去年はやがて終わりが来る観覧車(第29話)やカウントダウンを刻むロイヤルクロックが登場してきた(第32話)頃で、『スマイルプリキュア!』が「やがて終わる(終わらせる)メルヘン」という物語なんだということに気づいた頃です。
日常回的に遊んでばかり、危機感がない、などと感じられた序盤中盤の「?」マークの展開が、仕込みだったと裏返った頃。そういうメルヘン的な時間がいつか終わる。終わらせなきゃならない時がくる。だからそのメルヘン時間を糧に、自分がメルヘン(理想)を体現する存在として立ち上がるんだ、という物語だった。今でも日常回が多くて縦軸の物語が薄いとか終盤急でまとまってないと言う人もいるのだけど、あれ、ピエーロ様襲来的な「メルヘン時間の終わり」が、「唐突に」やってくることに意味がある作劇・構成なんだよね。主題上。そんなメルヘン時間の終わりが来た時に、頼れるものは何なのか、自分たちで考えた末にどうするのか、というラスト三話。
『スイートプリキュア♪』の、「どっちが正しいのかよく分からなくてモヤモヤする」という序盤中盤の「?」マーク展開が、「立場によって見え方は違う。だけど、その分断を乗り越えるための共有体験がどこかにある」に進展し始めたのもこの時期。
そして鑑みるに『ドキドキ!プリキュア』ですが、
リソースの追加
ということをやりたいのかと最近腑に落ち始めています。
「リンク」がキーワードなのは第一話から分かってた。じゃあなんでリンクを守ることが大事なのかという点で、困難な現在の現実を乗り越えていくにあたって、リンクを伝導してリソースを追加する、あるいは調整するという作戦が使えるからなんじゃないかと。もしくは、その作戦を使わないとどうにもならないくらい、現実はもう厳しい、というか。経済危機だ、地震だ、竜巻だ、軍事介入だ、とかとかな世相。現実は厳しい……。
第29話、両面から同時に攻撃しないと倒せない敵が出てきて、いかに万能の超人めいた相田マナでも、一人の幸福の王子ではもうどうしようもない局面なんですよ。でも、「リンク」があれば、そこから伝導して解決のためのリソースが追加される。この話で描かれていたのは、リンクから生まれた、相田マナ二世的な人間体シャルル。相田マナ一人では、全員は助けられない。でもリンクから次の「通りすがりのヒーロー」が生まれるなら、それは「助けるためのリソース」が追加されることになる。『スマイルプリキュア!』第一話で「気合だ!」を目にした時は、(ストーリー上あの時点で大事な要素なんだけど)軽く絶望しました。もう、現実の困難に対処するにあたって、気合しかないのかよと。できればあんまりやりたくないよと。それに比するに、ドキドキさんは分かる。頭を使って作戦を練ってる感じがする。一人の気合、頑張りだけ、疲れた身体に栄養剤を投入してドーピング、みたいなやり方だけでは、もうどうしようもないくらい現実は厳しい。必要なのは、リソースの追加と調整だ。知的資源を投入するなら、そこだ! そこをどうするかをみんなで考えよう。
で、中盤まではわりと共時的(今、横の世界での)な「リンク」構築の話だったんですが、毎年のごとくこのタイミングで明らかになってきたのは、通時的(歴史的、縦の軸の)な「リンク」を構築して、そこからもリソースを追加しよう、って話なのかなと。
第30話、キュアエンプレスと三種の神器登場は、僕は燃えたんですよ。現実は厳しい。今生きてる人たちだけでは乗り越えられないかもしれない。でも、過去とリンクして、過去のリソースを現在の力に換えられるなら、それは頼もしい。
春のオールスターズ映画も、だいたいその年のTVシリーズのテーマと連動してるとだいぶ明らかだと思うのですが、そう思うと『映画プリキュアオールスターズNS2』って、やっぱり「一人ではどうしようもないからリソースを追加する話」だと思うんですね。みゆきさんは敗れてしまった。だけど、エンエンとグレルを通して、ドキドキ組に守られて「リンク」を繋ぐ。そうして、そのリンクを通してリソース(変身アイテム)が美墨なぎさまで届く。そして、キュアブラックは過去のプリキュアですから、それ自体が、現在の戦いへの、過去のリソースの追加。参戦。クライマックスで、キュアハート一人は実は押し切られるかと思ったのかもしれない。でも振り向いたら、10年分のリンク(過去のプリキュアたち)が力を貸してくれていた、というラスト。
そう思うと、ドキドキの第1話第2話が本当良くできてたんだなと思います。第2話、幸福の王子たる相田マナは、最初は相変わらず一人で脅威(ジコチュー)に立ち向かおうとするんです。だけど、そこで入る、六花の幸福の王子とツバメ演説。印象的に挿入される、過去の児童時間にマナと六花は出会っていた(リンクしていた)というシーン。
六花とありすは、あえて分類するなら「過去」のリンク側だと思うのですね。スイート&スマイル的に言えば、過去の児童時間共有体験組。そんな六花が、この第2話時点ではプリキュアでも何でもない一般人なんだけど、一人の幸福の王子ではダメだ、と言う。そこで、
「手伝って」(相田マナ)
とマナさんが返した時。六花とのリンクが繋がり「過去の児童時間の一人目」というリソースが追加された時、マナさんは「幸福の王子バッドエンド(一人で身をすり減らしてみんなを助け、本人は溶鉱炉行き)」から分岐したのかなと。
またそう考えると、真琴と亜久里は新しい人間関係で、通時のリンクでも、「未来」側だろうと考察します。だから、亜久里は未来世代たる意味でマナたちより歳下だし、キュアエース変身も、年齢が上がる、「未来の自分になる」というギミックが入ってるのだろうと。
で、そんな未来の象徴たる亜久里がやっぱり一人ぼっちだったのは危ういから、リンクでリソースが追加されたのが、第28話。森本エルさんという、思いもかけないちょっと縁があった人、そういうリンクからリソースが追加されて手伝いになる、という展開が熱い。
過去三作にもあった『ドキドキ!プリキュア』の序盤中盤の「?」マーク展開としてよく語られるのは、主人公の優秀さ、初期四人のハイスペックですが、これも、どんなに優秀でも一人の幸福の王子、一人のヒーローでは乗り越えられないほど現実は厳しい、という仕込みだったのかなと。また、ハイスペックメンバーでも、「閉じた四人のプリキュア」だけが頑張っても、乗り越えられないほど厳しい、とも。それではバッドエンドだ。共時に通時に、リンクを繋いでリソースを追加・調整していこう、っていう話なのかなと。
と、書いてきた話が全部が詰まってる昨日発売の「ラブリンク」を聴きながら書いてみました。
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