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 公開初日に観てきた『映画プリキュアスーパースターズ!(公式サイト:音注意)』の感想です。

 今回は全5回でお送りする予定で、その第2回です。

 第1回から順に読まれる方はこちらから。↓


映画プリキュアスーパースターズ!の感想1〜ワンオペ母に手を差し伸べる朝日奈みらいの物語(ネタバレ注意)


 それでは、第2回。

 ネタバレを含んでおりますので、まだ観てない方はご注意下さい。
 ◇◇◇

 第1回では、「過去」を象徴するキャラクターである朝日奈みらいさんが、ひい祖母ちゃん的なポジションとしてはなさんに助っ人してくれる……という部分を見てきました。

 これは、「過去」の良い感じの部分です。

 一方で、「過去」には悲しい面もあります。

 『HUGっと!プリキュア』TVシリーズ本編では、何かと「当初イメージしていた未来が思ったように実現できない」ということが描かれております。

 最近のエピソードだと輝木ほまれさんが、「過去にフィギュアスケートで『跳ぶ』ことを失敗して」、その後立ち上がれないままの時間を生きている人だというのが描かれていました。簡易な言葉でいうと「挫折」ですが、このほまれさんの場合だと「フィギュアスケートで『跳ぶ』ことを失敗した」というのが、「過去」の悲しい出来事ということになります。

 今回の映画でのこの「過去」の悲しい出来事は、はなさんがクローバーとの「約束」を果たせなかったことです。

 はなさんとクローバーとの「約束」。


 「私が、色んな世界に連れて行ってあげる」(野乃はな)


 この「閉じた」場所で孤独でいる人物を「外」の世界に連れ出してあげる……というのはプリキュアシリーズで繰り返し描かれてきた「ヒーロー」像(プリキュア像)です。

 沢山ありますが、分かりやすい映画だと、『映画スマイルプリキュア! 絵本の中はみんなチグハグ!』の魔王を連れ出す物語とか、『映画ハピネスチャージプリキュア!人形の国のバレリーナ』のつむぎさんを連れ出す物語ですね。


参考:映画スマイルプリキュア! 絵本の中はみんなチグハグ!/感想

参考:映画ハピネスチャージプリキュア!人形の国のバレリーナ/感想


 だけど、幼いはなさんは、それが出来なかった。

 「ヒーロー」にはなれなかった。

 『HUGっと!プリキュア』の広報も兼ねてると思われる『プリキュア15周年記念PV 公開 〜ふたりの勇気はわたしの「夢」でした〜』を観てみると……↓

 今回の『HUGっと!プリキュア』は作品の裏ターゲットに「昔プリキュアを見ていたような現在20代くらいの女性」もありそうです。

 彼女たちは子供の頃に「イメージしていた未来」が実現できたのか?

 実現できなかった人の方が多いと思います。

 第1話の感想から書いておりますが、「当初イメージしていた未来が思ったように実現できない」野乃はなさんは、そんな彼女らに重なるのかもしれません。

 (ヒーローのような理想の自分になるという)「約束」は守れなかった。

 「閉じた」場所で孤独でいるような人を救い出せるような、そんなプリキュアみたいな大人にはなれなかった。

 でも、じゃあ全部オシマイダーなのか?

 違う、というのが本映画、というか『HUGっと!プリキュア』という作品のコアの一つなのかなと感じます。

 じゃあどうするのかっていう、処方箋は三つ描かれていて、それぞれが今回の映画の3つのシリーズに対応しています。


 処方箋の一つ目、『魔法つかいプリキュア!』で描かれていた「過去」の「見え方」は変えられるという物語。

 第12話(感想)。一見暗くて怖い夜も、「見え方」を変えれば満天の星空という美しいものが見つけられるというのが描かれます。このように、『魔法つかいプリキュア!』では、一見ネガティブな「過去」も、「見え方」を変えられると肯定的に受け取り直していける……ということが描かれていました。

 詳しくは、2016年に当ブログで一番読んで頂けたこちらの記事を参照です。↓


参考:リコ(=Record)が過去を赦して未来に目を向け始める〜『魔法つかいプリキュア!』第1クールのエッセンス


 今回の映画だと、序盤で「雨」が最初は悲しい感じのニュアンスだったのが、「見え方」が変わると、「雨」のおかげで花が美しく見えるようになった……という象徴的なパートが描かれていました。

 同じように、今回の映画のメインパートでも、「過去」の悲しい出来事である「クローバーとの約束を守れなかった」の「見え方」を捉えなおしていく過程が描かれます。

 その、はなさんの「過去」への旅路を助っ人するのが『魔法つかいプリキュア!』のみらいさん……という構図なので、本当よく出来てる映画だな〜と思ったのでした。


 処方箋の二つ目、『キラキラ☆プリキュアアラモード』で描かれていた「失敗」を「閃き」で失敗したなりの思いがけない素敵なものに「昇華」するという物語。

 『キラキラ☆プリキュアアラモード』では繰り返しこのテーマが描かれますが、象徴的なのだと、第1話でいちかさんは変身する時ケーキ作りを「失敗」してしまうのですね。それを、「キラッと閃いた!」って言ってデコレーションで「失敗」したなりの素敵なものに「昇華」してしまう。


