2007年08月04日

カレン坂高校可憐放送部/感想/ひびき玲音・鈴本紅/コバルト文庫

 ――オレはこの肝試しの夜のことを、絶対、忘れないと思う。(榊木徹)

 『マリア様がみてる』のイラストレーターのひびき玲音先生が原案、ほのぼの系の表紙といった前情報に安堵し、女の子同士で抱き合ったりしてる第1章……までを読んでほのぼの青春学園小説かーとか思って油断してると、とんでもないことになります。
 第2章でタイトルにも入ってる舞台となるカレン坂高校の教師陣がバス事故で全滅。新体制になってマスコミを賑わせている凄腕教育者が新校長に赴任したと思ったら、校舎の窓ガラスが何者かに全部破壊され、あまつさえ引きは高校の放送室が何者かにジャックされ、「憎イ、憎イ、憎イ……」の電波放送。と、飛ばしすぎだ、ひびき玲音&鈴本紅(;´Д`)

 い、一応ミステリの範疇なんだろうか、コレ?バス事故にも、窓ガラス破壊事件にも、放送室ジャック事件にも、縦軸の犯人がいて、しかも既キャラの中に隠れていると。そうだとしたら相当面白いですけど、そんなんなくいきなりバス事故とかだったらマジで考えた人頭のネジ一本外れてるなー(;´Д`)

 そんな感じで、思春期の人間関係物語の中にビックリ展開を織り交ぜたというよりは、ビックリサスペンスの中に強引に思春期の人間関係物語を入れてみたみたいな感じになってる本作ですが、一応ホクホクする感じで読書前に期待していたような思春期の少年少女の人間関係劇も組み込まれています。

 発表前のメディアで一番出張ってて、表紙でも真ん中の潮崎なちるは、実は視点キャラにはならないという構成。元気明朗な太陽っ娘ポジションで、そんななちるに元気を分けて貰ったり、憧れていたりする、その他の生徒視点でお話が進みます。

 まずは実質主人公の優月みひろちゃん。幼少の頃からのなちるの親友なんだけど、オドオドちゃんで異様にセルフイメージが低く、いつもなちるを眩しく思ってるという立ち位置からのスタート。第1章ではなちるに抱きしめられるシーンをひびき先生入魂の一枚挿絵で描かれていることもあり、ここまでは普通に仲良し女の子同士のホワホワ人間関係劇でした。そんなみひろちゃんも最後の放送室ジャック事件では、恐怖に打ち震えて涙を流す挿絵に。アレか!『ひぐらしのなく頃に』とかみたいに、日常の崩壊劇を描いているのか、コレは!

 続いてそんなみひろちゃんを密かに好きな榊木徹くん。だけど表面的にはなちると仲がイイために、なちるちゃん大好きなみひろちゃんからすると、なちるちゃんが取られちゃうんじゃないかとビクビクされているという、徹→みひろ→なちる構造。ここまでは男の子よりもなちるちゃん(ハート)という人間関係にホワホワする人間関係劇でした。そんな徹君も、教師陣バス事故全滅事件の第一報を聞いて絶句。直前まで肝試しのパートをみひろちゃんと組みたいのに面子を保つためになちると……とか、青春やってたのに(;´Д`)

 そして、残るは七尾愁也くんと及川月子さん。これまた、七尾くんはひそかに月子さんを好きっぽいんだけど、本質的にはどこかむしろみひろちゃんと同属性という、青春な関係。これまたここまでは一つの部活(放送部)内に男女が入り乱れると恋愛模様も複雑だよなーとしみじみしてる部分でしたが、そんな七尾くんも、ラストの放送室ジャック事件では、意識を失った状態で発見されて引き。そ、そのうち犯人とのバトル小説とかになるんじゃないだろうな(;´Д`)

 その他にも、放送部を扱っているだけあって、既存のマスメディア、報道のあり方について何かを訴えているような側面もあり、中々色んな要素がギュウギュウに詰め込まれている作品です。

 それでも、基本的には放送部内の人間関係を軸にした、青春物語と、上述してきた学園に忍び寄る非日常要素的サスペンス物語との二軸で進む小説でしょうか。

 いやー、非日常サスペンスに突撃した時はどうしようかと思いましたが、それでもキャラクターが非常に魅力的なので、青春時代を懐かしみながらキャラクターエンターテイメントとしても読めますね。2巻も、おそらく購入すると思います。普段は元気だけとバカななちるに惹かれそうな所を、今回はあえておどおどちゃんのみひろちゃんに惹かれてます。太陽のなちるに月のみひろちゃんみたいな関係から始まる冒頭ですが、きっとみちろちゃんが成長していって自力で光りだすお話なんだよ。

カレン坂高校可憐放送部 (コバルト文庫 ひ 8-1)

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