ブログネタ
マリア様がみてる に参加中!
 ここ数巻は毎回最後の数ページになってサブタイの意味が明かされるんですが、今回もそんな感じです。サブタイと本筋との絡め方とか、数本のテーマが絡み合いながら同時進行とか、「黄薔薇、真剣勝負」のラスト2行とか、全体的に、お、緒雪先生おそるべし!という一冊でした。
 以下、「続きを読む」で、相変わらずの長い(笑)ネタバレ感想です。
●黄薔薇、真剣勝負

 黄薔薇物語、 最 終 回 。

 「黄薔薇○○」というサブタイで続いてきた、由乃と令の物語、もう1話くらいエピローグ的なものが入るかもしれないし、有馬菜々へと受けつがれて続いていくのかもしれないけれど、くっつき過ぎの関係から互いに自立した関係へ……というまでの物語を描いた由乃と令の物語としては今回で完結ということなんじゃないかと。

 どちらでもあり、またどちらでもない気がした。というより、由乃の心の中に棲む「令ちゃんと自分」は、それぞれ漠然とした形を形成しているものの、くっつきすぎて厳密なつなぎ目がなくなってしまっているのだった。(『レイニーブルー』/「黄薔薇注意報」P133)

 とまでくっつき過ぎていて、悪く言えば依存関係だった二人ですが、菜々の登場を期に由乃側からの令ちゃん離れ、『未来の白地図』(特に「薔薇のダイアローグ」)で描かれた令側からの由乃離れの決意……というここ数巻の展開を受けて、ついに自立へ。

 ファイナルは黄薔薇物語のファーストエピソードである『黄薔薇革命』で語られる「自分の足で立って令ちゃんと並んで歩きたい」という由乃の想いに回帰するように、「自分の足で自転車をこいで令ちゃんと並んで走りたい」という由乃の想い、原点。

 「黄薔薇革命」ではおぶってもらうという行為、今回では自転車を支えて貰うという行為がそれぞれ「まだ互いにくっついている」状態の象徴になってるんですが、それが今回の「手合わせ」の内容を受けて、ラスト2行でスっと自然に令の方から送り出す形でお互いが離れた瞬間を描いているのがカッコいいです。というか、この2行は痺れるよね。

 まだ手を離さないで、って言ったのに。
 自転車を支えていた令ちゃんの手が、絶妙なタイミングで離れた瞬間だった。


 心底スゴイです。50P弱の短編で、ここまで見事に前半の「自転車乗り」が伏線だったのか!というサプライズ付のサービスまでして、長く描いてきたテーマの完結篇をカッコよく描いてくれた緒雪先生に感謝。ありがとう令さま。一時ボケキャラ、ヘタレキャラ担当になってましたが、『未来の白地図』以降は本当にカッコ良かった。いつまでも由乃を好きで、それでいて自分の道を歩いていって欲しいです。

●仮面のアクトレス

 基本的には「仮面」が前巻の「くもりガラス」と同じものを象徴していて、それに阻まれて瞳子の本心が見えず……というお話で、瞳子視点の文章が無いまま終幕いたしました。けれど、始終祐巳視点だった前巻の『くもりガラスの向こう側』に比べて、今回乃梨子視点が入ることで、少しだけ乃梨子を通して瞳子の仮面の下が読者に伝わるというような構成になっておりました。前回よりも、ちょっとだけステップアップ。担任の先生の「いいお母さまね」という言葉に「はい、とても」と答えて届けられた上履きを抱きしめる時だけは、乃梨子には瞳子が何も演じてないように見えた……なんて辺りがそうですね。これは何なんだろう。家庭絡みで何か課題があることだけが明かされてる瞳子ですので、お母絡みで素面に戻るというのは意味深です。まだよー分からないので予想とかしないでおきますけど。
 あとは講堂裏での乃梨子と瞳子の痺れるような会話からも何か読みとれるのかもしれないんですが、ちょっと難易度高いです。『薔薇のミルフィーユ』のラストの祐巳と柏木さんの会話くらい難易度が高いです。柏木さんだけは何かを分かってるかのようなそぶりで、瞳子は当然自分の事情は分かってる、会話を通して乃梨子も何か分かってる……という所までは読者に伝わってるんですが、ボカされて核心まではよく分からないという。とりあえず乃梨子が重要キャラ化してきたんで嬉しいですかね。前巻で祐巳に瞳子絡みで少し反感を抱いていたというショートエピソードが回収され、そのショートエピソードを土台に祐巳−瞳子物語のキーパーソンに昇格してきました。楽しみ楽しみ。

