作中の「元気の連鎖」に一番感動した。まず「自然」が圧倒的な作中正義としてあって、ヨークシャーの自然の描写がこれでもかという美しい文章で綴られます。そんな自然そのものや、自然を宿した少年ディコンらと関わっていくうちに、顔色の悪い痩せた「つむじまがり」の少女だったメアリーが、健康でVividな少女へと生まれ変わっていきます。そして連鎖は連鎖を呼び、今度はそんなこんなで元気になったメアリーと関わってるうちに病弱だった(主に精神面で)コリンも元気になり……と、自然から始まる元気の連鎖が人間を強く健やかにしていきます。あとがきの瀧口直太郎氏の解説でも述べられてますが、この全ての原動力として描かれてる「自然」がこの作品の主役です。一応メアリー視点で物語は始まるんですが、最後の方では完全にコリンとクレイヴン氏の親子と自然との関係に視点が移り、メアリーは物語からフェードアウトしていくといった構成からも、やっぱり自然を主体にしてそこから元気を分けて貰ってる人々を描いた作品なのだというのが感じられます。

 自然(他、ディコンなど)→メアリー→コリン……

 と元気が連鎖していくんですが、その連鎖の最後(というか最終章ですが)の、

 コリン→クレイヴン氏

 の所が半端なく胸にキました。最後の直接対話のシーンもいいんですが、コリンが秘密の花園に初めて入って生きる決意をした日とシンクロして、クレイヴン氏もポジティブシンキングを開始し始めるという不思議が起こっていたという展開がステキ。自然やそれと触れ合う人間が生み出すポジティブシンキングを「魔法」と称した本作ですが、この神秘的なイベントを描くことでまさに「魔法」って感じを演出してるのが素敵です。

 そして、最終章で元気の連鎖がクレイヴン氏に伝わる所で、

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 奥さんの幻影と邂逅するというど級の感動ギミックが。これは反則。大切な故人と神秘的に邂逅するのは王道なんですが、これは良かった。

 「花園のなかですよ。花園にいるんです」

 この奥さんの言葉を聞いてクレイヴン氏が秘密の花園へと向かう所がラストクライマックスだと思います。感動した。


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 ◇

 これも何度も繰り返し読み返す類の作品になりそうです。名作として残ってるのはやっぱりその名に恥じぬ深みがあるモノなので、『秘密の花園』も児童書に分類されることが多いですが、大人が読んでも深みを楽しめます。子どもの時に児童書で読んだ方にも、是非一度完訳版で読んでみて欲しいです。もちろん子どもの情操教育にもこの上なく良い作品だと思います。自然のパワーを、元気の連鎖を、ポジティブシンキングの魔法を、もう一度思い出させてくれる一作です。

秘密の花園 (新潮文庫)
フランシス・ホジソン バーネット
新潮社
1954-02-02


ひみつの花園 DVD-BOX
ジェネオン エンタテインメント
2006-03-24