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 「……みんなはそれで大人らしく、乾杯の一つでもして旅立てるのかもしれないけど、わたしは、何一つ実現してないから。このままじゃ終われないっつーの」(岡町環)

 自分が何者かに尊い存在だと信じて、英語の勉強に打ち込むことで周囲と距離を置きながらもアイデンティティを保ってた少女(主人公)が、バイト先の「蟲明電気商会」なる電気店の没落に巻き込まれるうちに自分が何者でも無いことが段々分かってきて、でもそれでも諦められなくて行動を開始する……といったお話。
 勿論、「自分、何者でもないんだ」って落ち込む所から、バイタルに立ち上がる所が一番の燃えポイントです。

 そっから先は「蟲明電気商会」の没落を回避するために、仲間と協力しながらあの手この手と尽くしていく「目標に向かって邁進する型」のエンターテイメントです。「仲間」が非常に魅力的に描かれているので、その辺りはキャラクター達のコミュニケーションを笑いながら楽しめる良質エンターテイメントになっております。「蟲明電気商会」の没落を狙う敵役として型通りのぼっちゃんキャラなんか出て来たりしてね。敵役なんだけどコイツもバカで面白い。

 もう、仲間で必死になってパンダの着ぐるみを売りさばいたりといったバカな話なんですが、超好き。バカでコメディな日常の中にも恋愛アリーの将来への悩みアリーので、青春青春してる部分に妙にノスタルジーを感じてしまったりする辺りがいいんだなぁ。読みやすくて、ああやっぱコバルト文庫の小説の魅力って、こういう少年少女の悩みとそれの昇華なんかを描きながら気軽なエンターテイメントを届けてくれる所かなぁなんて思ったり。

 作者の小池雪さんという方、去年のコバルト6月号に載った「はつ恋アパート」をはじめ、短編も結構好きだったりで、コメディ調の青春モノがすごく面白いと思ってるんですが、是非、同ベクトルのヤツで新作出してくれないかなぁ。コバルトの作者コメントの部分で「いつか笑える青春エンターテイメントを書きたい」みたいなことを書いてらっしゃるんですよね。コバルトの新人賞は受賞後数冊だけ出してあとは出さなくなっちゃう方もいるんですが、是非とも青春エンターテイメントの楽しいヤツをもう1冊出して欲しいなぁ。密かに応援しておりまする。


青空のように君は笑う―僕らが起こしたちょっとした奇跡


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