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 ハートキャッチプリキュア!第43話の感想補遺です。
 若干話題的に重め注意。
 ◇◇◇

 デューン様がなんで子どもの造形をしているのか考えていたんですが、

・花咲さん-親に優先して貰えた子ども
・ゆりさんとダークさん-親に優先して貰えたのか、貰えるのか物語が進行中

 とすると、

・デューン様-親に優先して貰えなかった子ども

 が一番しっくりくる気がしてきています。

 暗喩的にしろ明示的にしろそこまで描くのかはともかく、もしそうだとすると、これは中絶の問題も背後に広がっているお話。

 ハートキャッチの、「メイン4人以外のキャラクターにも物語がある」「それが縁で繋がっている」という描き方は秀逸で、何気ない情報から色んなことが読みとれる訳ですが、なんで今話で花咲母に赤ちゃんができたのか。これはご都合主義でも何でもなく、元から第二子は欲しかったんだけど、引っ込み思案で仕事に忙しい両親に本音も言えず、優先されなかった犠牲者意識を抱えていた頃の花咲さんでは、第二子はまだ早いという判断が両親にあったんだと考えるのがいちばんしっくり来ると思う(今話のかすみちゃんの悩みように、実質の(特に時間的)優先度は第二子に向かざるを得ないので)。だけど、ハートキャッチの物語を通して花咲さんは「変わった」ので、それをどこかの時点で両親も察した。だから第二子が生まれてくる運びになった。両親はちゃんと花咲さんを見ている&14歳差で生まれてきたことに必然性も出てくるということで、この解釈が僕的にはテーマ上一番しっくりきます。

 そして、今回はかすみちゃんと花咲さんを重ねた、「自分より親に優先される存在が生まれても」という話でしたが、実際、「変わった」花咲さんはこの問題を既に乗り越えていて、第二子を祝福できるかすみちゃんの先行者として描かれていました。

 本当情報量が凄いんですが、今話で「変わる」がテーマのハートキャッチの中で、印象的に「変わらない愛」の話で序盤に出て来たプリザーブドフラワーが再び出て来てるのにも意味があるし、来週がキュアフラワーとデューン様登場で、クリスマス回なのにまで色々考えてあるような気がします。

 クリスマスも、日本だと商業主義と恋愛が結びつけられて、何だかSEXしないといけない日みたいなプロモーションがされているのも事実。統計的に相関までは説明できないですが、その結果一定数の望まない妊娠が生まれているのだとしたら、それは課題先進国の文字通り課題であり問題だと思う。

 プリキュアシリーズも、GoGo!以降はクリスマス回にシンプルな恋愛を題材にしないようになってきていたり。GoGo!は「のぞみ達が夢を運ぶ側に回る」お話だし、フレッシュは「自分の子ども(シフォン)のために出撃する」話になっている。

 キュアフラワー(劇場版のキュアアンジュもテーマはこれ)に象徴されるように、自分から生まれてくる存在を尊重し続けて世代を重ねているプリキュア側に対して、もし尊重されなかった存在に焦点が当たるのだとしたら、それは確かに、そんな心なら無い方が良い。全部砂漠ならそもそもそんな苦しみもない、というような話になる。とにもかくにもプリキュアシリーズは悪役にも必ず動機があるので(GoGo!の館長だけちょっと違うけど。あれは、コミュニケーション不全、本当に解り合えないヤツもいるという象徴)、デューン様にも、何かはあるはずだと思うのでした。

 これは今の時点では漠然とした予想のお話ですが、そうすると、最後のゲストキャラには、ダークさんとサバーク博士だけじゃなく、デューン様まで入ってくる可能性もある(劇場版の男爵とオリヴィエの「親が欲しかった」という動機は、今思うと、つまり二人とも本当の親には優先されなかった……とも読める)。

 花咲さんの今話の言葉は綺麗事でも何でもなく、花咲さんにとってはただの事実だし、多くの視聴者の親にとっても事実。だから花咲さんは当たり前の幸せを貰っていた人間として、ちょっとだけ困っている人のために最後まで戦うのだと思う(ここには、相変わらず深い所までは介入できないけど、それでも、というニュアンスも含まれる)。もはや特定の邪悪な敵と戦ってるのでも何でもない、花咲さんの最後の戦いが始まっている気がする。現実の方も何らかの巨悪を打倒すれば全部解決万々歳的な時代は終わっている。フレッシュが終わった時はもうしばらくこれを越える作品には出会えない気がしていたものですが、ハートキャッチも傑作だったと思います(まだ終わってないけど!)。