『マリア様がみてる～春～』／第11話「レイニーブルー」／DVD第6巻／感想:少女創作ファンブログ―The Girlls Fiction Fan Blog(GFFB)

ブログネタ：: マリア様がみてるに参加中！

　「祐巳さんには造りモノの笑顔なんてさせたくないだけ」（築山三奈子）

　素晴らしく祐巳がボロボロになる過程を描いた、見てて軽くブルーになれる破壊力のある1話。映像表現版だけに、始終雨が降ってる暗い場面で劇が展開するのといい、祐巳が雨に打たれまくる絵の痛々しさといい、（視聴者に）フラストレーションをためまくってやるぜ！という気概を感じる1話です。

　この話はとにかく、今まで肯定的に描かれてきた祐巳→祥子さまへの感情が、祐麒が指摘するように「依存」とマイナスに裏返って、それゆえに「世界は祥子さま」状態の祐巳が視野狭窄で自分で自分を傷つけていってボロボロになるお話ということに尽きるんですが、本当これでもかと祐巳が周りを見えてないのが描かれます。

　由乃が仲を取り持とうとアクションをかけてくれてたりもするんですが、この段階では祐巳の世界は、「大好きなお姉様と、それを奪っていく存在として現れた瞳子ちゃん」……と、これだけで完結してしまっているので、由乃の声も届かないんですね。

　まあ、その分、この世界は祥子さま状態の解消、「視野を広げなきゃ」の現時点で作中最高の祐巳のステップアップが描かれる、続く「パラソルをさして」部分のカタルシスが大きいわけですが。最後に、「視野を広げなきゃ」に繋がる祐巳の救済者の一人である加東景さんがワンカットだけ登場してるのはニクイ演出。加東さんに気付かなきゃ、そして加東さんをはじめ、人はそれぞれにそれぞれの事情を抱えて生きていて、それが同時進行で進んでいるのが世界だということに気付かなければ、次回の祐巳のステップアップは為されないのでありました。今回、スルーしてしまった祥子さま以外の世界の住人である由乃の存在も、そんな過程の中で次回回収されるくだりもちゃんと描かれるようなので（次回予告より）何より。次回予告、次回は祥子さま以外の世界へ祐巳が視野を広げていく話なので、沢山の新キャラが登場します。加東景さん、弓子さん、青田先生、そして青い傘にまつわる直接は見えぬ善意の人々。初ビジュアル化されるそれらの新キャラとの関わりを得て祐巳が復活していく下りが今から楽しみです。

　◇

◇他、ピコポイント

・三奈子さまのアドバイス

　なんか流れ的にはこの人の話が祐巳の瞳子への警戒心、嫉妬感情に火をつけたようになっちゃってる気がするんですが、久々にカッコいいポジションとして描かれてるんで、ここも、三奈子さまは善意を持つ祥子さま以外の他者の一人というポジションだったと解釈。しかし、三奈子さまのこの話が入るということは、この二股嫉妬の話を描いた原作『インライブラリー』収録の「チョコレートコート」も映像化する気あるのかもとちょっぴり期待してしまいます。カタルシスも何もないお話なので映像化するメリットが無さ気なんですが、そこをあえてマーケティングを度外視して映像化するみたいな。

・象徴表現

　「傘」がすばらしく色々象徴的に使われてるのもこの一連のお話の特徴ですが、「私の大事なものを取らないで」「この傘は私だ」と、祐巳の口から分かりやすく言語化して視聴者に伝えてることで、アニメ版だけでも象徴性に気づけるように優しい作りにしてあると思いました。そんな祥子さまにも重なる「私の大事なもの」＝「青い傘」がどういう過程を通って祐巳のもとに帰ってくるのかが、このお話のクライマックスでしょう。

　◇

　第2シーズン『春』も残すところあと2話。ラストはやはり『レイニーブルー』～『パラソルをさして』の紅薔薇物語。ラスト3話で描くって、4話連続で描かれた志摩子さん白薔薇物語より少ないんじゃね！？って感じですが、それが作中の白薔薇の大きさ。ラスト３では白薔薇姉妹は影が薄いのでバランス的にはこれでいいのかもだ。

マリア様がみてる~春~ 6