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 みんな、泳ぎ疲れたのだろう。何だか昔の自分もそこにいるようで、祐巳は微笑ましく眺めた。

 娯楽三編の中で、この祐巳がバスの中でプール帰りの小学生達を目撃する箇所だけが、エラく解釈が難解です。
 2ページあまりの非常に短いエピソードなんですが、「3」とわざわざ一節取ってることからも、何かしら作中で重要な意味がある場面なのは確かなわけですよ。

 で、これ僕的な一つの説なんだけど、皆が乗り越ししないように一人で起きていた少女=瞳子の比喩なのではないだろうか。この「略してOK大作戦(仮)」の序盤で、祐麒が瞳子を「可愛い」と形容する場面があって、その可愛さが、祐麒曰く、

 「幼稚園児を眺めて『可愛いなぁ』って思うことない?そんな感じに近いかな」(福沢祐麒)

 という可愛さなわけですよ。これは、瞳子の一種の幼児性を指し示している場面だと思われます。そして、同じく幼児(まあ小学生だけど)を祐巳が目撃する。そして、その幼児は他の誰にも気付かれず、一人で頑張っている。そんな、ある意味孤独に奮闘する幼い少女に対して、

 眠っていた子たちのうち何人が、一人の少女の手柄に気づいているだろう

 と、祐巳だけがその少女の頑張りを知ってるんですよ。

 2ページあまりに詰め込まれたこんな祐巳と幼い少女との構図が、近刊の一人孤独に頑張り続けてた瞳子を受け入れる存在としての祐巳……という構図にシンクロしてかかってくるような気がするんだなぁ。この時点では、祐巳自身も知らず知らずのうちに瞳子の内に秘めた善意に触れているんですが(カナダ行きをとりやめて軽井沢に来てくれたことなど。だけど、この時点では祐巳は瞳子の行動の真意に気付いていない)、そんな辺りの人に気付かれない善意を実行してる少女と、それに気付いて見守る祐巳という関係が、「幼児性」「見守る姉的存在」というキーワードで、今巻時点ではまだ瞳子本人の気持ちには気付いてやれない祐巳でも、いずれは(近刊では……)という祐巳−瞳子関係にかかってくる気がする。何か、夢の中みたいな独特のフィルターをかけられて描かれてる味わい深い二ページなんですが、おそらく、ここは相当深い部分ですよ。

 以下、短編それぞれの再読感想。

●略してOK大作戦(仮)

 祥子さまがメインパーソンのお話で、結局計画を祥子さまに打ち明けてしまう祐巳という展開から、『子羊たちの休暇』から続く、祐巳−祥子さまの絆の確認エピソード……という表面上の受け取り方をよそに、一番は祐巳と祐麒の姉弟愛を描いてるお話。『マリア様がみてる 3rdシーズンOVA 2 略してOK大作戦』に一番うまくまとめられていますが、生徒会長になったものの(今巻ではまだ明かされてないけど)実力不足にセルフイメージが低くなってる祐麒に対して、『パラソルをさして』でステップアップした祐巳が、それこそ姉的にちょっと先んじてる者の立場から接するお話で、そんな先んじてしまった祐巳に複雑な、だけど愛しい感情を抱く祐麒と、そんなことには無自覚な天使な祐巳というお話。このエピソードの、祐巳・祐麒のイチャイチャっぷりは、ヤバイね。

●おじいさんと一緒

 再読してみても、相変わらず挿絵まで使ってのミスリードはヒドイ。反則技的です。まあ、僕は初読時でもタクヤくんの正体見破ってたけどね。

 他には、地味に志摩子さんと志摩子パパの関係が描かれてるあたりに今回は興味を引かれました。志摩子さんの所はパパもお兄さんも面白い人なんですが、そんな家族からみて、志摩子さん自身は自分は面白味の無い人間だと思われてるんだろうなぁ……とちょっと悩んでるくだりとか。志摩子さんのお話は、家がお寺であることを隠してた部分もそうだけど、本人のみが気にして悩んでるんだけど、実は回りはそんなことはどうでもいいくらいの愛情をもって志摩子さんを包んでくれていた……というのに、志摩子さんが成長を通して気付いていけるようなお話だと思った。自分という人間は面白味が無いのかも……なんて悩みも、実は志摩子さんは天然ではたから見てると面白いというのに、本人は無自覚なのがやはり面白い。お家問題は数少ない志摩子さん話で残ってるエピソードですが(まあ、それでも描かれなくても問題ないくらいのレベルのエピソードだけど)、家族の優しさに囲まれてホワホワと解決していきそうな気がします。やはり乃梨子と出会って変化した部分が大きいんだろうなぁ。家がお寺の自分がカトリックのリリアンにいることを深く抱え込み過ぎてた序盤の志摩子さんと、近刊で瞳子にお家問題の相談を受けても、いい意味で先延ばしにしてます発言ができちゃう志摩子さんというのは、やはり相当変わっていて、後半の方が物事に対する許容度や柔軟性が上がっています。マリみてで成長しているのは、祐巳だけではなく、先んじてる者ポジションの、志摩子さんにしてみてもしかりなんだなぁ。

 どうでも、いいけど、僕も老人になったら、タクヤくんみたいに趣味の合う女子高生と遊べるファンキージジイでありたいと思っています。

●黄薔薇☆絵日記  田沼ちさとさんや、江利子さまに嫉妬感情を向ける由乃が、近刊の由乃を知ってると、まだ幼いなぁとしみじみ。まだ、くっつき過ぎてた頃の二人。この頃を知ってるからこそ、有馬菜々が現れ、令さまが由乃からの自立を決意し……という近刊の流れが際だってきます。卒業エピソードは、黄薔薇も泣けそうだなぁ。

 ◇

 そんな感じで、気軽に読める娯楽三編。マリみては、こういう軽いお話も魅力だよね。

マリア様がみてる―真夏の一ページ

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