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 という訳で、本日観てきた『映画スマイルプリキュア! 絵本の中はみんなチグハグ!』の感想です。
 ネタバレを含んでおりますので、まだ観てない方はご注意下さい。
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 『映画スマイルプリキュア! 絵本の中はみんなチグハグ!』の見所ベスト5。

第5位:幼星空みゆき

 第7話の幼い少女二人のアンとダイアナ時間的光景に向けるまなざし、第1話で転校初日にエラく意識的に準備してる……などの描写からそこはかとなく伝わっていたことですが、みゆきさんは幼少時に友達の輪に入っていけずに孤独だった時期があったことが明らかに。その頃に出会った一冊の本がニコちゃんが主人公の「笑顔で人を幸せにする」という絵本(ただし後半が破られていて結末は分からない)。ついに「つらい時こそスマイル」&「絵本好き」のみゆきさんのバックボーンが明らかに。


第4位:闇主人公勢VSプリキュア

 ニコちゃんによる物語改変後のバトル。劇中ではマイナス描写的な「(ニコちゃんの)逃避としての物語改変パート」とは分かりつつ、発想が中二病(褒め言葉としての)的で面白かったです。特に桃太郎VSキュアビューティの剣劇が燃えた。『Fate』とかやったことある人は分かると思うのだけど、この手の伝説、童話上のキャラとの戦闘についてまわるメタファーとして、「語り継がれてきた歴史ある桃太郎VSシリーズでもたかだか10年そこそこの最近の物語であるプリキュア」みたいなものがあります。伝説に、今生きてる俺たちが作ってきたものが挑む的な面白さ。

 剣劇の話ついでに語っておくと、映画のオープニングでは、TVオープニングでビューティが氷剣を抜刀するあたりの連続5カットが、プリキュア姿バージョンじゃなくて、現実の私服姿の青木さんたちバージョンで構図だけ重ねて描かれます。おそらくは、通底している「メルヘンから現実の自分へ」的な表現。スマイルプリキュア!(プリキュアでいられる&プリキュアに没入していられる)時間も終わりに向かってるのが意識される感じです。あとは、現実の当人が描き続けていく自分自身の物語。


第3位:終わらないメルヘン

 テーマを感じるにあたっては、ニコちゃん&魔王の視点で見た方がすっきりする感じです。この二人がTVシリーズの放映の方でジョーカーさんなんかが提示している「怠惰な終わらないメルヘン」に捕らわれてる側なんだと思うのですよ。約束を破ったと憎しみをみゆきさんに向け、物語改変遊戯に逃避し、誰か他人(みゆきさん)に物語を終わらせて貰うのを待っているだけ。魔王の城や魔王がニコちゃんを捉えた牢的な謎の何かが「閉じこもっていられる空間」の比喩なのかと。だから、みゆきさんに抱きしめられた後は、ニコちゃんも私はここから出ないと、みたいなことを言う。みゆきさんらプリキュア勢は自分が終わらないメルヘンから出る側というよりは(それもあるのだろうけれど)、誰かの終わらないメルヘン志向を終わらせる側なんですね。これはTVシリーズの方のロイヤルクロックが12時(終わり)を迎える近辺も楽しみです。

 敵役であるはずの牛魔王さんらが、物語が終わらないよりはイイと協力してくれる辺りが熱かったです(というか牛魔王さんエラく熱いキャラ)。あやまちに気づいてからはニコちゃんも頑張るんですが、敵役たちもニコちゃんもプリキュアらも、「終わらせるため」に立ち向かっているという切なさが、ずっと奥の方に流れ続けていてよかったな。ずっと都合のよい改変メルヘンの中にいてもよかろうに、とも思うけど、でもそこはいつか自分で終わらせる類のものだ、という話。


第2位:あなたもいて欲しいの

 魔王は正体自体は小さい可愛らしい存在なあたりからも、孤立して閉じこもった後に自我だけ肥大して憎しみや暴力に転化してしまってる人やら社会やらの比喩なのかと思います。そういう人を相手にどうすればいいのか、という部分において、解答は優しかった。


 その世界には、あなたもいて欲しいの。


 笑顔あふれる世界という、それ自体がメルヘンかもしれない理想をウルトラ形態になったみゆきさんが語った後、抱きしめて決着。これは愛ですな。『オールスターズNS』の志水監督(フレッシュの監督でもあられる)が、インタビューで、より強くなった敵をさらに強くなったプリキュアが打倒するのでは終わりがないから、そうなると愛しかない、というようなことを語っておられたのに通じます。全体的に、DXとNSの違いは、打倒から愛で抱きしめるへ、応援する側からあなたが主人公へ、だと感じています。

 劇中でみゆきさんが折れそうになった時、救ってくれたのは日野さんから始まるみゆきさんのことが大好きだという、愛と承認。やさぐれてたニコちゃんの心が一区切りついたのも、みゆきさんが抱きしめたのと、謝罪と大好きが伝わったから。全体的に愛しているという承認がキーだと感じました。「あなたが大好き!」って 誰かが思ってる(うちやえさんのS☆S主題歌より)、の精神。

 これはなぁ。所詮児童向けアニメといえばそれまでなんだけど、実際に孤立してる人、閉じこもっている人、かつやさぐれて乱暴になってる人がいたとして、現実でも王道の解法はこれしかない気がする。

