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 「もう夢オチで行く、これしかないそれかきっと何かクリアしたら目が覚めるしくみなんだこれもよくある。で何をしたらいいの」

 15歳で2005年コバルトノベル大賞の佳作を受賞した真朝ユヅキさんの作品ー。
 上の台詞の如く、既存のオーソドックスなファンタジーの型をパロディにして、そこをことごとく外して紡がれる物語は愉快でした。「勇者は魔王と戦わなけりゃならない」をはじめ、様々なオーソドックスなパターンにパロディとして言及しながら、それを笑い飛ばすかのように、それとは違った愉快展開。
 結構具体的にもパロってたり。ネバーエンディングストーリーにドラクエに、あと「勇者しか抜けない剣でドラゴンを倒さなきゃ」とかはなんだ、僕あたりは『二分間の冒険』を思い出しますが(主人公が突然ファンタジー世界にという展開も類似)、もっと昔に古典であるのかな。

 あとはノリ突っ込みで進むキャラクタ同士の会話がノリが良くて、楽しい気分でサクサク読めると。15歳で書いたというのを考えると凄いなーとしかいいようがないです。

 ただその分後半が結構重い思想パートで占められちゃってるのが、なんか読後感を微妙なモノに。「他の命を奪いながらしか生きられない人間について」とか、「どうして戦争は起こるのか」とか、かなり哲学的な話がなされるんですが、この辺りが、難しすぎる問題だけに考えさせられちゃって、かといって24になる自分でもそんな明確にこうだよと解答をもってるわけじゃなく、なんだかもどかしくなってしまって普通にエンターテイメントを楽しんで終わりという風には本を閉じられませんでした。すっと作中の話に共感できて清々しくなれればOKなんですが。どうしても、大人なんで作中で示される「四季と天災の導入」などの解決策一つ読んでも、いや、自然界ってそんな単純なものじゃないしなーなどと考えてしまって微妙な気分に。それでも、この思想パートはどうしても入れたかった。エンタメな中にもこの辺りの深みを入れたかったというのが書くモチベーションなんだというのは伝わってくるので、頑張って欲しいとしか言いようがないんですが。

 今後、エンタメに徹した作品を書いていきたいのか、少し思想的な深みを追求したものを書いていきたいのか、それらの融合を目指すのか、作者さん次第なんですが、僕的にはエンタメ比重高めの方が持ち味出せるんじゃないかなと思いました。深みは、スパイスとして軽く入れるのが僕好みです。今作は、後半がオブラートに包もうとしつつも結構ガチだったんで、もう少しさりげないとなお嬉しかったです。そんな感じの一編でした。


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