テレパシー少女「蘭」 2 ねらわれた街 後編 (シリウスコミックス)  あさのあつこさん原作、いーだ俊嗣さん漫画の、コミックス版「テレパシー少女蘭」1巻、2巻の感想です。
 これ、凄いお勧めです。確約もできないですが、このブログ読んでるような方は気に入る確率が高い気がする。
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 ちょっと前にNHKで放映されたアニメ版でしばらく視聴していて、途中何回か視聴逃しちゃってから見なくなったという経緯があるのですが、アニメ版とはまた別の魅力として大変良かったです。

 今回はめずらしく絵柄買いだったかもしれない。どうしても言語が専門なせいか、漫画だろうとアニメだろうと、やっぱり大事なのはシナリオだよストーリーだよ的な考えがしばらくあったのですが、これも自分で絵を描き始めるようになったからか、純粋に何だかわからないけどこの絵が好きという感覚が分かるようになってきました。いーだ俊嗣さんの描く絵に、なにかズキューンと撃ち抜かれてしまったのでした。この翠の可愛さは反則であった。

 さらに凄い好きになってしまった要素として、あんまり漫画、アニメ方面にキャラクターが記号化されていないこと。特にサブカルチャーというか、いわゆるオタクがターゲットの漫画・アニメだと、美少女でも百合でも、ある程度キャラクターがパターンの組み合わせになっているというか、もっと分解して要素を集合させた記号表現になってる感を時々感じることがあるのですが、この漫画版「テレパシー少女蘭」は、なんだか記号には還元できない、これは強引に記号に還元して評したら返ってバカを見るなというレベルで、生きた人間の少女が描かれています。で、これはたぶん、原作のあさのあつこさんの力量がかなり影響している気がする。

 原作が実力派の小説家の方なせいか、この作品、テレパスものなんですが、いわゆる漫画・アニメの超能力ものを視聴している感覚よりは、筒井康隆の七瀬シリーズを読んでいる感覚に近いものを感じました。評価する言葉になるのか分からないですが、非常に小説的な語り方、空間の閉じこめ方を良い意味で維持しながら漫画になっている気がする。読後感が、本当一冊イイ小説を読んだ感に凄い似ておりました。

 お話面も、まあ蘭と翠のイチャイチャ方面で楽しい感じにも読めるんですが、上で書いた人間味が両者にあるので、「孤独に陥ってるテレパス少女」という使い古されたような場面でも、えらく迫ってくるものがあります。もう、孤独だった翠が蘭に出会って救われるという、そりゃ相羽さんが好きだよ的なお話なんですが、翠の孤独が凄い切実に感じられる。第3話は、これ要チェックです。

 ストーリーもあんまりネタバレしないでおきますが(アニメ版見てた人は知ってると思うけど)、二転三点する展開の中にガツッと強い構成力を感じさせる軸があって、ああ、まあ僕が言うまでもないけどあさのあつこさん凄いんだな、と思いました。

 そんな感じでお勧めです。僕は既に何度か練習に模写しちゃったくらいにお勧め。

テレパシー少女「蘭」 1 ねらわれた街 前編 (シリウスコミックス)
テレパシー少女「蘭」 1 ねらわれた街 前編 (シリウスコミックス)

テレパシー少女「蘭」 2 ねらわれた街 後編 (シリウスコミックス)
テレパシー少女「蘭」 2 ねらわれた街 後編 (シリウスコミックス)

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