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おジャ魔女どれみ16  Naive (講談社ラノベ文庫)
おジャ魔女どれみ16 Naive (講談社ラノベ文庫)

 小説『おジャ魔女どれみ16Naive(第2巻)』の感想です。
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 最初に軽い考察から入ると、本編中にもうすぐ北京オリンピックで中国はその準備中というような記述があります。

 北京オリンピックは2008年なので、おそらくリアル世界の2003年1月に『おジャ魔女どれみ』シリーズが終了してから(この時どれみ達は基本12歳)、そのままリアル世界での時間進行と劇中の時間進行をリンクさせて、『おジャ魔女どれみ16』は2006年の四月のどれみ達高校入学(この時どれみ達基本15歳)から始まってる設定なのだと予想。舞台が2011年、2012年の今ではないんですね。だから、スマートフォンやBlu-rayは出てこなくて、小説中に出てくるのは普通の携帯にDVDなのだと思います。

 このまま進むと20歳の3月に震災を経験するという舞台設定なので、始終、「また危機はくるのだけど」という感覚が背後に沈殿してる作品だと感じています。

 とは言え、すさまじいがっかり感から始まった第1巻に比べて、おんぷちゃんがもう一度立ち上がって頑張っている、さらにはあの頃と変わらずに始終元気なももちゃんが加入したことで、雰囲気は表面的には第1巻よりはたいへん明るく元気なものになっています。立ち上がったからには、みんな鬼のように頑張る。

 終わらない日常とか、失われた20年とかがキーワードになってしまう、いわゆるゼロ年代の頃の話です。ダメだったと揶揄されがちな時期を、それでも一生懸命青春を生きていた子たちもいた、と、そういう感覚。

 また、全体的にグローバリゼーションが本格化した時期とも重なります。もう、ネットが当たり前の道具として出てくる。

 『おジャ魔女どれみ』シリーズのラストでどれみ達が掲げた理想、人間界と魔女界を繋ぐ、たとえ自分たちの代で出来なくても、私たちの子供の世代に繋いでいく、というそれは、まず近い課題としては人間界の地域的、国的、人種的な差異に基づく偏見や問題と向き合っていくことに繋がるので、この『16』では非常に異文化交流のテーマが掲げられていると感じます。そういう流れで、ガチの国際人であるももちゃんがこの第2巻から加入というのは上手いです。『も〜っと』は、ももちゃんが異文化の軋轢に苦しむ所から、そういう境界を越えた本当の友達の存在に気づく所までとも読めるシリーズだったのでした。

 おんぷちゃんと新キャラの中国人である茉莉(モーリ)ちゃんとの交流、ももちゃんのフランスに行って勉強してパティシエになるという夢、はづきと矢田くんに関係してくるアフリカ系アメリカ人黒人ジャズミュージシャンのGBさんとの交流、必死に英語を勉強するおジャ魔女たち、と、話のスケールがTVシリーズの頃と比べてたいへんワールドワイドになっています。要所要所で、毅然と偏見を無効化する側に立つおジャ魔女の面々がカッコいい。

 もはや、思春期の女の子の悩みとかよりは、人類共通の課題に対して立ち向かっている感じ。何かにつけてとても大変な頃だったから、とにかく全力でそれぞれの夢を追いかけ、お菓子を作り、人と人とを繋いでいく。そういう様子が描かれます。

 そんな中で、どれみだけがまだ明確な夢がない点が今巻の表題の「Naive」になってるのですが、これ、まだ書かないでおくけど、どれみが見つけそうな夢には伏線張られていますよね。

 そういった国境を越えて人と人とを繋いでいく話から、ラストではついにハナちゃんが登場して、TVシリーズでも本筋だった、人間界と魔女界の交流の話に入っていく所で次巻に続く。今巻までで描かれた、偏見や境界にとらわれないで人と人とを繋いでいくという話が、今度は人間と魔女たちにも写像されていくのではないかとは予想される所で。

 今巻も非常に堪能しました。綴じ込みの馬越さん絵の16歳の5人は破壊力が高いです。本当に、あの頃の5人が青春時代にまで成長した姿が描かれている。しばらくは作り手を信頼して酔いたい感じ。ももちゃん(放映当時ハマってた)に本格的に再会することになるとは思ってもみなかったので至福時間だったのでした。

も~っと!おジャ魔女どれみ DVD-BOX
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→前巻:『おジャ魔女どれみ16』第1巻の感想へ
→次巻:『おジャ魔女どれみ16TURNING POINT(第3巻)』の感想へ