「もう頑張る必要もないんです」(ジョーカーさん)

 スマイルプリキュア!第32話「心を一つに!プリキュアの新たなる力!!」の感想です。
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 今回の見所ベスト1。


第1位:時間限定のメルヘン

 つらくても頑張る。メルヘン時間的休憩時間だけでは前には進めない、だからやっぱりつらくても頑張るよというのを取り戻してから、前回破られたプリンセスフォームをもう一度、の流れが熱かった。しかも今度はロイヤル。ちゃんとお姫様時間(メルヘン時間)の意味合いが変わってから復活しています。

 特にずっと休憩だけではダメだというピースの台詞なんかから、メルヘン時間は限定時間で、やがて終わるもの、というのがここ数話の話の流れにプラスして、ほぼ確定事項として暗示として作品に盛り込まれたと思います。そこで登場する、ロイヤルクロックの、12時間の針が一つ一つ進んでいくというギミック。

 まとめると、バッドエンドサイドの方のカウントダウンの針は、最後まで進むと、怠惰なメルヘン的バッドエンド世界が訪れる。一方でプリキュアサイドのロイヤルクロックの針は、ここ数話のテーマ、及びシンデレラモチーフの「12時」から考えると、針が最後まで進むと高貴なメルヘン時間が終わって、厳しい現実に帰る、と思われます。

 12時近辺が描かれるのは作品の最終回近辺と思われるので、リアル視聴者がスマイルプリキュア!というメルヘン(創作物)を堪能する時間が終わって現実世界に帰る頃とリンク、というメタっぽいギミック。熱いです。せめて良いメルヘンだったと思ってその後現実で戦っていけるように、もう少しだけメルヘンは続く。


 これからもっと大変なことがあるかもしれない。でもみんなと一緒だったら、きっと前を向いて乗り越えていける。


 それぞれが頑張って未来で夢を叶えるという「5」とはやはり違う。スマイルは、未来は厳しいし、メルヘン時間は終わってやがて厳しい現実と向かい合うことになる、というのがほぼ前提になっている。うららは女優になってこまちさんは小説家になって、かれんさんもきっと医者になるんだろうけど、日野さんはきっとバレーで大成したりはしないし、やよいさんも絵で大成功したりはしないし、緑川さんの家族もやがてはバラバラになってしまうのだろう、というようなのがスマイル。

 ただそうだとしても過程で頑張ったことや、楽しかった児童時間やメルヘン時間が無意味なのかと言ったらそれは違う。その時の幸せな記憶や頑張って前に進もうとした意志、一緒にいた仲間は本物でしょ、だから無理にでも笑おう、みたいなのがスマイルの理屈。だからやがて終わりは来るし、ずっとそれは無理だとどこかで分かっていながら、呪文のようにチーム名「輝けスマイルプリキュア!」を唱える。そしてもう一度プリンセスフォームという流れは熱いな……。12時が来た時の5人が本当楽しみだ。最後は「気合」以外の何かが加わるんじゃなかろうか。

 虚構時間、児童時間、メルヘン時間自体はやがて終わっても、その時を一緒に過ごした仲間は本物だ、というのはわりと分かる気がする。リアルでも、一生の付き合いになってるような学生時代の友人はいるし、プリキュアオフ会(え)の友人らとも長い付き合いになりそうなのは感じています。

 作り手側に目を向けても、テウチライブの流れとか見てると、一時の虚構(作品)制作のために集まった人たちがその後も現実で一緒に頑張っていくというのは、なんか本当だと思います。

 なんか、9作目でこういうメルヘン時間の終りのテーマを盛り込まれると、10周年作品でラストあるいは一区切りなのか感もやや感じてしまいますかね(「遊園地」はここ数話のスマイルだけじゃなく、無印1話やオールスターズDXにも使われた、プリキュアシリーズそのもので重要な意味を持ってるシンボルなので)。その後も続いて行く現実のために、見届けたい気持ちになります。ここ数作は本当リアル世界とのリンクを感じさせるメタ演出がカッコいいレベルの企画になってきてるなと感じるのでした。

→色々

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→前回:スマイルプリキュア!第31話「ロイヤルクロックとキャンディの秘密!!」感想へ
→次回:スマイルプリキュア!第33話「映画村で時代劇でござる!?の巻!」の感想へ
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