「疲れてる暇なんてないのよ」(剣崎真琴)

 ドキドキ!プリキュア第5話「うそ!キュアソードってあの子なの??」の感想です。
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 今回の見所ベスト1。


第1位:ステージ下のヒーロー

 「リンク」、「繋がり」がキーワードっぽい作品の中、第1話、第2話では、何かと遠い存在、まだ深い繋がりがない存在として描かれていた真琴さん(対照的に、マナ、六花、ありすは児童時間の共有体験から、最初から繋がりがあるように描かれている)。

 ドキドキ!プリキュア作中でおそらく比喩的に使われているものの一つが「扉」で、例えば第1話ではエレベータのドアが閉まって真琴が上に上がっていってしまう、というシーンで、まだマナと真琴に深いリンクがない、というのを表現していると思います。逆に例えば第3話のマナと六花の児童時代の回想シーンでは、幼マナが扉を開けて出てきて、幼六花と握手する……というシーンで、既に二人の間には深い繋がり(リンク)が児童時間に出来ていた、というのを表現していると思います。

 で、今回一度目の接触(楽屋のシーン)でディスコミュニケーションしてしまったマナと真琴なんですが、マナが反省したので、扉が開いて謎生物さんから手紙(DBさんからの。たぶんダビィが正体?)が届くのね。まだ、リンク、繋がりは切れてないよ、断絶して終わった訳ではないよ、会いに来てよ、と。第3話が六花と家族が手紙でリンクを繋いでいる話で、マナはそんな手紙(人と人とを繋ぐものの象徴)を守ろうとする、という話だったので、ここで手紙がアイテムとして出てくるのに深みを感じます。もっと昔からのプリキュアシリーズのファン的には、ディスコミュニケーションを乗り越え得る希望を抱いて「会いに行く」がテーマだった『Gogo!』でも重要アイテムとして手紙が使われておりました。あの文脈を継いでいるのだと思いました。

 そうして途切れないリンクを願ってマナさんが真琴さんにもう一度会いに行った所で、二つ目の作中重要表現と思われる「ステージ」です。

 こちらも『フレッシュプリキュア!』以降、度々プリキュアシリーズで重要な表現として出てきていて、例えばフレッシュでは、第1話ではステージの上のミユキさんを見上げるだけだった桃園さんが、最終回では自分自身がステージの上に上がる、という全体のストーリー構成上重要な意味を持った表現でした。その流れが、昨年の映画『映画プリキュアオールスターズNS』で、普通の一般人である私(坂上あゆみさん)自身がステージに上がる、その時自分もプリキュアだ、という文脈で結実していたりしました。おそらくそういうプリキュアシリーズ全体の流れも今回のドキドキは継いでいて、だとすると、剣崎真琴さんは、今は「ステージの上の人」ということになるのだと思います。今回のキュアソード登場シーンも、めっちゃステージ上で、引き続き、「ステージの上のまだ遠い人」表現だと思います。

 それを踏まえて、ラストのステージ上の握手会に、プリキュアじゃなく普通の人としてマナさんが、真琴さんに会いに行くシーンのやりとり。


 あの、あたし気づいたんです。まこぴーにとっての歌と同じように、あたしにもやらなくちゃいけないステージがあることに。
 まこぴーみたいに素敵にはできないんですけど。それでも一生懸命ベストを尽くして頑張りたいと思います。

 あなたのやりたいことって、何?

 みんなの笑顔を守ることです。



 ステージ上のアイドルでみんなを笑顔にするという真琴に対して、自分はステージに上がれるような(素敵にできるような)存在ではないのだけど、ステージの下でもみんなの笑顔を守るよ、とマナさんが言うシーン。

 もっと言うと、第1話登場シーンの行ったり来たりする描写などから、ステージの上と下を行ったり来たり、繋いだりするヒーローがマナさんなのではないかと感じます。

 前作スマイルプリキュア!が、メルヘン時間を終わらせる。ある意味ステージから降りても厳しい現実で頑張ってみるよ、みたいな帰結だったと解釈してるので、そういうステージ下で生きている人なりに、頑張っていくさ、みたいなヒーロー像は、本当スマイルの次の物語の主人公という感じがしています。今話の「あたしにもやらなくちゃいけないステージ」がある、自分のステージがあるという話は、「自分の物語を始める」というスマイルのラストから本当繋がっている感じです。

 映画ハートキャッチプリキュア!で描かれていた、名もなき通りすがりのパリの人がMVP、スマイル本編での、一般人のモブキャラかもしれないけど警官の人もメルヘン時間の守り人、みたいな流れです。もっと言うとTJさんなんかが最近書いていたように、東映特撮からウルトラマン(『ウルトラマンサーガ』は僕はまだ未見ではありますが)、そしてプリキュアまで、震災以降のヒーロー像を模索した過程の中で生まれてきた、ステージ下のヒーロー、ステージの上と下を繋げられるヒーロー(時にそれはメルヘンと現実とか、本物とニセモノとか)、というヒーロー像なのかなと思います。

 児童時間の共有体験を糧に立ち上がる、まではスイート〜スマイルでやっていたと思うので、今回は児童時間の共有体験組(マナ、六花、ありす)と、ステージ上の人(真琴)が、まず握手できるか、そこにリンクは可能なのか、という所から描いているのかなと思うと熱い作品だなと思うのでした。


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→前回:ドキドキ!プリキュア第4話「お断りしますわ!私、プリキュアになりません!!」感想へ
→次回:ドキドキ!プリキュア第6話「ビックリ!私のお家にまこぴーがくる!?」の感想へ
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