ここ数日『ドキドキ!プリキュア』のことばかり考えている(え)。

 第31話、第32話はいわゆる新玩具&新合体必殺技登場回にからめたエピソードでもあったのだけど、実は毎シリーズ、この秋の新玩具&新合体必殺技登場は、かなり作品全体のテーマ、コンセプトを汲んだエピソードとして作られていて、その結果新合体必殺技が使えるようになったよ、という流れになってると思います。

 『ハートキャッチプリキュア!』だと、(劇中で明言はされないけど)過去のプリキュアたちの集積だと思われるオーケストラさんが使えるようになるのは、「チェンジ前の過去の自分との和解」がエピソードとして描かれた後(第37話「強くなります!試練はプリキュア対プリキュア!!」第38話「プリキュア、スーパーシルエットに変身ですっ!!」)。番組のキーワードはチェンジ。だけどチェンジできなかった頃の過去の自分、一緒に行こう→キュアアンジェから始まる過去のプリキュアたちの力も使える……の流れは本当綺麗でありました。
 また、ハートキャッチはオーケストラさんの時の二段階変身の名称も"スーパーシルエット"で、あくまでプリキュアたちは裏方、通りすがりのサポーター的影の存在、という『ハートキャッチプリキュア!』のテーマにも重なっていて大変カッコいい。影絵の連続という決めカットを見た時は痺れましたよ。

 『スイートプリキュア!』だと、スイートセッションアンサンブルは、"共鳴技"みたいな感じで、当然作品主題の「共有体験」が絡んでいる。だから、第30話「ワオーン!ヒーリングチェストの不思議ニャ!」では響さん一人で出そうとしたけど不発に終わり、「プリキュアの力は強さじゃなかった」が描かれる第31話「ワンツー!プリキュアキャンプでパワーアップニャ!」では三人で成功する。これも、個人で筋トレする強さよりは、共有体験の共振(の象徴としての音楽という要素)のようなものの大切さを伝えていた作品だけに当時かなり燃えました。

 『スマイルプリキュア!』だと、「メルヘン時間の終わり」を自覚した時に、ロイヤルクロックが発動するというようになっている。第31話「ロイヤルクロックとキャンディの秘密!!」で、ジョーカーさんにプリンセスフォーム(お姫様的メルヘン時間の象徴)がついに破られて、第32話「心を一つに!プリキュアの新たなる力!!」であと12時間(ロイヤルクロックの終わりまで)だけ使える時間限定のメルヘンとして復活するのは熱いくだり。なまけ玉的ないつまでも終わらないメルヘンではなく、時間限定のメルヘンとして、いつかは卒業し自身がメルヘンを体現する存在になるんだ、という方がスマイルの本然のメルヘン。だから、僕は最終回のあと一回だけ(時間限定)メルヘンの力を使う、それで終わりだとしても、という展開も好きなんですよ。

 そう思うに、今回の『ドキドキ!プリキュア』の(「私達の力をキュアハートの元へ」の台詞などから)リンクによるリソースの追加というのが描かれていると思われるラブリーパッドおよびラブリーストレートフラッシュの発動条件として描かれていたのが何だったのかと考えるに、やっぱり第31話でマナさんが当事者意識を持ったのが描かれたのが大きいのかなと。悲しい事があったあの場所(トランプ王国)と自分がいるここと、リンクしてるとはずっと言ってたんだけど、今まで少しファッションリンクな所があった。第32話と絡めると、台座の上から宝石を配ってる幸福の王子感覚が、まだ少しあったんですよ。それが、Rubygillisさんが第31話感想で上手い事書いてたけど、相田マナさんは台座の上の幸福の王子じゃなくて、地面に降りて街の人の間を走って回ってる幸福の王子なんだよ(当事者としてそこにいる助っ人)という風に昇華される。リンクが本物になったので、いよいよ「リソースの追加と調整」いくよ、ラブリーパッド! という展開。

 第32話が、番組当初から示唆されていた幸福の王子バッドエンド(王子は自身の身をすり減らして他人を助け続けたけど、伝わらなくて本人は溶鉱炉行き)を回避する未来が描かれたわけだけど、何が条件でバッドエンドから分岐したのか、という描き方をしてるかといったら、マナさんは第1話から地面の上を、人と人との間を自分の足で走っていたよね、と。それが、台座の上からディスコミュニケーション状態で一方的に宝石を配ってたんじゃないの? という幸福の王子バッドエンド解釈とは、違う要素。第1話の印象的な走って行ったり来たりするマナさんのシーンの、一つの行先は二階堂くんだったりするんですが、マナさん真エンディングへルートの場合は、街のみんなも自分たちと同じ地面を走って行ったり来たりしてる幸福の王子(マナさん)を見てるんですよ。

 つまり、第5話がことの他重要だった。ステージの上には上らないんだけど、私はステージの下でやることがあるとマナさんが語る回。


 あの、あたし気づいたんです。まこぴーにとっての歌と同じように、あたしにもやらなくちゃいけないステージがあることに。
 まこぴーみたいに素敵にはできないんですけど。それでも一生懸命ベストを尽くして頑張りたいと思います。

 あなたのやりたいことって、何?

 みんなの笑顔を守ることです。



 マナさんが、台座とかステージ上みたいな高い所(当事者意識なし)から一方的に宝石を配ってるバッドエンド解釈側の幸福の王子ではなくて、本然的にステージ下のヒーロー(当事者として走ってくれる)なんだ、という伏線は随分前から地道にあった。それが、第31話、第32話で結実しつつの、ラブリーパッド登場で、いよいよ本物のリンクでの「リソースの追加と調整」へ。たいへん綺麗。

ドキドキ! プリキュア 【Blu-ray】vol.1
生天目仁美
TCエンタテインメント
2013-09-27


→前回:プリキュア雑記(2013年9月16日"二階堂くんのポジション")
→前回:ドキドキ!プリキュア第32話「マナ倒れる!嵐の文化祭」感想へ
→次回:ドキドキ!プリキュア第33話「ありすパパ登場!四葉家おとまり会!」の感想へ
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