今巻は自分にとっての「特別な一人」を探すお話。そんな人が見つかるなんて夢だと、綺麗事だと人は言うかも知れないけれど、それでもバートさんは原節子さんを探し、未来もそれが朱海さんなのか今は分からないけど、いつか自分もとまだ諦めない。全てが最後の「一匹の蛍」探しのエピソードに象徴的にかかってくるのが綺麗。
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その点「聖女伝説」はやられた。バートさんの「特別な一人」の原節子さん。偽物をあてがわれたんだけど、偽物のお婆さんもステキな人だったので、その想いを汲んで偽物の前でいつか映画を撮るんだという夢を語るバートさん。そこからラストの踏切のサプライズシーンに繋がっていくのがステキ。そうだよ、善意を汲みながら真っ直ぐに追いかけてれば、夢は叶うんだよ!
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相変わらず、お嬢様文化の華雅学園と下々文化の森戸南女学園との異文化ボーダーの狭間で揺れる未来というのもキーになってるお話です。サブタイにならって、華雅の方を「温室」、森戸南の方を「野」と呼ぶことにしますが、冒頭のソロリティー再訪のエピソードでは「野」の方もバカにしないでという趣旨のことを未来は語るんだけど、最後の森戸南新学期のエピソードでは「野」で「温室」的な価値観の素晴らしさを口にするのね。1巻ラストの、
ミッキーと、未来と、ミシェールと、だんだんひとつにしていけばいいんだわ。
に象徴されるように、両方の文化をクロスオーバーしながら吸収していって未来が成長していく話なんだと思うんだけど、僕的には「温室」の方を未来には少し気合い入れて頑張って欲しいなぁ。うららと恋愛観をぶつけ合うシーンでの未来の「温室」的な恋愛観はもう、今時こんな娘いねーだろという感じで圧巻に面白く、ここだけでもエンターテイメント(コメディ?)として一見の価値アリだと思うんですが、面白おかしく笑って済ませてしまうだけじゃなくて、こういう今では一笑にふされがちだけど、一昔前までは確かに美しかった価値観を、色んな所で否定されながらも持ち続けてる人って僕的には好き。最後の奥山さんの悪意と怒りの強さに関する現実・社会批判の語りに対して、人々の善意を信じたいと思う未来しかり、温室的でも綺麗事的でも、そういうのを頑張って貫こうとしてる人、ステキじゃない。
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最初の方の麗美様宅お泊まりエピソードは今の所真意は謎。未来の大事な人として、朱海さんの対抗馬として麗美さんを描写しておいて、それでむしろ朱海さんの重要度を高める意味合いだけなのかもしれないけど、なんか、麗美さんも抱えてるかのような伏線描写があるよね?未来に服全部くれちゃったりしてさ。5巻のサブタイが「永遠の麗美さま」なんで、麗美さま物語も一物語あるものと思われます。どういう話なのか期待。
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それにしても杉丸さんがステキ過ぎ。トコとペアになってさらに魅力倍増に。現在『マリみて』に様々なカップリングサイトがあるように、刊行された頃に今のようなネット文化があったら、確実に杉丸・トコカップリングサイトが生まれていたと思うんだけどどうか。最後に登場の稲子さまが面白いことも含めて、キャラクターエンターテイメントの様相を呈してきた所で次巻へ。今巻の引きが進路問題で、次巻のサブタイが「行くべきか行かざるべきか」。一体どうするんだろう、未来。
『丘の家のミッキー』シリーズ
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