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たとえばあなたが灯してくれた胸の中の灯り。
抱きしめてくれた時のぬくもり。
重ねた呼吸。
一緒に聴いた音楽。
何気ないステップ。繰り返すことのできるダンスの身体感覚。
物理的に会えるとしても、それぞれの時間が尊いほど、尊重するほどに実際は会えなくなるものなのだな。
こちらの世界の古典的な少女小説に思いを馳せる。
四人が一緒にいた最初の小説が一番名高いけれど、その物語には四人がバラバラになった後の、二番目や三番目、四番目の続きがある。
遠くで、美希とブッキーが私たちを見つけて手をふってくる。
繋いだ手から、ラブの体温が伝わってくる。
バラバラでもバラバラじゃない。私たちの物語の続きを、新しく書き続けようと思った。
雪の結晶は体温に触れれば消えてしまうけれど、冷たい感触や白い色や、シンシンと降り続ける時に鳴っていた音たちを、私たちはずっと覚えているから。
私たちにも、そういうものはある。
私だけにも、ある。
あの時みんなが手を差し伸べてくれたことを、ずっとずっと忘れないから。
ラブが少しだけ私の手をギュっとして言った。
「せつな。カオルちゃんのドーナツの味、覚えてる?」
私はあれから少しだけ、ラブの口ぐせの感情が分かるようになった。
「もちろんよ」
周囲の静寂と、冷たさの中、私たちの音と暖かさが、静かに存在を主張している。
ラブと美希と祈里。そしてわたしと、四人が覚えているドーナツの味。
そこから少しだけ続いていく、私たちの続きの物語を願う。私たちの、この温かい感情に関する物語を願う。
そんなことを思いながら、私は少しだけ強く、久しぶりに会ったラブの手を握り返した。
2011.11.06. 「四つ葉の記憶」
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