「いいのよ、祐巳さん」

 志摩子さんはニッコリ笑っていた。

 「あのね。今のお姉様の言葉ね、私には最大級の励ましの言葉なの」(志摩子)


 この場面やヨシ。白薔薇さまの言葉が祐巳と志摩子さんで真逆に響いてるのがカッコいい。1巻から所々に散りばめられていた白薔薇さま−志摩子さんの関係の謎を解き明かす一場面です。白薔薇さまが何故志摩子さんを妹にしたのか、志摩子さんは祥子さまの誘いを蹴ってまで何故それを受けたのか、この先もうちょっと明確に語られることあるのかなぁ。このシーンだけで十分説明してるような気もするんですが。
 マリみてで自分語りをするのもナンですが、僕の構築してる人間関係は白薔薇さまや志摩子さんが構築してる人間関係に近いような気がします。あまり、べったりどっしり向かい合って付き合うということはしない。されど、読者視点の祐巳が二人の作ってる関係を理解しがたくて「間違いなく特殊な例に入る」と言ってるように、こういう人間関係作る人の方が世間的にはレアなのかもしれない。何か、僕に友達が少ない理由が少し分かった気がした6月の夕暮れ。

 物語はロサ・カニーナこと蟹名静と志摩子さんの対決という構図になりますが、世間一般の価値観を逸脱してる者同士の対決ですこぶるカッコいいです。生徒会役員選挙なんていう他一般の生徒の関心ボルテージが高い事項を、二人とも当事者でありながら自分の中では大して重要な部分に位置づけてないのがカッコいいです。二人とも見据える先はもっと別な方角です。そしてそんな二人が同じように白薔薇さまに辿り着いたというのがカッコいい。つーか白薔薇さまがカッコいい。何故白薔薇さまに辿り着いたのかという部分には、前巻の白薔薇さま過去話が効いてくるので、ホント上手く話が作られています。

●長き夜の
 こっちは祐巳が白薔薇さまと共に正月に祥子様の家を訪れるというエンタメ話。そこにはなんと柏木も……みたいなドタバタ要素アリの話。
 白薔薇さまもこちらでは普通のはっちゃけた白薔薇さまなので、これは本当番外編お楽しみ短編という感じ。トランプで遊んでる描写が濃厚です。
 マリみてで自分語りをするのもナンですが、僕もかなりトランプの七並べは得意な方なんですが、生まれてからこの方一度も一番上の姉には勝ったことがありません。学歴とか、世間一般で知力を指すとされている指数は全て僕が上なのに、どうしても勝てない。ちなみに二番目の姉には幼少時代に大富豪でこれまた一度も勝てずに敗北の屍を築きあげ、×ゲームで一生奴隷の契約をさせられたりもしました。
 自分のトランプ敗北歴を語るしかないほどに番外編要素の強い一編でした。祐巳と祥子さまの関係が一歩進んだりとそれなりに意味のある話でもはあるんですが。


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