「私、一つ解決方法知っている」(乃梨子)

 乃梨子はこんな高一はいないだろうというほど完成されています。色々なことが「分かってる」ポジションから、志摩子さんを救っちゃったりしています。とりわけ有能で、かつ余裕も持ってるってことで、僕的に作中で一番こういう立ち位置に立ちたいと思えるキャラかなぁ。
 なんというかね、もう、志摩子−乃梨子の新白薔薇姉妹はめちゃくちゃ「イイ」わ。ちょっとクラクラきてます。この二人の関係のカッコ良さは尋常じゃない。白薔薇の伝統の片手だけ繋いでるような関係がイイ。祐巳と祥子さまとか、由乃と令とか、あるいは祐巳と由乃とか、ペアでの人間関係が面白いマリみてですが、僕的に志摩子−乃梨子の白薔薇姉妹はちょっと他のペアと比べて別格。この姉妹の行く末を見届けるのを第一目的にマリみて読み続ける感じですわ。

 つーかこの「ロザリオの滴」の良さはなんなのか。志摩子さんの微細な心情を描きすぎ。64Pの短い話なのに、ラストの雨のシーンで普通に感動した。志摩子さん主観視点で書かれてたってのが大きいのかもしれない。マリみては祐巳視点で書かれる話が多いんですが、祐巳よりも志摩子さん視点の方が僕的にシンクロできたのかもしれない。
 あとは、「ロザリオの滴」では蔦子さんがニクイですな。志摩子さんほどの人間の悩みともなるとアドバイスできる人員も限られてくると。そんな強者人員の中に余裕で入ってるのが熱い。卒業エピソード時の蟹名静をシャッターを切らずに見送る描写とか、この人も実はカッコいいポジションで描かれてる人ですな。

●黄薔薇注意報
 「革命」とか「まっしぐら」とか「注意報」とか、黄薔薇関係はサブタイが面白いですな。片手だけ繋ぐことすら中々大変な白薔薇姉妹の物語を描いたのが「ロザリオの滴」だとすれば、こっちはどっぷり両手を繋いでしまってるからこそ起こる軋轢(この言葉はちょっと大げさ)の物語を描いている感じでしょうか。令も由乃も、乃梨子や蔦子さんのような達人級の人間ではないので、普通の人の等身大の悩みや心情描写が初々しく読めます。
 あとは、相変わらずの構造上の遊びというか、本巻収録の「ロザリオの滴」「黄薔薇注意報」「レイニーブルー」は同時間軸の出来事をそれぞれ志摩子さん視点、由乃視点、祐巳視点で描いたものなんで、あのシーンで由乃はこう思ってたのか、祐巳はこう思ってたのか……と読者が発見できる楽しみがありますな。同時間軸の話を飽きずに読ませてくれたのは良かった。

●レイニーブルー
 初めての「次回へ続く」で終わるお話。祐巳ボロボロ状態で次巻へ続く終わり方となっています。この時点で話を切られると、どっぷり登場人物にハマって読んでる中高生の読者は「祥子さま非道い」、「瞳子ムカツク」といきり立って次巻を待つことになりそうです。一方僕のようなある程度の本読みになると、祥子さまの事情は何なのか?ボロボロの祐巳を立ち直らせる役割を担うのは誰なのか?と、一歩引いたあたりから謎解き風味の楽しみ方で続きを待つことになります。というかこの文章書いてる現在もう次の巻読んで結末知っちゃってるんで、詳しくは次巻の感想で。後者の問いの方の解答が、上手いなーと思えるものだったので僕的に満足。


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