参考:キラキラ☆プリキュアアラモード感想/第1話「大好きたっぷり!キュアホイップできあがり!」(ネタバレ注意)


 同じノリで、本映画でははなさんからすると「過去」の「失敗」である「クローバーとの『約束』を果たせなかった」を、いちかさんの手助けを借りながら、一度「失敗」したなりの思いがけない「未来」へ続くように「昇華」するという物語が描かれます。

 「過去」の悲しい出来事の象徴のはずだったクローバーが、むしろ「未来」に向けた力であるアスパワワを供給してくれる→プリキュア(「過去」に抱いた「ヒーロー」としての理想の自分)復活→前人未到のプリキュアクローバーフォーメーションへ→鬼火さんさえも癒されるという新しい別な「未来」へ……って感じで「過去」の失敗を昇華してく流れは本当綺麗でしたよ。


 処方箋の三つ目、『HUGっと!プリキュア』で描かれている中心的な要素の一つである「応援」。

 悲しい「過去」があったとして、「見え方」を変えるとか、失敗したなりの素敵なものに「昇華」するとか、色々何とかなりそうなのは分かった。  「約束」を守れなかった「過去」=全てオシマイダーな未来……という「見え方」を変えてみよう。

 そのために、「過去」=クローバーさんに対して「謝り」にいこう。

 とはいえ、「過去」に悲しいことがあった人がもう一度「未来」に向かうのにはけっこうパワーが必要なので、一人では難しいです。「謝る」ことも、一人では中々できなかったり。そこで、「応援」というヒーロー像。

 今回の映画ではたくさんの「応援」が描かれます。既に書いたように、「過去の『約束』を果たせなかったことを謝りにいく」はなさんを、前シリーズ、前前シリーズの主人公であるいちかさんとみらいさんが「応援」するという構図もそうですし。

 一番素晴らしい表現だと思ったのは、「約束」を守れなくてオシマイダーになった未来を変えるために、はなさん、いちかさん、みらいさんがカタツムリニアに乗って移動するのですが、線路が壊されてしまって、「未来」への道が閉ざされてしまったところ。

 劇中の人物だけじゃなく、ミラクルライトで観客の子供たちの「応援」を受け取って、壊れてしまった道とは別の未来へのルート(線路)が創造される……という演出がありました。

 後ろからはまさに悲しい「過去」の象徴であるウソバーッカが追いかけてきていて、それに追いつかれて悲しい「過去」に全てが飲みこまれてしまう前に、「応援」によって、全てがオシマイとは別な道(ルート)の「未来」へ。

 「未来」への「道」という表現は『魔法使いプリキュア!』でよく使われていた表現でした。

 印象深いのは最終回。


参考:魔法つかいプリキュア!感想/最終回「キュアップ・ラパパ!未来もいい日になあれ!!」(ネタバレ注意)


 レインボーキャリッジ(想像力:創造力のカボチャの「馬車」)が、未だ未確定のワクワクもんの「未来」へと向かっていく……みたいな終わり方だったもので。

 本映画が『魔法つかいプリキュア』最終回の「次」っていう感じで、ワクワクするシーンだったのでした。

 昔プリキュアを観ていたような現在20代くらいの女性も、我々おじさんw視聴者も、何かしら「過去」に悲しみを抱えたまま、かつて目指した(ヒーローのような)理想の自分にはなれていないかもしれません。

 あるいは幼はなさんから見たクローバーのように、「過去」に、本当は手を差し伸べて助けてあげたかったのに、助けてあげられなかった人がいる……という方もいるかもしれません。

 それでも、それができなかったなりに現在を生きている我々の「未来」はもうオシマイダーなのかといったら、そこは諦めたくないわけで。

 「過去」の「見え方」・捉え方を変えられたりしないかとか、

 「閃き」を加えることで悲しい「過去」の出来事も素晴らしい「未来」に向かって「昇華」できないかとか、

 あるいはそういうことをやっていくために、「応援」したり「応援」されたりする自分にオッケーを出していくとか。

 やっていけたらイイかなって、思ったりしてしまう映画なのでした。

 『映画プリキュアスーパースターズ!』の感想、第3回以降も数日中に更新していく予定です。

▼『映画プリキュアスーパースターズ!』の感想
第1回〜ワンオペ母に手を差し伸べる朝日奈みらいの物語
●第2回〜悲しい過去も何とかなる物語
第3回〜「幸福の王子」宇佐美いちかの物語
第4回〜アニミズムとしてのプリキュアシリーズの物語
第5回〜過去の思い込みから解放される物語

→「映画プリキュアスーパースターズ! 」主題歌

「映画プリキュアスーパースターズ! 」主題歌シングル
「映画プリキュアスーパースターズ! 」主題歌シングル
Marvelous Entertainment Inc.LDC(PLC)(M)
2018-03-14


→「映画プリキュアスーパースターズ! 」サウンドトラック




 あと、何となく今年から実験的にしばらくコメント欄を開けておいてみるので、何かプリキュアの話とかありましたら〜。

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Amazon・ビデオでプリキュアシリーズを観る(初代〜ドキドキ!へのリンクまとめ)

→前回:HUGっと!プリキュア感想/第6話「笑顔、満開!はじめてのおしごと!」(ネタバレ注意)
→次回:一条蘭世さんが大事なキャラクターである理由〜HUGっと!プリキュア第7話の感想へ
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