 以下、「仮面のアクトレス」のピコポイント↓

◇リリアン、山百合会の現状への疑問符

 世襲制的な選挙システムへの疑問が祐巳の脳裏に過ぎり、瞳子も演説でそれを指摘しますが、そういった山百合会特権化に関する今回のお話は、そういう特権イメージの敷居を下げて薔薇の館を一般生徒に開放しようとしていた蓉子さまから続くお話でもあります。なので、祐巳の演説が蓉子さまの意志を継ぐ内容だったのにはかなり痺れました。演説前に祥子さまに抱きしめられて心に過ぎった言葉が、「包み込んで守るのが姉、妹は支え」っていうのがね、『ロサ・カニーナ』で蓉子さまが言ってた言葉ですよ。それが分かってるコアな読者としては、そこから蓉子さまの意志を継いだ演説をする祐巳という流れに痺れました。
 何気ない所ではP130の、

 「それを言うなら、由乃さん、立場がどうなろうと友達だって言ってなかった?」(祐巳)

 の部分とかね。『レイニブルー』でボロボロになった祐巳が、『パラソルをさして』で少しづつ回復してきた時に由乃が言った言葉ですよ。「山百合会じゃなくても祐巳さんとは友達でいたい」という趣旨の。蓉子さま代、祥子さま代と違って、未だに「さん」づけで呼び合ってる祐巳代ですが、唯一、由乃が「祐巳!」と呼び捨てにして抱きついてきた、あのシーンです。この辺りからも、山百合会かどうかというのはさほど重要じゃなくなっていくというか、山百合会の敷居が下がる方向に物語が進んでいくのが、これからのマリみての物語なのかもしれません。第1巻のはじめで敷居が高くて扉の前で薔薇の館の中に入るのを躊躇ってた祐巳が、最後は薔薇の館の中で、次代のそんな生徒を容易に迎え入れる……みたいな終わり方だったら綺麗ですよね。

◇紅薔薇甘えん坊展開

 一応エンディングで「仮面のアクトレス」が瞳子だけじゃなくて祥子さまにもかかってたと明かされる形で、祥子さまも卒業を前に祐巳との距離感に必死だというのが描かれますが、どうもここ数巻では、自立への一途を辿った黄薔薇姉妹に対比されて、紅薔薇姉妹はべったりなんですよね。祥子さまリリアンに残る宣言からはじまり、前巻の「お姉様の部屋と仲間の部屋は、確かに、もう何も入らないほどパンパンに満たされている(P148) 」に象徴されるイチャイチャとか、今巻の赤ちゃんがえり甘えん坊とか。

 これは黄薔薇と対比される形でこういう関係の形もありってことを描きたいのか、それとも卒業までの数ヶ月or祥子さま大学篇プラス祐巳の薔薇さま篇の後に最終的に今回の黄薔薇姉妹同様、お互いカッコよく自立し合って終わるのか、ちょっとまだ読めない所。黄色薔薇姉妹同様、妹がカギを握りそうなので、祐巳と瞳子との物語の決着とシンクロする形なのかなぁ。それだったらもの凄いけど。

◇今回の志摩子さん

 「……由乃さんの、そういうところ好き」

 ホワホワ!ホワホワ!
 『チャオ ソレッラ!』では信仰心からくる涙VS太ったイエズス様評と、宗教的な観点(笑)からも価値観が違う二人ですが、こういう志摩子さんとなら仲良くやっていけそうです。

・山百合会のミーティングで自然に司会役におさまってる志摩子さん
 なんかウケけた。でもほかに適役もいない感じなのがまたウケた。

・志摩子さんの演説は、二期続けることの利点と委員会活動との連携を強調
 めっちゃ、無難で手堅いです。手堅く勝ちにいってます。志摩子さんに比べると祐巳の演説の方がスケールがデカいというあたりが面白くなりそうな所。

 ◇

 と、今回はこの辺りで。瞳子の話は引っ張ります。「マリア様がみてる2006プロジェクト」に連動して1年くらいは引っ張りそうな勢いです。

 ↓にて、『マリア様がみてる』に関する感想などの関連コメント、トラックバックもお待ちしております。節度を守った上でお気軽にどうぞ。

▼Amazonマリみて最新商品
マリア様がみてる 仮面のアクトレス
DJCD「マリア様がみてる」1
TVアニメーション マリア様がみてる~春~ ファンディスク 1 紅薔薇
TVアニメーション マリア様がみてる~春~ ファンディスク 2 黄薔薇
マリア様がみてる~春~ファンディスク 3 白薔薇

→エンターテイメント>映画>アニメカテゴリで参戦開始


前巻の感想へ次巻の感想へ
『マリア様がみてる』感想・レビューインデックスへ