 そして、そういう魔王のような孤立し、閉じこもり、それらが憎しみや攻撃性に転じてる人に、そういう愛を伝えられる人の強さの源泉がどこにあるのか。

 それこそが、児童時間(メルヘン時間)で受け取った愛情なんだ、という話なんだと僕は思った。怠惰なメルヘンからは出ないといけないし、児童時間が永遠に続くというのもあり得ないんだけど、でもやはりそこには意味もあった、という物語なのだと。

 魔王を抱きしめる時、ニコちゃんがちょっとみゆきにめくばせして一言言うのね。なんでみゆきさんが魔王(孤独な人)を抱きしめることができるかっていったら、やっぱり児童期の孤独だった頃に、ニコちゃん(メルヘン時間)から貰った笑顔と愛があるからなんだろう。

 僕は第19話のピース回が死ぬほど好きで、この回だけはDVD買おうと思ってるのですが、あのエピソードもそういう話なんだよね。あの台詞は半分暗記してるくらい好きなんでまた引用。


 私はパパからいっぱいの愛をもらったおかげで、人に優しくしようって思える。
 優しさはきっと、人から人へと伝える愛の表現なんだ。
 あなたに愛がないのなら、パパからもらった愛を受け取って。



 ここ最近の半分考察っぽい話では、メルヘン時間(児童時間)は、その時間が終わった後、当人が厳しい現実で生きていくための糧になる、みたいな話なのかなとだけ思っていたのですが、そこからさらにもう一歩先にいくのですね。孤独だったり閉じこもってたり、攻撃的になってる他人がいた時に、自分がメルヘン時間(児童時間)に貰った愛を、伝えることができる。それが最強の武装。やよいさんが児童時間にお父さんから貰った愛を敵に伝えるのと、みゆきさんが自身がメルヘン時間に貰った承認・居場所を、それが大切だと知っているからこそ魔王に与えてあげるのとが、重なってみえましたよ。

 ミラクルライト演出には、ここ最近の劇場版には何かしらコンセプトがあるのが通例になってきましたが、今回のミラクルライト(つばさライト)にはおそらく二つの意味があると思いました。一つ目は、ライトをふると物語が終わる。ずっとメルヘンとしてのプリキュアを見ていたいとしても、それはちゃんとあなた自身がライトをふって終わらせて、あとは自分自身の現実の物語を生きていこう。そしてもう一つが、あなたが児童時間(メルヘン時間)に貰った愛を分けてくれたら嬉しい、だと思う。言葉としては笑顔の力を求めているのがそんな感じ。少なくとも小学生前くらいの年齢までは育って、劇場に連れてきてもらってる子供視聴者がメイン層です。当人たちはまだ分からなくても、お父さんお母さんから児童時間の愛情を受け取ってここまできたはず。その結果としての笑顔。だから少しだけそれを分けてくれ、次の誰か(それはもしかしたら寂しい人かもしれない)に伝えてくれ。そのためにライトをふってくれ。そういうようなコンセプト。

 これはなぁ。所詮児童向けアニメと言えばそれまでだけど、そういう考え方自体がメルヘン的に過ぎないのかもしれないとは作り手も考えながら作ってるかもしれないとは思うけれど、パワーゲームで殺伐としてる現実への、一つの解法のような気がするなぁ。リソースを奪い合って闘争するのではなく、受け取ったリソースを次の誰かに伝えることで繋いでいけるような世の中を、夢にはみたい。そんな映画。


第1位:あとは当人が物語の続きを書く

 みゆきさんの愛を受け取った結果、ニコちゃんもやさぐれはおさまり、魔王もあばれるのをやめて等身大に。逃避としてのメルヘン時間は終わりです。

 そこで、ニコちゃんが物語の白紙の後半は自分で書く宣言。他人(みゆきさん)に結末をゆだねていたところから、自分の物語は自分で描いていくと変わっているところでフィナーレを迎えています。厳しい現実かもしれないけれど、もしかしたらバッドエンドかもしれないけれど、それでも、自分で書き続けよう。

 こっちの物語論的なテーマの帰結もさることながら、そういう風に自分の物語を生きられる、始められるようになるためには、前提として承認とか愛情とか受け取る必要がある、という方に僕は目がいった映画でした。そして、そういう愛とか承認は、児童時間(メルヘン時間)に誰かから貰ったもの。当然親からかもしれないし、絵本からかもしれない。プリキュアからももらってくれていたらいいな、みたいな。最後にニコちゃんから「大好き」の承認を返されたみゆきさんが、ついに涙を流して泣いてしまうというのも切なカッコいいエンディングでした。つらいから笑う女の子だったのに、嬉しかったから泣いてしまう。だけど、最後は嬉しいから泣きながらスマイル。本当に、孤独は寂しいのを知ってる子なのですね。だから、友達からの大好きが、本当にとても大切で。

 ニコちゃんが選んだ「当人の物語」、「自分で書く自分の続きの物語」は断片的にエンディング映像で語られる程度ですが、どうも、本当に憎しみに満ちたような相手にも笑顔で愛が伝導していけるような世界を目指す気の模様。そんな理想自体がメルヘンかもはしれないけれど、児童期の大切な人から、大切なメルヘンから、あるいはプリキュアから、受け取った愛やら笑顔やら、メルヘンを終わらせた後の現実の自分の物語の中で、次の誰かに伝えられたらよいね、というような残留感。

 たいへん美しい映画でありました。

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→前回:スマイルプリキュア!第36話「熱血!?あかねの初恋人生!!」感想へ
→次回:スマイルプリキュア!第37話「れいかの悩み!清き心と清き一票!!」の感想へ
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