「次は前蹴り」（北条響）
スイートプリキュア♪第31話「ワンツー！プリキュアキャンプでパワーアップニャ！」の感想です。
スイートプリキュア♪第31話「ワンツー！プリキュアキャンプでパワーアップニャ！」の感想です。
◇
今回の見所ベスト１。
第１位：「プリキュアの力は強さじゃなかった」
これは、個人的に最近考えている感覚的なトピックにおいて、神回な感じでした。
個人的にオリンピックに代表される近代的な価値観、「より強く、より速く、より大きく、それで勝ち抜くのが正しい」、というのにもうだいぶ前からピンときていないのですが、なんだか僕のその辺りの感覚を切り取ってくれているかのような一話でした。
前回クレッシェンドトーンの力を使うのに失敗した響さんは、当然もっと力をつけなきゃと、最初は山ごもりに空手にと、やっぱりオリンピック的な「強さ（より強く、より早く、より大きく）」をアップさせようと試みます。なのだけど、そっちの方向を出してみると、なんだか奏さんとエレンさんとはしっくりこない。奏さんはダンスで楽しくトレーニングしたい人だし、エレンさんも何やら独自の感覚があるらしい。
そういった、各々なりのトレーニング観を一通りやってみた後、事態は座禅による我慢大会、「競争」に突入します。脱落していった者が出る一方で、最後に残った者が限定された勝者の枠をゼロサムで手に入れる、という競争。ハミィとセイレーンで「幸せのメロディの歌い手」という限られた枠を競争した話など、スイートにはそこかしこにこの競争って今更どうなの感が漂うエピソードが挿入されます。そして、驚くことに、今話ではそういった苦しい我慢大会から、一人（独り）が勝ち残ることをみんなでいっせいに拒否して（きっかけはやはり響さんで、もうこの子の作中のポジションは決まってきてる気がする）、「みんなで同時にギブアップする」ということを選択してしまうという。ラディカル！
そして、みんなでゼロサムの競争をやめて、じゃあどうするか、という点が、最後の山登りのシーンで描かれます。山登りは、おそらくそのまんま、上記で近代的な価値観と言った、「より上を目指す」ということの比喩なんでしょう。
だけど、競争によってゼロサムで頂点を争うことからギブアップした響達が選んだのは、「それぞれの特性を生かして、みんなで上を目指そう」というもの。
響さんには、幸い孤独の中で身に付けてしまった、近代的な「力」がある（体力とか腕力ね）、エレンさんは俊敏さの特性を生かす、だけど、奏さんにいたっては差し出せるのは笑顔だけです。それでも、みんなで一緒に登っていきたい。まさに震災後に松山千春が言っていた、
「知恵がある奴は知恵を出そう。力がある奴は力をだそう。金がある奴は金を出そう。『自分は何にも出せない』っていう奴は元気出せよ。」
の世界です。
奏さんの「こんな感じ」の笑顔の絵がマジ天使だったので、確かに笑顔しか出せないとしても、力になるのかもしれないと感じさせてくれます。落下しかけた響さんにエレンが手を差し伸べ、奏さんが精一杯支えるという絵もイイ。
ラストの、「頂上に三人で立って同じ美しい風景を見た」。は、バラバラになってしまって連帯できない問題や、独りで競争で頂上を目指さなきゃいけないのか問題などが非常に比喩的に高度に収斂しているシーンで、気持ちよいです。
この修行パートが、しっかりと戦闘に繋がっていく展開。
「プリキュアの力は強さじゃなかった」
「困難にぶつかった時 三人の心を一つにして」
「助け合って乗り越えること」
で、響さんの近代的な強さのみでもない、三人がバラバラな訳でもない、状況が困難だからこそ同じ方向を見よう、
で、
新合体技プリキュアスイートセッションアンサンブルが発動というのも大変熱かった。相当負荷がかかる技である描写があるんだけど、前回響さん一人では耐えられなかったのが、三人だったら耐えられて発動が可能というのも色々熱い。
全体的に、スポーツや格闘のような競争前提の世界観から、芸術とかそれこそ音楽の世界観に転換して、これからはこっちの価値観なんだよ、というのを明確に押し出していった気がします。
現実の方も、ここからより強く、より速く、より大きくで、もう一度経済競争を勝ち抜こうなんてどう考えても無理で、何か新しい方策、価値観を押し出していかないとヤバイんじゃないだろうか的局面。
なんだか、ここ数話で一気に核心に迫って、非常に恒例の「時代性がある作品」になってきた気がしておりますよ。感受性に訴えかけられ過ぎかもしれないけれど、ああ、世界中が響さん的な近代的な力の価値は認めながらも（今回は、一旦はちゃんと修行するのが良いのです。ここがないとたぶん急に胡散臭くなる）、一旦ゼロサムの競争は少し置いて、各々が出せるものを出して一緒に進んでいこうと考えられるようになれたらいいのに、と綺麗事的なことを考えました。難しいこととは分かっていても、所詮弱肉強食で競争で経済原理で、それが一番なんだよとしたり顔では語りたくない感覚。この価値観、大事にしておきたい。輸出していきたい……。
→オールスターズ新作ダンス映像
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→前回：スイートプリキュア♪第30話「ワオーン！ヒーリングチェストの不思議ニャ！」感想へ
