ドキドキ!プリキュア第4話「お断りしますわ!私、プリキュアになりません!!」の感想です。
今回の見所ベスト1。
第1位:四葉ありす
児童時代のケンカエピソードで、マナが大人(先生)に頼ろうとしてないのが、おそらく現時点でのマナさんのネガティブ描写。
本当超人スペックなんだけど、第1話では部活の勧誘にナチュラルに全部OKを返そうとしたり(一人で全員に愛を分け与えるのは無理っぽいのに……)、第2話ではキュアソードさんを助けるために命綱なしでダイブしたり、何か、危うさがつきまとう主人公。表面を覆う金箔を他人に分け与え、瞳の宝石を他人に分け与え、でも最後には自身の鉛の心臓は壊れて溶鉱炉行きになった、オスカー・ワイルドの童話『幸福の王子』が作中で引き合いに出されているだけに、この辺りのキャラクター造形はしみじみとします。
前回までで、そんな幸福の王子属性たるマナさん一人では危ないと、最初の手を繋げる他者、『幸福の王子』におけるツバメたる六花さんがいる、という所までは大変よかった。なのだけど、どうにも全体としてはまだまだそれだけではダメっぽい(童話中ではツバメも死んでしまうし)かのような流れ。
第2話が放映された後図書館で借りてきて読んでみたのですが、『幸福の王子』はある種のディスコミュニケーションのお話だと僕は思っていて、結局分け与えた人たちにも、最後に自己中心的に自分の銅像を建てたがる街のエライ人たちにも、王子の愛は伝わらなかったのだと思うのです(王子とツバメは天国で幸せにはなれたけれど)。なので、古典として尊重しながらも、現代の文脈の作品として、そこはまず自分がいて他者がいて、伝えるんだ、そこがまずは大事な起点なんだということを積み重ねるシリーズで描いてきたプリキュアシリーズの10年目作品としては、じゃあ今回特に「愛」をどうやったら伝えていけるんだ、という所を描きたいのかなと。『ハートキャッチプリキュア!』第48話のゆりさんの「私達は憎しみではなく、愛で戦いましょう」から始まって(より源流は『フレッシュプリキュア!』の桃園さんのラブという名前の由来のエピソードの辺りからだと思うけど)、さらに数シリーズ重ね、前作の『スマイルプリキュア!』では、メルヘン時間を終わらせて自身が主人公となったみゆきさんが、これからは自身が昔受け取った愛や優しさを伝えていく側に回る(たとえば最終回の自身で絵本を描きはじめるという流れ)という所で終劇していました。なので、じゃあ、どうやったら愛とか優しさとか伝えていけるのだろう、というのがおそらく次の物語としての今回の『ドキドキ!プリキュア』なのかもなと。言うほど、暴力や支配じゃなく愛や優しさを伝えていくというは簡単じゃない。簡単じゃないからこそ、スマイル的に言えば「厳しい現実」は差別も戦争もなくならない。
そこで、マナさんと六花さんだけでもまだ世界に愛を伝えていくのなんて無理っぽいという流れで、いよいよ今回登場の三人目、四葉ありすさんです。財閥の娘(経済屋属性)にしてプリキュアのプロデューサーになると語る、崇高な人とそのパートナーに続く三人目。
今話のプリキュアの戦いの後処理を裏方として既にしていた描写や、児童時代のケンカイベントで、結局単体で超人で崇高だけどその分敵も作ってたマナを守るために戦うのとイイ(泣いてしまう展開から、やっぱりマナは幸福の王子と同じく、ハートまでは本当は黄金ではないのだと思う)、ああ、やっぱり方針は愛を伝えていくだとして、何を成すにもこういうポジションの人が必要だよなと思わせてくれたキャラ造形でした。愛を分け与える幸福の王子とツバメがまずいたとして、そこに何故か現れたバックアッパー。戦闘時の能力が「守る」ことというのも全体のストーリーにおけるキャラポジションに、バトルでの役割もマッチしてる感じでカッコいい。
個人的に注目したいのが、ありすこそが、セバスチャンというプリキュア以外の外の世界の大人とのリンクを持ってる存在だという点。
漫画、アニメ界隈の日本発作品のここしばらくの流れとして(これは批評と呼ばれるようなジャンルで語られている話も少し含めて)、一人で自意識の迷宮に閉じこもってしまう90年代作品でもダメっぽい(よく言われるのはエヴァのシンジ君など)、その後のキミとボクだけの閉じた世界が一足飛びに世界全体の大きい話に繋がってしまう「セカイ系」などと呼ばれる作品でも、ダメっぽい、とは来ていたわけです。その流れでは、マナと六花だけではセカイ系方面に行ってしまう危険がちょっと漂う。それゆえに、社会で普通に生きてる大人との媒介を有しているこの四葉ありすさんというキャラクターは、とても重要に感じるのです。映画『ハートキャッチプリキュア!』の花咲さんにハンカチを差し出した見知らぬパリの人とか、あるいは『スマイルプリキュア!』における警察官の方とか。本当に世界に愛を伝えていこうと思ったら、おそらくはそういうプリキュア以外の普通に社会で生きている人たちとも協力していける架け橋が必要なわけで。
そして、そういった外の世界への架け橋展開の萌芽を感じさせながらも、ここまではまだ『スマイルプリキュア!』で描かれたテーマ的に言えば児童時間(メルヘン時間)の共有体験が縁の三人であります。でもおそらく、そしてこれも、世界に愛を伝えていくなら、児童時間を共有した連帯だけに閉じこもっているだけでは何もはじまらないです。だから、「共有体験」がない四人目の真琴さんとの関係性の物語が、きっと重要になっていく。
もの凄い面白いと思います。ドキドキしつつ追っていきたい感じです。
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→前回:ドキドキ!プリキュア第3話「最高の相棒登場!キュアダイヤモンド!!」感想へ
→次回:ドキドキ!プリキュア第5話「うそ!キュアソードってあの子なの??」の感想へ
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