という訳で、公開初日に観てきた『映画プリキュアオールスターズNewStage2 こころのともだち』の感想です。
 ネタバレを含んでおりますので、まだ観てない方はご注意下さい。
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 今回の映画の見所ベスト1。


第1位:リンク

 毎年オールスターズの映画も、秋の単独映画と同じくその年のシリーズの主題を踏襲されて作られてると思っているのですが、今回もそんな感じだったと思いました。

 「ラブリンク!」が変身掛け声なあたりも含めて、リンクとか、愛の伝導とかが今の所ドキドキ!プリキュアでの大事な要素だと思ってるのですが、今回の映画も、分断からのリンクを描いた作品だと思いました。

 前作スマイルプリキュア!のラストが、みゆきさんがメルヘン時間を卒業して、現実で自分の物語を頑張っていくよ(というかメルヘンを体現できるように頑張っていくよ)、というものだったと僕は解釈しているのですが、そこでさっそく直面する現実の厳しさ、プリキュアに変身できなければ(メルヘンになれなければ)、みゆきさんらプリキュア少女もただの無力な女の子じゃないか問題が今回の映画では提示されます。現実で普通に生きてる人たちにできることなんてなにもない。現実なんて、そんなものさ圧力。

 そういう流れで、今回の映画ではプリキュア(メルヘン)と普通の女の子(現実)の架け橋だった変身アイテムが奪われるという展開になります。この発想はなかった。なるほどー、スマイルのテーマだった「メルヘンと現実」の話的に、それぞれが「プリキュア」と「普通の女の子状態」に象徴されていた訳だから、その間の媒介、架け橋になるのは変身アイテムか。そして、歴代を見れば、変身アイテムとして生きながらハートを持ってる謎生物たちもたくさんいるわけで。ドキドキで変身アイテムが謎生物制が復活した理由のいったんを垣間見た感じ。

 しかし、この「現実の普通の女の子には何もできない」は、みゆきさんの行動によって反駁されます。変身(メルヘン)が解除され、敗北し、身体が水晶化(プリキュアシリーズ恒例のディスコミュニケーション状態の比喩かと思われます。Gogoの時の石化とかと同じ意味合い)していく最中、側で泣きじゃくるエンエンに向かって、残された瞳で笑顔を届けます。厳しい現実だとしても、自分の物語として、昔貰った愛や優しさを今度は伝えたり守ったりしていく側に回る、というスマイルプリキュア!ラストのみゆきさん(これはやよいさんもだけど)のあり方を、本当に体現してみせる。メルヘンじゃない普通の人間にできることなんてない、というのは違う、と。彼女が第44話で誓った「優しさを守る」「愛を伝える」ということは、普通の人間にもできるんだ、と。

 エンエンに伝えたのは伝言。


 マナちゃんに、キュアハートに伝えて。ちょっとピンチ。助っ人をお願いって。


 そもそも分断作戦(変身アイテム取り上げ作戦)で歴代プリキュアたちが敗北したのが、「敵に研究され尽されていたから」なのですが、そう、まだ研究も何も、全てが未知数、可能性という最新のプリキュアがいる。おそらくは現実の世相の中、メルヘンに意味なんてあるのかと制作陣も問い続けながら制作され、それでも、新しい物語(メルヘン)を作っていくことには意味がある。続きの白紙のページに新たな物語を書く、と結論づけた『スマイルプリキュア!』。その次の新しい物語(メルヘン)があるということを、ナメるな、と。

 ここでようやくマナさんらドキドキ!組が本格参入ですが、やはり本編の最近の感想でも書いてる通り、ドキドキ!の、特にマナさんのあり方は「リンクを繋ぐ人、守る人」だと思いました。みゆきさんから伝えられたものを繋がなくてはならない。伝えられる優しさとか、守りたい。エンエンには、本当にみゆきさんから優しさや愛が伝わっていた。だから、本当はどうしたいのとマナさん達から聞かれた時、エンエンはみゆきさんのように笑顔になりたいと答える。本当に、現実にいる普通の女の子の優しさや愛が、伝導して何かを変え得る(エンエンの臆病さや閉じこもりっぽさを変えたのは変身前の普通の女の子としてのみゆきさんの笑顔という描き方になってる。そして、みゆきさんも昔は一人ぼっち気味だった)。それは例えば、スマイル本編でやよいさんのお父さんが残していた優しさが、やよいさんに伝わっていて意味を持ち得たように。孤独だったみゆきさんが昔メルヘンから糧を貰ったように。だったら、マナさんとしては、そのリンク、伝導は守りたい。ドキドキ!本編でも既に例えば第3話で、家族の優しさを伝える「手紙」を守るように行動しているのが効いています。

