
世界中で読み継がれている名作ここにあり。
名作たる一番の理由なんだけど、読んでて元気が出るからじゃないかなぁ。作中で人を元気にする不思議な力をコリンが「魔法」と呼びますが、その「魔法」がこの小説にも宿っているかのよう。作中で起こる元気の連鎖に読み手も巻き込まれるかのような作品です。
自然(他、ディコンなど)→メアリー→コリン……
と元気が連鎖していくんですが、その連鎖の最後(というか最終章ですが)の、
コリン→クレイヴン氏
の所が半端なく胸にキました。最後の直接対話のシーンもいいんですが、コリンが秘密の花園に初めて入って生きる決意をした日とシンクロして、クレイヴン氏もポジティブシンキングを開始し始めるという不思議が起こっていたという展開がステキ。自然やそれと触れ合う人間が生み出すポジティブシンキングを「魔法」と称した本作ですが、この神秘的なイベントを描くことでまさに「魔法」って感じを演出してるのが素敵です。
そして、最終章で元気の連鎖がクレイヴン氏に伝わる所で、
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奥さんの幻影と邂逅するというど級の感動ギミックが。これは反則。大切な故人と神秘的に邂逅するのは王道なんですが、これは良かった。
「花園のなかですよ。花園にいるんです」
この奥さんの言葉を聞いてクレイヴン氏が秘密の花園へと向かう所がラストクライマックスだと思います。感動した。
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これも何度も繰り返し読み返す類の作品になりそうです。名作として残ってるのはやっぱりその名に恥じぬ深みがあるモノなので、『秘密の花園』も児童書に分類されることが多いですが、大人が読んでも深みを楽しめます。子どもの時に児童書で読んだ方にも、是非一度完訳版で読んでみて欲しいです。もちろん子どもの情操教育にもこの上なく良い作品だと思います。自然のパワーを、元気の連鎖を、ポジティブシンキングの魔法を、もう一度思い出させてくれる一作です。
ところで、私が持っているのは「少年少女名作シリーズ」というふっるい分厚い図鑑の様な本で、翻訳が穏やかで優しい言葉なのです。色々な翻訳で読み比べたら面白いかもしれませんね。