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 「よし! お前のアイツに助太刀だ!」

 うん、これはバカな小説だ!(満面の笑みを浮かべながら)
 小池雪さんは2003年コバルトノベル大賞を受賞してデビューした作家さんで、女子高生がパンダの着ぐるみを売りさばくおバカ小説『青空のように君は笑う』が一冊だけ刊行されてる方なんですが、その他は2004年2月号に「KATANAボーイ+TATOOガール」、2004年12月号に「オフロード聖夜」、2005年6月号に「はつ恋アパート」…と、一年に一回くらいマイペースに短編を発表してる僕的に理想の創作スタイルを慣行していらっしゃるお方なんですが……
 いつかのコバルト欄外で「楽しい青春小説を書きたい」とコメントしておられるように、とにかく笑わせてなんぼという信念を感じる、クリエイターというよりエンターテイナーの趣が感じられるステキな作家さんです。

 今回の「ふわふわの兄貴」も凄かった。美少年で埋め尽くされ、時にボーイズラブにときめくコバルト誌上において、あえて登場する男達は体重90キロ以上でラグビー部のムキムキ巨漢達です。美少年同士の手が触れ合って、あ、ちょっとそれキュン!……みたいなニーズを想定しているコバルト誌上において、あえてそんなムキムキ巨漢達を密室に閉じこめて鍋をハフハフつつかせます。た…確かに密着シチェーションだけど!それは違うよ!萌えないよ!というか暑苦しいよ!という読者のためらいをよそに、基本設定からして強気で攻めます。

 普通の女の娘にある日幻聴が聞こえてきて、と思ったら正体は実は「ふわふわの兄貴」で……という感じの、少年ジャンプで言ったら『ヒカルの碁』とか「OVER TIME」のようないわゆる憑依モノなんですが、憑依してきたのは佐為でも鷹見くんでもありません。美しい顔の少年が憑依してきてトキメキ同居生活?知るか!という勢いで、憑依してきたのはタイトル通り「ふわふわの兄貴」です。作中ではスノーマンみたいと表記されてますが、スノーマン!『少年アシベ』のイエティ系?それならマスコット路線のカワイイ系でいけるんじゃん?という読者の希望をよそに、無駄に声は野太く、イラストの顔もいかつく、こ…これは萌えない……というか暑苦しい……と、見事に読者の希望をあいまいな笑みに変えていきます。スタンダードなマーケティング?知るか?私は私の書きたい兄貴を書くのよ!という気概を感じるロック仕様です

 されど、散々バカシチェーションを描写しきったあげく、ラスト2ページあたりで急にイイ話になるのもいつもの小池雪テイスト。今回はそんな兄貴の登場で、少々の違和を作り出してた主人公の家庭の中にあった壁が崩れていく様が描かれます。これは文庫本『青空のように君は笑う』も同じパターン。やば、走りすぎた、ちょっとバランス取るためにイイ話も入れなきゃ!的な「笑い>構成」仕様の「ボボボーボ・ボーボボ」的な作劇をしてるのかどうかは作者のみが知るところですが、いつもラストで何だか分からないけど、いい読後感になって、ちゃ……ちゃんと青春小説になってる!と読者的にも驚愕の後味の良さで終わってるのも小池雪さんテイストです。

 この「ふわふわの兄貴」、第一回ということで、なんと小池雪さん初の連載短編です。コバルト編集部が冒険に出たのか、小池雪さんがやる気を出したのかは分からないんですが、好きな作家さんなんで嬉しい。文庫本第二作も鋭意執筆中との欄外情報もありましたし、先が楽しみです。まあ、2005年6月号掲載の「はつ恋アパート」の欄外情報にも「現在2冊目を鋭意執筆中」とあったんですが、1年以上執筆しててもオールオーケー。むしろそのくらいのゴーイングマイウェイペース創作生活に痺れる憧れるです。

 な、なんか「ふわふわの兄貴」感想というより小池雪さん感想になってしまいましたが、これだけバカシチェーションを書ける人なら、きっとご本人も笑いと楽しさを愛する寛大な方に違いない!文庫本二冊目出たら買います。感想も書きます。とりあえず隔月でタイムリーに読める「兄貴」の存在に感謝しながら文庫本の方は気長に待とうと思います


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