『マリア様がみてる～春～』／第12話「青い傘」／DVD第6巻／感想:少女創作ファンブログ―The Girlls Fiction Fan Blog(GFFB)

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　「受け取りたまえ、君の傘だ。その傘も、君と離れていた10日間のことを知りたいと思っているかもしれないね」（青田先生）

　ダメだ、分かっていても泣けた。作中屈指名場面の傘返還イベント。世界を広げた祐巳のもとに、今の君になら……と語りかけるように祥子さまと重なる「青い傘」が返ってきます。

　祐巳の成長を描いた『マリア様がみてる』作中屈指の名エピソードと言えるこのお話。アニメ版、勿論アニメ尺に合わせて所々圧縮しながらも、必要なシーンは全て描ききって最後の傘返還シーンに繋げてくれました。

　祥子さま依存に陥っていた祐巳のもとに、次々と祥子さま以外の世界を構成している善意の「他者」達が交わってきて、徐々に祐巳を癒し、祐巳を外の世界に開眼させていきます。聖さまの優しさ、加東景さんにドライヤーで温められた時に感じた暖かさ、祥子さまのことがどうなろうとも（山百合会というカテゴリーがなくても）祐巳が好きと言ってくれる由乃、気遣いでミルクホールに誘ってくれる少々疎遠だったクラスメイト達、何かを背負ってるらしい弓子さんとの会話、加東景さんが語る、人それぞれの事情、マイナスに見えた出来事からも「世界が広がった」と感じらたというお話……全てをうけて、祐巳は祥子さま以外の人々が様々な事情を背負いながら世界は同時進行で進んでおり、自分と祥子さまもその中で生きているのだということに気付きます。

　そして青田先生から祐巳のもとに返される「青い傘」。見知らぬ他者の善意によって祐巳のもとに戻ってきた傘に、祐巳が獲得した人それぞれがそれぞれの物語を抱えながら生きてるという気づきが重なります。青い傘が青い傘の物語を経てきたように、人には人それぞれの物語が、すれ違っていた祥子さまには祥子さまの事情／物語があったのかもしれない。祐巳と離れていた青い傘の10日間の物語、祐巳と祥子さまが離れていた10日間の祐巳の物語と祥子さまの物語、今ならその存在が分かるから、祐巳は帰ってきた傘を抱きしめることができます。

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◇他、ピコポイント

・時を超える想い

　この傘返還イベントが感動的なのは、上で書いたような祐巳のステップアップを表現する最高のクライマックスである点だけでなく、リリアンという変わらない学園で受けつがれていく「時を超えた想い」という、マリみてのもう一つのテーマも重なっているからだと思います。弓子さんと祥子さまのお祖母さまの物語が入る時点で「時を超えた想い」が入ってるお話なんですが、この、祐巳の無くした「青い傘」は祐巳のお祖父ちゃんに買って貰った傘で、お祖父ちゃんが書いてくれた祐巳の名前が入っていたこと、その名前が傘が祐巳のもとに傘が返ってくる一因を担っていること。遠い地にいる見知らぬ他者の善意だけではなく、お祖父ちゃんの時を超えた想いが傘を祐巳のもとに届けてくれたのです。そうして復活した祐巳が踏み出していける祐巳と祥子さまの関係も、実は沢山の時を超えた想いに彩られています（原作：「図書館の本」などを参照）。これがマリみてスピリット。次回、最終回の弓子さんと祥子さまのお祖母さん－祐巳と祥子さまの時を超えたシンクロ演出も技アリで描いて欲しいなぁ。

・象徴表現

　前回も書いたけど、今回も「お姉様と傘が重なって……」などと祐巳の口からモロに言語化して話してしまってることで、とにかく分かりやすくしてあります（原作はもうちょっと味わえる人だけ味わって的な直接的じゃない文芸風味）。これはタイムリー放映時は深夜アニメだったような気がしますが、一応少女小説のアニメ化だから低年齢層にも分かりやすくという配慮なのだと思います。これは、これで分かりやすくていいです。

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　というわけで第2シーズン『春』も次回最終回です。今話も、原作にはない、第01話冒頭の祐巳と祥子さまのシーンを入れるなどして、祐巳と祥子さまの関係の変遷を綴った、第1シーズンからの総決算、まさにファイナルエピソードのノリで作られています。次回のラストシーンでの祐巳と祥子さまの絵にはかなりの完結感が期待できます。まあ、3rdシーズンも制作されちゃうわけだけど、実に区切りがいい部分での第2シーズン終劇なんで、そこはそこでがっつり収束感を味わいたいと思います(^_^;

マリア様がみてる~春~ 6