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 「気をつけてね、水奏ちゃん。ドッペルゲンガーを見ると、数日後に死ぬって話よ」

 夏なので、ああ夏なので。やっぱりこういう話がイイんじゃないでしょうか。
 去年の8月号に掲載された「温室の妖精」が、ファンタジー要素の話と見せかけて実は人為的に種明かしされる話だった!というお話だったのに対して、今回の「ドッペルかいだん」は逆に人為的に種明かしされるのかな?と思わせておいて、ファンタジー的にボカされて終わった!というお話でした。

 校門をくぐる時に最初の時も8人とカウントされたのは何故なのか、アリコという存在は何だったのか、いつの間にか消費された数枚のフィルムは誰が撮ったものだったのか……など、様々な謎が、まあ夏だからという感じでファンタジーにボカされたまま余韻を残して終了……というお話でした。

 ……だよね?(ちょっと自信なさ気に)

 も、もしかして、様々な推理材料から推理すれば人為的な現象として分かる人には分かるように描かれてるお話なのかしら?庚申塚(こうしんづか)とか、なんでアリコはいちご牛乳を買いにいったのかとか、アリコは宿舎の方じゃなくて銀杏並木道を走っていったとか、なんか、怪しい描写は多々あるんですが、しばらく考えてみたけどそれぞれのピースはハマらず。やはり、ファンタジー余韻オチの短編かぁと解釈するに至ったわけですが。

 「黄薔薇まっしぐら」とか「おじいさんと一緒」とか、緒雪先生は結構ミステリ風味に展開していくお話を書く方なので、今回も謎が重なっていく感じが面白かったです。舞台がリリアンというユートピアなんであんまり怖くはなかったけどな!

 「かいだん」は結局「怪談」「階段」「会談」を全てかけたものでした。「階段」はほとんど力業で入れた感じですが、怪談の会談は上手いと思いました。

 最後にドッペルかいだんの経緯をふまえて水奏が涼子さまの妹になる決心をするくだりで締めてるのは、姉妹の契りがキーエピソードの『マリみて』の短編らしくて好き。最後に蔦子さんがちょっと出てくるのもファンサービス。心霊写真は対象外というのも蔦子さんらしくてイイ感じでした。

 「温室の妖精」「三つ葉のクローバー」「黄色い糸」「ドッペルかいだん」と4つも短編たまってるんですね。そろそろ短編集も1冊出る頃でしょうか。本編が祐巳と瞳子の話で盛り上がってる所なんで、水ささないようにとか調整してる感じでしょうか。『バラエティ・ギフト』、『イン・ライブラリー』共に、短編をつなぐ書き下ろしのショートストーリーが面白いんでそっちの方にも期待しながら短編関係も待ちます(^_^;

Cobalt (コバルト) 2006年 08月号 [雑誌]

ドラマCDシリーズ「マリア様がみてる 長き夜の」

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