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劇場版『Yes!プリキュア5』、『映画Yes!プリキュア5 鏡の国のミラクル大冒険!』の感想です。
超傑作。
ファイナルクライマックスの劇場の皆でミラクルライトを振ってスーパープリキュア登場の所は、これまでのシリーズで最終回でやっていた、私達だけで戦っているんじゃなくて、私達と繋がっている皆で戦っているんだというテイストを、劇中の皆だけじゃなくて、劇外の観客の皆も一緒に戦っているんだという所まで広げたメタな舞台装置で面白かったですが、そこすらシンプルな子ども向けエンターテイメントとして秀逸な部分で、大人向けには何と言ってもそれぞれの自分と戦うプリキュアさんVSダークプリキュアさんの所が深かった。
本物プリキュアのコピーのダークプリキュアさんはどういう位置づけになるのかと思ってたんですが、反撃開始前に、のぞみが、例え自分をそっくりコピーしたとしても、日々夢に向かって頑張っている自分はコピーした時点よりも成長しているから、既に過去のコピーであるあなたには負けないという趣旨のことを語って、コピーであるダークプリキュアさん=それぞれのプリキュアさん達の過去の自分という位置づけに作中で収まります。
アクアVSダークアクアあたりが一番顕著で、ダークアクアは単独の能力スペックが高いゆえに自分一人で何でもできる、やってしまうという過去のかれんさんそのものだと、劇中でかれんさん自身が言っていて、剣戟バトルの末に見事今の友だちができたかれんさんは過去の孤独な自分を打ち倒すんですが、そうやって皆がそれぞれ過去の自分を打ち倒していく中にあって、のぞみだけは過去の自分の闇夢さんと和解して「友だち」だって言って連れて来ちゃうんですね。
ここがめちゃくちゃ深かった。この映画版プリキュア5で扱ってるのは自己同一性にまつわる切なさに関してで、深読みしてるようだけど、たぶん送り手はそこまで考えて創っています。
前シリーズプリキュア5のテーマは明確に「夢」とそれを追うことの尊さな訳ですが、夢を追うということは、その夢に向かって自分を成長させていくこと。つまりは、到達点に向かって常に自分をアップデートしていかなきゃならない訳で、それこそ劇中でのぞみが言っているように、一日前の自分より今日の自分、一分前の自分よりこの瞬間の自分というように、到達点である夢に向かって自分を変化させて、成長させていかなければならない。
だけど、この作品でスポットがあたったのは、それって、裏を返せば過去の自分を殺しているってことだよね、っていうこと。
結局、過去の自分である闇夢さんと和解したのぞみですが、闇夢さんは今ののぞみを庇って消滅してしまいます。そんな過去ののぞみである闇夢さんに対して、「何で私を助けたの?」と尋ねるのぞみに対して消滅間際に闇夢さんが返した言葉が、
「何故かしらね?大好きだからかな?」(闇夢さん)
過去の自分から受ける今の自分の肯定。過去の自分が、自分が犠牲になっても、夢に向かって自分を変えていけと言ってくれている。そんな自分が好きだと言ってくれている。だから夢を追えと。
それでものぞみは夢を追う代償に過去の自分を切り捨てているという事実に何かを感じるらしくて(ここは、過去の自分をちゃんと打倒してみせた他の4人と違って、のぞみだけが何かを感じているように描かれている)、エンディングで割れてしまった闇夢さんの源になった水晶(夢を追う今の自分の代わりに死んだ過去の自分)を見に来るんだけど、そんなのぞみに対してココがかけた言葉が、
「あの子は笑ってたココ」(ココ)
という過去ののぞみの肯定。
そこで夢追い仲間であるりんさんとうららがのぞみを迎えに来て、のぞみは仲間の方に振り返って過去の自分だった水晶を残して立ち去っていくという。過去の自分へのこだわりよりも、夢に向かって共に変わっていける仲間を取るという。ラストは、残されたひび割れた水晶がかなりの時間沈黙と共に描写されて、エンディングロールへ。残留する、壊れてしまった過去の自分という切なさ。
バトルクライマックスが全て過去の自分との決別を意味しているので、始終しんみりとしたBGMで統一されていたのも画期的でした。超傑作。
◇
夢を追うということは、過去の自分を殺すということ。それは切ないことだけど、それでも追いたい、辿り着きたい夢がある。
だからこそ、作中で一番自らの夢に対して積極的なうららが、過去のうららに言い放った言葉が痛烈に決まります。
「私、そろそろ失礼します。ドリーム(夢)が呼んでいるんで」(春日野うらら)
夢が、共に追う仲間が待っているから、過去の自分になんか構っている暇はない。過去の自分も救い上げようとしたのぞみとはまた違った、明確な夢が、辿り着きたい自分があるうららなりの、強い夢追いの姿勢。
いつになくこのうららはカッコ良かった。これくらいじゃないと、女優なんていう途方もない夢は追ってられない。
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