→次回スイートプリキュア♪第32話「オロオロ〜！ヒーリングチェストが盗まれたニャ！」の感想へ
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今回の見所ベスト１。
第１位：「プリキュアの力は強さじゃなかった」
これは、個人的に最近考えている感覚的なトピックにおいて、神回な感じでした。
個人的にオリンピックに代表される近代的な価値観、「より強く、より速く、より大きく、それで勝ち抜くのが正しい」、というのにもうだいぶ前からピンときていないのですが、なんだか僕のその辺りの感覚を切り取ってくれているかのような一話でした。
前回クレッシェンドトーンの力を使うのに失敗した響さんは、当然もっと力をつけなきゃと、最初は山ごもりに空手にと、やっぱりオリンピック的な「強さ（より強く、より早く、より大きく）」をアップさせようと試みます。なのだけど、そっちの方向を出してみると、なんだか奏さんとエレンさんとはしっくりこない。奏さんはダンスで楽しくトレーニングしたい人だし、エレンさんも何やら独自の感覚があるらしい。
そういった、各々なりのトレーニング観を一通りやってみた後、事態は座禅による我慢大会、「競争」に突入します。脱落していった者が出る一方で、最後に残った者が限定された勝者の枠をゼロサムで手に入れる、という競争。ハミィとセイレーンで「幸せのメロディの歌い手」という限られた枠を競争した話など、スイートにはそこかしこにこの競争って今更どうなの感が漂うエピソードが挿入されます。そして、驚くことに、今話ではそういった苦しい我慢大会から、一人（独り）が勝ち残ることをみんなでいっせいに拒否して（きっかけはやはり響さんで、もうこの子の作中のポジションは決まってきてる気がする）、「みんなで同時にギブアップする」ということを選択してしまうという。ラディカル！
そして、みんなでゼロサムの競争をやめて、じゃあどうするか、という点が、最後の山登りのシーンで描かれます。山登りは、おそらくそのまんま、上記で近代的な価値観と言った、「より上を目指す」ということの比喩なんでしょう。
だけど、競争によってゼロサムで頂点を争うことからギブアップした響達が選んだのは、「それぞれの特性を生かして、みんなで上を目指そう」というもの。
響さんには、幸い孤独の中で身に付けてしまった、近代的な「力」がある（体力とか腕力ね）、エレンさんは俊敏さの特性を生かす、だけど、奏さんにいたっては差し出せるのは笑顔だけです。それでも、みんなで一緒に登っていきたい。まさに震災後に松山千春が言っていた、
「知恵がある奴は知恵を出そう。力がある奴は力をだそう。金がある奴は金を出そう。『自分は何にも出せない』っていう奴は元気出せよ。」
の世界です。
奏さんの「こんな感じ」の笑顔の絵がマジ天使だったので、確かに笑顔しか出せないとしても、力になるのかもしれないと感じさせてくれます。落下しかけた響さんにエレンが手を差し伸べ、奏さんが精一杯支えるという絵もイイ。
ラストの、「頂上に三人で立って同じ美しい風景を見た」。は、バラバラになってしまって連帯できない問題や、独りで競争で頂上を目指さなきゃいけないのか問題などが非常に比喩的に高度に収斂しているシーンで、気持ちよいです。
この修行パートが、しっかりと戦闘に繋がっていく展開。
「プリキュアの力は強さじゃなかった」
「困難にぶつかった時 三人の心を一つにして」
「助け合って乗り越えること」
で、響さんの近代的な強さのみでもない、三人がバラバラな訳でもない、状況が困難だからこそ同じ方向を見よう、
で、
新合体技プリキュアスイートセッションアンサンブルが発動というのも大変熱かった。相当負荷がかかる技である描写があるんだけど、前回響さん一人では耐えられなかったのが、三人だったら耐えられて発動が可能というのも色々熱い。
全体的に、スポーツや格闘のような競争前提の世界観から、芸術とかそれこそ音楽の世界観に転換して、これからはこっちの価値観なんだよ、というのを明確に押し出していった気がします。
現実の方も、ここからより強く、より速く、より大きくで、もう一度経済競争を勝ち抜こうなんてどう考えても無理で、何か新しい方策、価値観を押し出していかないとヤバイんじゃないだろうか的局面。
なんだか、ここ数話で一気に核心に迫って、非常に恒例の「時代性がある作品」になってきた気がしておりますよ。感受性に訴えかけられ過ぎかもしれないけれど、ああ、世界中が響さん的な近代的な力の価値は認めながらも（今回は、一旦はちゃんと修行するのが良いのです。ここがないとたぶん急に胡散臭くなる）、一旦ゼロサムの競争は少し置いて、各々が出せるものを出して一緒に進んでいこうと考えられるようになれたらいいのに、と綺麗事的なことを考えました。難しいこととは分かっていても、所詮弱肉強食で競争で経済原理で、それが一番なんだよとしたり顔では語りたくない感覚。この価値観、大事にしておきたい。輸出していきたい……。
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