やっぱり、『幸福の王子』ネタが絡んでるフレーズなのではないかと。
幸福の王子に比喩されるマナさんが戦うのは、ドキドキ!では序盤の手紙の伝達を守るためとかから始まって、「リンクを守るため」 なんですが、その戦いがどうして「君を信じる」に繋がるのかと。
となると、作中解を先取りしたくらいの一話であったであろう第32話を基点に置くと、幸福の王子、相田マナさん側からこの歌詞を捉えると、「リンクを守ることができれば、立ち上がってくれる君だと信じている(あるいは信じたい)。だから戦う」。私が戦うことで、伝導したものは次の通りすがりのヒーローを生み出す。困難な現実に立ち向かっていくリソースの追加になっていく。少しずつ破綻したつらい出来事を修復し、楽しい未来を作るための何かは構築されていく。そんな、リンクから伝導したものを受け取って立ち上がってくれる君だと信じている(あるいは信じたい)。だから戦える。『幸福の王子』バッドエンド解釈についてまわっていた、王子の気持ちは街の人に伝わってなくて、何の意味もなかったんじゃないか? というのを払拭する、「君を信じる」なんじゃないかと。
そして、例えば二階堂くんは立ち上がった。だから、街の人々の側からこの歌詞を捉えると、「自分に宝石、愛、きっかけをくれた存在、幸福の王子を信じる。だとしたら、受け取った自分は立ち上がらないといけない。だから、戦う」。この辺りは『スマイルプリキュア!』理論の継承っぽくもある。昔自分を救ってくれたメルヘン。それを大切なものだと信じるなら。その大切さを信じているなら、無為にしないために、そのメルヘンから影響を受けた自分も、メルヘンを体現するに足る存在にならないといけない。自分が折れて、ミラクルピースまで否定されてしまうのは嫌だ(第41話)、というやよい回などに見られた理論。幸福の王子、ヒーロー、比喩としてのプリキュアという作品でもいい。そこから宝石を分け与えられた、愛を伝導されたとしたら、幸福の王子をバッドエンドにしないために、その意義を消してしまわないために、自分が次の通りすがりのヒーローになってみせないといけない。だから、君を信じる。ために戦う。
◇◇◇
また、強くなることを否定もしないけれど、それよりも「リンクによるリソースの追加と調整」ができたなら……という第32話を見終えた後だと、独力で強くなるために強制成長(分かりやすい意味で強くなった)し、レジーナ様を葬ったあたりのキュアエースは、ネガティブ描写とまでは言わないまでも、「途上」の描写だったのかなと。あの辺りは、「ラブリンク」の歌詞にある「迷子のココロ許すこと」とはちょっと遠かったよなと。
仲間と一緒に食べるスイーツの美味しさや、思いがけないリンク、森本エルさんの存在気づく第28話などを経て、第32話は亜久里回でもあったと思うのですが、「強くなればいい」という当初の亜久里理論だけじゃなく、マナさんが語った「リンクによるリソースの追加と調整」「リンクによる相互伝導のドキドキ」も正しいと気付いてからは、新必殺技は時間稼ぎ的な、「他人の存在を前提とした技」に変わったし、第32話のバトルパートも、「時間を稼ぐ」と他人の協力を前提の戦い方に変わるのね。
そこも含めて、第32話は『スマイルプリキュア!』の第38話辺りで描かれ始めたテーマの発展のようにも感じられます。児童化したみゆきたちを、警察官の方がそっと見守っていた、というシーンが印象的なあの話。世界は、一人ではない。逆に言うと、一人で頑張って何とかなるフェーズは終わった。あのエピソードの通りすがりのヒーローは警察官の方なんですよ。分かりやすいプリキュアのようなヒーロー以外にも、通りすがりのヒーローがいて、そんなリソースも追加して、調整していけたなら。
ちょっと疲れた、だから第32話のマナさんみたいに倒れるまではいかないけど、ちょっと休むよ、その間は、他人たるあなた、世界を頼む。君を信じる。逆に、君が疲れて休んでる間、僕は僕の場所でヒーローとして戦おう。例えば、僕がダメになってる時は、それを補って君の場所で戦ってくれてる君だということを信じてる。だから、僕は僕の場所のターンの時は、戦う。君を信じるにたる僕であるためにも。
◇◇◇
「結婚」がキーワードの一つに訴求されてる秋の映画がもうすぐという所であんまりアグレッシブなことは言いづらいですが、第32話を見て、マナさんと結婚するのは二階堂くんなんじゃないか? という気がちょっとしてきましたよ。
明確には描かれないかもしれない、というかむしろ描かない可能性の方が高いと思うのだけど、例えば『スイートプリキュア♪』だと、「過去の共有体験」という作品のテーマ(アコと奏太が共有体験を積み重ねるパートが、スイート作中ではけっこう大事なシーン)、家族の修復がテーマの一つだった中、その物語が収斂する映画のラストで、アコは奏太がいる普通世界に戻ると言い、それを分かっていたとハモるアフロディテ様とメフィスト様、奏太は、物語序盤で響が守ろうとした、「幸せな家族」の象徴である奏家の奏の弟……とかの情報を組み立てると、ああ、アコは奏太と結婚するのかな、と思うくらいには作られてると思うのですよ。
そのくらいの話ですが、
・マナさんみたいな優秀な人は意外と普通の男と結婚する気がする。
・「リンクを伝った愛の相互伝導」と、それによる幸福の王子バッドエンド回避、という作品テーマ。
・第1話からマナさんの影響を受けてるキャラとして登場していて、第32話で最初にマナさんに報いるために立ち上がる。
・地味なシーンだったけど、幸福の王子相田マナを救ったのは、最初の伝播を作った二階堂くんくらいの勢い。
・ふだんはマナさんにツンとした態度なのが、古典的少女作品の恋愛対象キャラっぽい。メタな意味でも過去の作品を汲む、というドキドキ!のコンセプト。
とかを想像するとね。二階堂くんけっこう適任だよな、と。まあ、まだ噂話程度の想像ではあるのですけど。
→前回:ドキドキ!プリキュア第32話「マナ倒れる!嵐の文化祭」感想へ
→次回:プリキュア雑記(2013年9月19日"台座の下のリンク")へ
→次回:ドキドキ!プリキュア第33話「ありすパパ登場!四葉家おとまり会!」の感想へ
→ドキドキ!プリキュア感想の目次へ