
祐巳は答えて欲しかった。奥に隠れている大切なもの、それが祐巳を祐巳たるものにしている何かだとしたら、それを迷わず見つけられる、と。
KOTOKOさんの『Chercher〜シャルシェ〜』は、『涼風さつさつ』までエンディングテーマでも良かったんじゃないかとちょっと思った。だって……
たとえ深い闇に はぐれて迷い込んでも 私ならば 間違わずにあなたのこと見つけられる
でしょ。まさに、祥子さま視点から祐巳を見つける、『涼風さつさつ』のテーマソングといった感じ。
◇
この話は、以前からマリみてを語るのに何回かあげてる、僕が考えたマリみてにおける人間関係発展段階表を再掲した方が語りやすいかなぁ。これです↓
第一段階:お互いをお互いのイメージでしか知り得ていない段階
第二段階:お互いがお互いを知ってるがゆえに依存し合ってしまう段階
第三段階:お互いに自立しながら助け合える段階
この表の詳しい解説は、初読時に『チャオ ソレッラ』まで一気読みした時に書いたこの記事を参照して欲しいんですが、まあ、とりあえず、物語冒頭では第一段階だった祐巳と祥子さまの関係が、今回またイメージだけで祐巳を見てる可南子→祐巳の関係に重なりつつ、だけど現在では第一段階よりははるかに強い絆で結ばれてる(主に『レイニーブルー』〜『パラソルをさして』で、第二段階〜第三段階を経過して)祐巳と祥子さまの関係を浮き彫りにするお話だよね、と。
祥子さまも、
「あの子は、あなたの外側を見て憧れた」
と可南子を評しているし、一方で、祐巳も、
「そういえば、私がお姉さまに憧れたのも、最初はオルガンで、『アヴェ・マリア』を弾かれていた姿を見て、でした」
と、自分も外側のイメージだけで祥子さまを見ていた第一段階があったことを認めているわけです。
そんな、祐巳−祥子さま的には通り過ぎた第一段階にまだいる可南子を、悪く言えば噛ませ犬に扱って、それより先に進んでる祐巳と祥子さまの絆が試され、そしてやはり強い絆が構築されていた!というのが描かれるお話。
その、より進んでる祐巳と祥子さまの絆というのが、外側だけじゃなくて、祐巳の中身を祥子さまが見つけることができるかどうか?という試練で試されるわけですが、ラストシーン、祥子さまは見事に祐巳の外側を覆うパンダに誤魔化されずに、中身の祐巳を見つけて抱きしめてあげるという、わりと、パンダが全て台無しにしてるようで、だけどパンダだからこそ感動的という、凄まじいお話。
この時点で祐巳の外側だけ見ていた可南子には、決してパンダの中の祐巳を見つけられなかったであろう。また、残念ながら、祐巳に少し先に行かれてしまった祐麒としても、パンダの中の祐巳は見つけることができなかった。それができたのは、祥子さまだけ……という祐巳と祥子さまの絆バンザイのお話。改めて読み返すと、祐麒は祐巳に先に行かれたまま(「祐巳、おまえ強くなったな。ちょっと焦るよ」など参照)このお話は終幕してるんですね。この辺りは、祐麒のステップアップが描かれるのは、近刊の瞳子の話を通してかもしれません(初対面の印象で瞳子を「可愛い」と評してる、『未来の白地図』で祐巳邸に瞳子を連れてきたのが祐麒……など、何かしら瞳子の物語にキーパーソンとして絡むかのような伏線が見て取れる)。
そして、今巻時点では噛ませ犬なんて言っちゃいましたけど、勿論可南子は否定されるべきネガティブゲストキャラなわけではなく、僕の表で言う第一段階の状態を昇華する役割が与えられているキャラだったことが、近刊まで読んでる人には明らかなわけです。それが描かれるのは、『妹オーディション』の「マリア様の星」ですね。まだ至らない人間関係の段階として否定されるのかと一瞬思われた第一段階の人間関係を、否定しないまま「マリア様の星」に送ってやるという帰結は基本全員救済のユートピア小説である『マリア様がみてる』的で、非常に感動的なのでした。その辺りの話は、再読が『妹オーディション』に追い付いた時にまた語りたいと思います(既に語ってる初読時の感想はこちら)。
◇
いやー、やっぱりこの『涼風さつさつ』のパンダオチは最高だなぁ。

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