 そこから、幾多の分断を乗り越えて、リンク、伝導を繋ぐ、繋ぐ(マナさんたちはそれを守るのに徹して、グレルとエンエンを先に行かせる)。道が壊れた。グレルとエンエンが手を繋いで乗り越えます。あと一歩という所で、蓋で分断されて変身アイテムが取り出せない。玩具の剣にハートを込めて、二人で叩き割ります(玩具かどうかとかじゃなく、ハートなんだ)。

 そうやって繋いで繋いで、おそらく今作的には現実とメルヘンの架け橋的存在たる、変身アイテム的謎生物、プリキュアシリーズ的には初代謎生物、メップルが、ついに届く。誰に。初代『ふたりはプリキュア』の主人公、美墨なぎさにです。

 水晶化していたなぎさが、手だけで、ついにメップルを握りしめる。みゆきさんから伝えられたものが、マナさんに守られ、幾多の分断を乗り越え、ついになぎさに届くという瞬間が、エラくスローモーションの演出で描かれるのですが、これは本気でオールドファンを泣かせにかかってるなと思いました。

 今の現実の普通の女の子(みゆきさん)から、10年前のメルヘン(『ふたりはプリキュア』)に、リンクが繋がる。

 分断されていた時間が、動き出す。

 響き渡る「デュアルオーロラウェーブ!」の掛け声と共に、キュアブラックとキュアホワイト(ルミナスも!)復活は熱すぎた。今回は本名陽子さんとゆかなさんと田中理恵さんがバリバリ声をあてていたりで、これはヤバ熱い。本映画のキャッチコピー、「私たちは一人じゃない」。

 スイートでの過去の共有体験の話、スマイルで問い続けた過去のメルヘン時間に意味はあったのか? という話。この映画で返答してくれてる気がする。ハートフルコミューンとかもう売ってないですけど。現実で大きな分断ができるような出来事もありましたけど。玩具としての変身アイテムがどうこうじゃなくて、ハートが伝導してリンクした時、私たちは一人じゃないというような。そう思えるなら、過去のメルヘン時間にもやはり意味はあったんじゃ、というような。

 本名さんの気合の声のもと、無双系のゲームみたいに敵をなぎ倒していくキュアブラックがカッコいいです。武装、拳のみ。そういえばそうだった、ここから始まったんだった。

 そうして演出上の、「リンクが繋がった」後は、ひたすら歴代プリキュアたち乱舞です。スポットライト的には、パッションさんとビートさんが舞い(この二人にスポットライトが当たるのにも一応意味がちゃんとある)、ブロッサムが放ち、マリンが飛ぶ感じです。

 困難な時、それでも前への一歩を踏み出すんだと、己の理想、本然、名前の由来への到達回(第46話)で語っていたマーチから「永遠のともだち2013ver」がかかり始めるとか熱い。くどまゆさんも歌ってるとか熱い。そうして、ドキドキ組とスマイル組の共闘から、最後の山場で押されてる時、ハートが振り向いてみたら、後ろで31人のプリキュアたちも支えていた、というラストへ。10年分のリンクは、劇中に劇外に、意味はあったんじゃないか。困難な時、何かの力にはなるような類のものなんじゃないか、というような。

 最新のリンク(みゆきさんからマナへの伝言)と、最初のリンク(なぎさとメップル)が印象的に描かれることで、本当に10年分のリンクって凄いことなんじゃ、という深いところにじわじわくる映画でした。とりあえず本日は人と人との繋がりとか、現実とメルヘン(ここでは作品とか。作り手と受け手でもいいし。色々じわじわきます)との繋がりとか、そういうことに想いを馳せて、しみじみしたくなる。

 良い映画でした。

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