最近フランス語を勉強しています。動機は色々あるんですが、その一つが、フランスの人と漫画やアニメの話をしたら楽しそうということ。楽しそうというか、既に学生時代にヨーロッパ圏で漫画やアニメの話しをしてきて楽しかったという経験があるので(その時は英語と日本語半分くらいでしたが)、ある程度確信に基づく自己投資でもあります。
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 しかし、「フランスでプリキュアの話がしたい」というのは、時代が違えば一種の布教欲求だった気がする。ときどき書いているプリキュアに宗教的側面があるという話は、まあ半分ネタの笑い話のつもりではあるけれど、一方で確かに抽象した部分で類似性はあるとも思います。「物語」を使って波及していく、なんていうのもそう。仏教の仏典というのは、物語を教えを伝えるのに使っているし、西欧に飛んでも宗教的な道徳なり哲学なりを伝えていくのに、物語は欠かせない要素になっています。

 鑑真っていう聖武天皇の頃に日本に来てくれたお坊さんがいて、僕はかなり尊敬しているんですが(何回も渡航に失敗しながら最後には日本にやってきた)、歴史家の人に怒られそうな捉え方をしてみるなら、自分が好きなもの、あるいはもうちょっと行って信じるもの(鑑真の場合は仏教)を伝えたいという動機で海を渡るという心理は、僕がプリキュアの話をしたくてフランスに行く、という心理にある程度通じている気がする。現代は飛行機でわりと短時間で(当時に比べれば遙かに)安全に行けてしまうために、重みは軽く感じられるけれど、それはそれだけ昔からある人間の心理的動機が、交通や通信の技術を発達させてきた結果とも捉えられる。

 大陸からお坊さんがやってきた結果、日本ではますます仏教美術が発展したけど、そういった物語(とここでは大きく括ってしまう)の伝播の結果仏像が作られたという流れは、もしかしてプリキュアが海外に伝わった結果現地で夢原さんフィギュアが売れる、とかの現象と対応関係で捉えられるのではなかろーか。日本では去年お台場で等身大ガンダムとか、既にやっちゃった感もあります。あれは、現代の奈良の大仏と言っても言い過ぎではないんじゃないだろうか。フランスに、巨大夢原像が建つ日も、近いのかもしれない。

 鑑真がやってきた時代まで話が飛んだのでついでに話してみると、その頃だと「万葉集」とか、既にプリキュアイズムの萌芽だと思う。著明な歌人から、防人に地方の農民、とにかくイイのは全部入れてみたとか、なかなかプリキュア的方向での多様性だと思う。和歌の文化からして、本歌取りなどの技法でどんどんパロディ化が進むんだけど、全部文化としてひっくるめようとしてきたあたり、たとえば続くシリーズには初代へのオマージュが見られる的な方向で、今のアニメーションにも既に通じている感が。

 真面目な思想・批評方面の業界で今タイムリーに日本的ハイブリッドみたいな概念で考えられている部分でもあるんですが、やっぱり、パロディの奏者(士)、ヒロインの女性(夏海)、パロディ(パラレル・ユウスケ)、ライバルキャラ(海東)が同じ方向を向いて同時に変身してみせるシーンがクライマックスとして「仮面ライダーディケイド」で成立するのには、何かこの国の歴史的なものがありそうです。しかも、そのシーンこそが「物語」であるというメッセージに、僕は普通に感動しましたし。

 以上、「万葉集」から「映画プリキュアオールスターズDX2」までを繋げて捉えてみようという無謀な試みでした。学生さんは卒論の題材とかに使っていいですよ(笑)。とりあえずDX2では、美墨なぎさ(キュアブラック)VSキントレスキーの腕力対決が楽しみなのだった。

鑑真 (岩波新書)
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新訂 新訓・万葉集〈上〉 (岩波文庫)
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