「絵本を描きはじめました」(星空みゆき)

 スマイルプリキュア!第48話(最終回)「光輝く未来へ!届け!最高のスマイル!!」の感想です。
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 今回の見所ベスト1。


第1位:メルヘン(理想、未来、現実)

 共有体験がテーマなのに共有体験にできなかったあの映画のメルヘン時間を、二年越しに現実にしてみせた、という演出意図だと思いました。リアルにバラバラになって絶望するしかなかった現実の状況でメルヘンは死んだと僕も思いましたし、自身も被災していたのでリアルタイムの共有体験としては実際映画観に行けませんでしたし。スマイル劇中に散りばめられていた「共有体験としてのメルヘン時間」。映画とTVと少しだけ媒体は違うけれど、本当に「意味はある」という信念のもとでもう一度伝えることができるまでに、二年ほどかかりましたね。制作陣には拍手と感謝しかないです。

 先行して示されたオープニング映像に劇中の途中で到達したり、先行で信じた自分の理想を反映したプリキュア(メルヘン・理想)としての名前にラスト3で到達したり、スマイルはあらかじめ信じた理想、メルヘン、未来、そういうものに到達していこうという演出が散見されておりました。それを踏まえた上での、みゆきさんの家族がいて、友達がいて、それが幸せだったんだと気付いたくだりが入ってからの、一番最初に先行公開された番宣カットにラストに到達するという演出。あのカットに描かれているのはキャンディ(メルヘン的な存在)含む普通の友達が普通にいる普通の風景です。壊れた厳しい現実から、そんな普通の、でも今なら大切だったと分かる風景を未来に描いて描かれていった作品。マイナスから始まって、スタート地点に立って終劇するような、そんなイメージ。

 第1話とか、厳しかったですからね。メルヘンの象徴であるプリキュアに変身してみてもメルヘン的必殺技とか出せず、頼るものは気合しかないとか、現実厳しすぎるだろ、という。

 そんな厳しい絶望的な現実から、バラバラじゃない、友達がいて、家族がいてという普通の未来を叶えるために描かれた回答が、これは実質第44話まででテーマとしては描ききっていたと思うのですが、自分がメルヘンになる、昔貰ったメルヘン的優しさを糧に、自分がメルヘンを伝えたり分かち合ったりしていく側になる、というもの。

 最終回でもう一度プリキュア(メルヘンの象徴)が解除されてしまって、生身で厳しい絶望の現実に突き落とされます。そこからスマイルチャージしてもう一度変身するのですが、プリキュア(メルヘン)の意味が、第1話時点とは違っている。第1話の頃は、メルヘンに守ってもらってたニュアンスが強く(そしてそれが今や弱弱しく、壊れてしまっているニュアンスが強かった)、最終回では、自分自身がメルヘンになって現実を守るニュアンスが強いように変わっている。当初は自分たちが守ってもらう、希望としてのロイヤルクイーン様こそが巨大な女王的存在の絵だったのですが、でもロイヤルクイーン様は既に他界していて、デコルを集めれば生き返って奇跡を起こしてくれるとかそんな都合のよいメルヘンがあるはずもなく。そういう現実の中で、最後は今生きている次の世代のメルヘンの象徴であるキャンディと力を合わせて、自分たち自身がメルヘンになる。希望になる。という感じで、巨大な女王的存在の絵に変身してみせるというのは良かったですよ。前のメルヘンは死んでしまったのかもしれない。でも受け継ぐものを受け継いで、厳しい現実の中で自分がメルヘンを体現するんだ。メルヘンを伝える側になるんだ。それができるんだったら、やっぱり死んでないとも言える。最後のプリンセスフォーム(プリンセスフォームは『シンデレラ』モチーフでメルヘン時間の比喩)で、メルヘンから卒業。みゆきさんが現実で絵本(メルヘン)を伝える側に回り始めるというエンディングへ。

 それでも、これで卒業なんだけど(もちろんメタに作品の最終回だからという含意もありつつ)、最後のメルヘンを使う最後の変身から、プリンセスフォームで何やら地球から飛び出してくるまでのコンテはこれぞ最終回という感じで熱かったですよ(BGMが第1話の「気合だ!」の所と同じなのもイイ)。卒業して、現実で立ち向かっていって欲しい。でもメルヘンなめんな、という制作陣の矜持のシャウトのようだった。

 最後のキャンディとの再会は、このパートは映画DX3ではハートキャッチの設定をうまく生かして意味合いを持たせていたのだけど、今回は普通に比喩的に自分たちがメルヘンを体現したり伝えたりする側に回っていれば、過去に別れた(卒業した)メルヘンと再会することもある、ですっきりしていると思いました。自分が主人公として現実で頑張る道を歩む中で、児童時間(メルヘン時間)の頃に糧を貰っていた作品となんか再会したりは、実際あることです。

 毎年思うのですが、今年もこの一年にこの作品がやっていてくれて良かった。制作陣の皆様に感謝を。


→色々

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→前回:スマイルプリキュア!第47話「最強ピエーロ降臨!あきらめない力と希望の光!!」感想へ
→次回:ドキドキ!プリキュア第1話「地球が大ピンチ! 残された最後のプリキュア!!」の感想へ
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