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おジャ魔女どれみ16 TURNING POINT (講談社ラノベ文庫)
おジャ魔女どれみ16 TURNING POINT (講談社ラノベ文庫)

 小説『おジャ魔女どれみ16 TURNING POINT(第3巻)』の感想です。
 ネタバレ注意です。
 ◇◇◇

 最初に補足修正ですが、前巻「Naive」の感想で、「16」におけるどれみ達の高校入学は2006年じゃないかと書いたのですが、今巻で高校二年生、17歳の年が北京オリンピックでオリンピックイヤー(2008年)という旨の記述が出てくるので、高校入学(第一巻冒頭の一年生時)は2007年の設定っぽいですね。何かしら、17歳の年に北京オリンピックが開かれる展開にする意図があるのかなと思います。

 いずれにしろ、どれみ達が大学一年から大学二年に上がる頃の三月に東日本大震災が起こる世界観(20歳の時に2011年を過ごすということ)でやっているのだと思うので、始終「また危機は来るのだけど」感が漂いながらの、それでもゼロ年代を青春として駆け抜けた女の子たちが、ひいてはそれに感情移入する読者としての私達がいたんだ感で書かれてる小説だなぁと思っております。

 今巻も、これ今の東映アニメーション女児アニメ枠(『おジャ魔女どれみ』の後輩枠とも言える)たるプリキュアシリーズで最近やってる(主には『ドキドキ!プリキュア』)話と繋がってる感じがしてしまうのですが、過去の関係との再リンク、新しい関係との新たなリンク、次の物語のために、それが必要だという話を描いていると思いました。世相や時代性が、一線の作品には反映されていく感じなのかもです。

 過去の関係との再リンクは、小さいエピソードとしては、小学生時代(TVアニメシリーズ『おジャ魔女どれみ』時代)のクラスメイトたちが再び出てきて、今の時間なりの関係をどれみ達と再構築していく話が積み重ねられていきますし、一方で縦軸の大きい物語として、ハナちゃんの生き別れの妹であるユメちゃんと、もう一度リンクするんだ、という話が今巻から始まっていると思います。この『おジャ魔女どれみ16』というシリーズ自体が、読者としても送り手としても「過去の関係との再リンク」になっているので、コンセプトが上手いです。最近の東映関係が関わってる作品はメタ的なコンセプトが上手すぎる!

 そうして、『おジャ魔女どれみ』シリーズの大きいお話としての主題はやはり『ドッカ〜ン!』ラストで掲げたどれみ達の理想、人間界と魔女界の架け橋を作る、ということだと思うのですが、ハナちゃんは魔女界で生きていく子、ユメちゃんは人間世界で生きていく子の代表なことから、この姉妹の再リンクが、そのままどれみ達の理想の象徴になっている、という物語だと思いました。TVシリーズ最終回近くで、私達の世代ではできないかもしれないけれど、それでも次の世代に託してもやっていく、と、魔女にならない決断を下すシーンでどれみ達が言っていたあの主題ですね。

 その流れで『ドッカーン!』第40話「どれみと魔女をやめた魔女」の佐倉未来さん再登場は痺れましたよ。現女王様の妹だったのか。これ、新設定として繋げたのかな。でも思い返してみるとピタリとハマるんですよね。当時から設定だけはあったのかも。今まで出会ってきた人たちの写真を宝物にする、魔法を使わない魔女。考えれば考えるほど、『16』のテーマ的にキーパーソンになるのに適任という感じです。

 結局、魔女絶対主義と人間絶対主義がぶつかったら戦争しかないわけで、この二者間を繋いだり調整したりできる存在がどれみ達の理想には必要なわけで。で、そういう立場になれる人っていったら、魔法を使わない魔女(未来さんなど)と時々だけ魔法を使う人間(どれみ達)だと思ったんですね。


 「ハナが女王になったら、魔法で戦争をなくしてみせるからっ。今日はユメちゃん捜しに協力してっ」


 という印象的な台詞が今巻で出てくるけれど、その理想、その架け橋はどこか夢物語だけどっていうニュアンスはあるのかもしれない。それでも、本当自分の世代でできるかなんて分からないけど、そのリンクの芽は守りたいからって、象徴としてのハナちゃんとアイちゃんの再リンクの、助っ人にどれみ達はなっていく、というような。

 また、過去の再リンクだけではダメなので(閉じた関係の中だけで終わっちゃうから)、高校時代からの「新しいリンク」も「16」では描かれ始めているのですが、そういう流れだからこそ、新しい友達キャラは前巻の中国人の茉莉(モーリ)ちゃんだったり、今巻の肉食系女子の丹羽雛子さんだったりするのかもしれない。尊い理想があったとして、国内だけとも言ってられない時代だし、恋愛に関して大人し目の人だけで世の中ができてる訳じゃない。

 相変わらずおんぷちゃんはカッコよく、ももちゃんはノリノリな中、すごい縦軸の物語もしっかりしてるよなと、今たいへん楽しみに読んでいる小説シリーズです。

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おジャ魔女どれみ16 (講談社ラノベ文庫)
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→前巻:『おジャ魔女どれみ16Naive(第2巻)』の感想へ
→次巻:『おジャ魔女どれみ17』の感想へ
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