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 まだちゃんと感想書いてなかったので、『おジャ魔女どれみ16』、まずは第1巻の感想です。

 イラストからして、馬越嘉彦さん描く16歳おんぷちゃんにノックアウトされる1冊。強力に、ガチャガチャでももちゃんを出すために数千円投入したりしてた、今は無きあの頃の自身の熱量に訴えかけてくる1冊。ぺるーたんぺっとんぱらりらぽん。何故に六人分の呪文を暗記していた。
 本編は、「魔法に頼らずとも、人間のいとなみの積み重ねでがんばってみる」+「バラバラになってもそれぞれの夢へエンド」だった小学生編完結の「ドッカ〜ン」ラストを、ある意味裏返す形で始まっていきます。バラバラになった六人は運命に導かれるようにまた集まりはじめ、そして、再び魔法を手に取る。否、取らざるを得ない。

 「バラバラになってもそれぞれの夢へ」という美しい響きが、ガラガラと崩れていくように始まるのが切ない。激化した不況はどれみ家の財政を圧迫し、お父さんも今では渓流釣り以外の記事も書いてなんとか火の車を回しながらやってる状況だし、はづきも学校でイジメにあったり大変だったり、あいこ家も、おジャ魔女TVシリーズ4年分を使った家族の再構築劇は、問題の中心にあったお祖父ちゃんの介護問題が、家族再生から二年も経たずにお祖父ちゃんが他界して区切りを迎えてしまっていた。

 そんな現実は厳しい、というがっかり感が漂う中、まずはどれみ、はづき、あいこの高校生になった三人が再び集まる。この三人が最初の起点なのは、TVシリーズと同じ。

 おんぷちゃんだけスタート地点が違うのもTVシリーズ準拠なんだけど、切ないのが、チャイドルとして栄華を誇って「バラバラになっても輝ける未来へ」感が一番あったくらいの勢いだったおんぷちゃんが、お母さんに介護が必要になって北海道で静養生活をしていること。そして、込み入った事情を三人に伝えられない。現実は、厳しかった。

 TVシリーズラストの誓いのごとく、バイトしたりの現実的な方法でお金を貯めて三人は北海道までおんぷちゃんに会いに行くんだけど、現実は厳しい、そう都合よく会えない。そんなこんななうちに、おんぷちゃんに危機が……。

 という所で、ついに三人はもう一度魔法を手に取る。「自分のためには使わない」という制約を新たに設けて。小学生時代のあの四年間の日々という縁をたよりに、友だちであるおんぷちゃんを探すために。

 ここがよかったですよ。もう、一旦それぞれの道へ行ってしまったんだから、あとは互いのピンチなんてどうでもよくなりそうなものです。でも、やっぱりもう一度会いに行くんだな、と。彼女たちなら、会いに行くだろうと、そう思わせてくれるだけの物語がおジャ魔女TVシリーズ四年分にはあった。当時何気なく使ってた「親友」という言葉が重い。おんぷちゃんは本当にどれみたちの親友だったんだな、と。

 そんな感じで、1巻の山場は厳しい現実を前にがっかり感漂う状態になってたおんぷちゃんが、一度はバラバラになったどれみ達と再会してもう一度立ち上がるまで、です。2011年12月刊行のこの物語に、どれだけ胸にくるものがあったか、という話です。

 おんぷちゃんはおんぷちゃんで、立ち上がるのがカッコいい。チャイドルだった自分との決別は、地味に少女時代との決別として少女創作です。「ナイショ」のおんぷちゃん回みたいに、悩んだ後は結構哲学的におんぷちゃんは立ち上がるんですが、今回もモンカゲロウの羽化する姿を見て何やら哲学的な思索にいたり、おんぷちゃん復活。し、思慮深い。厳しい現実は、チャイドル時代の栄華をバラバラにしてくれた。でも私は、またもがいて今度は本当の女優になる。

 一度ほとんど失った人間が、またダンスレッスンやらボイトレ、体力作りにと新しいものをまた作っていくために再始動していく姿は胸を打ちます。あのけっこうな自信家だったおんぷちゃんがここまでやらないとならないという。現実は厳しい。

 さまざまな伏線を張りつつ、ラストはついにももちゃんが襲来して次巻へ。失ったもの多けれど、また何かが始まってゆく感が半端ないです。「バラバラの道へ」エンドだった黄金の五人がまた集まったことが無性に嬉しい。去年のベストの一冊です。

おジャ魔女どれみ16 (講談社ラノベ文庫)
おジャ魔女どれみ16 (講談社ラノベ文庫)

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