「世界中の美味しいものを食べ歩きたい」(緑川なお)

 スマイルプリキュア!第30話「本の扉で世界一周大旅行!!」の感想です。
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 今回の見所ベスト1。


第1位:怠惰なメルヘン

 おそらくは厳しい現実とそれでも信じたいメルヘンのシーソーゲームで進んでいっているスマイルという作品。

 第24話以降の、一旦厳しい現実を乗り越えた後は、たぶんしばらく意図的にメルヘン的な時間、空間が舞台に選ばれていたと思います。海、夏祭り、田舎、遊園地、いずれも厳しい日常の現実からは遠い、非日常、メルヘン的な舞台です。で、今回の「海外」もそっちのパターン。

 ノーリスクで、メルヘン的に、あるいは怠惰に海外旅行をむさぼるスマイルの面々。それはとてもとても幸せで、ハッピーエンド後の世界にいるかのようでした。

 なのだけど、その裏でバッドエンドへの針は着々と進んでいっている。作劇上もテーマ上も、また危機はくる。幸せな児童時間的な記憶は誰にでもあるけれど、やがて終わりが来ることも知っている。オープニングにも使われている通り、一つ大事なモチーフが『シンデレラ』なのは上手い。終わりがくるのは分かってる虚構的メルヘン時間に、意味はあるのか、というようなお話。

 重要だと思ってるのは前回の第29話で、やっぱり虚構的、観覧車時間的、児童時間的メルヘン時間だったかもしれないけれど、無駄ということはなく、力を貸してくれる、が一番熱いのではないかと思っております。今の所一番好きな第19話も、バッドエンドで終わったとしても幸せだった頃の時間(お父さんが生きていた頃の記憶)が力をくれる話。児童時間に終わりがくることは分かっていても、じゃあ幸せだったあの頃がなかったら良かったのかというと、それは違う。と、僕なんかは思うのですが。大塚監督がオールスターズの映画作ってた頃、少しだけ幸せな児童時間をこの映画が演出できたらそれで本望、くらいのことをインタビューで言っておられた。今もTwitterにてちびっこが面白いことを全力で考えるとつぶやいておられる。少しだけの幸せな児童時間でも、それはいつか力になるからと思ってるからこの制作熱量は出てきてるんじゃないのかなぁ。

 全体的に、ハートキャッチ以降、序盤前半の不満点が、実は全体のテーマに沿ったもので後半裏返るパターンが多いです。ハートキャッチのプリキュアがゲストキャラの問題の本質に関わらないのは、通りすがりの助力でも少しは助けになれる、という話への前ふりだったし、スイートのメイジャー側とマイナー側に善悪が引けないもやもや感は、認識によって捉え方は変わるのだから、最後は自分のビートだ、という話へのタメでした。だからスマイルの危機感が足りないとか全体的にゆるいとかコミット感が足りないとかも、そろそろ全体の話と繋がっていくのかと思っております。こういう話は、毎年映画の頃に気づき始めるんだよなー。

→色々

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