ネタバレを含んでおりますので、まだ観てない方はご注意下さい。
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『映画ドキドキ!プリキュア マナ結婚!!?未来につなぐ希望のドレス!』の見所ベスト5。
第5位:幸せの王子敗れる
作品本編で街の人達を助けるために自身をすり減らして宝石を配って回った「幸福の王子」に例えられるマナさん。全てと分断されて思い出の世界に閉じ込められた結果、一度心が折れて崩れ落ちます。今までの感想で「幸福の王子バッドエンド」という言葉を使っていたのだけれど、「フィルムの中に閉じ込められる」というギミックを生かして、メタフィクションっぽく一旦「END」の文字が出てくるまで演出としてやられるとは思いませんでした。
六花もありすもいない世界(児童時間のリンクが切れてしまっている)。突きつけられるやがて訪れる祖母と愛犬との別れ。そんな悲しい未来が訪れない終わらない夏休みにいられるなら……と、幸せの王子、埋没。人助けなんかしたって、悲しい未来は避けられないんだし。
お祖母ちゃんのお見舞いに行くときにマロとすれ違うのが印象的で、マロが「幸せの王子が救えなかった存在」なんだよな。誰かを選べば、誰かは助けられない。そこを突かれてるので、ちゃんと「全員に宝石を配りたい幸せの王子」思想を折っている。相田マナ敗れる。
第4位:相田愛
そんな折れた「幸せの王子」がもう一度立ち上がれるとするならば……という話。
よく最近の感想で使っていた言葉を使えば、共時的なリンクからのリソースの追加と、通時的(歴史的)なリンクからのリソースの追加、だと思いました。
マロも死なない、お祖母ちゃんも死なない世界だけれど、六花とありすという「仲間(共時的なリンク)」がいないのね。それで「耳を澄ましてごらん」とお祖母ちゃんから言われると、この分断された世界でも、マナを希求する友達の声が聞こえる。だとしたら立ち上がらないといけない。
そして、通時的なリンク。今作としては受け継がれたウェディングドレスに象徴される、過去から現在、未来へと伝承される「愛」がある。相田マナの本名が相田愛であることが明らかになるギミックの中、「愛」という名前はお祖母ちゃんがつけてくれたもの。そのお祖母ちゃんが、愛を未来に伝えにいけ、という。マナさんは、名が、存在が愛を伝承する者だった。最後は溶鉱炉行きになる「幸福の王子」だとしても、未来の存在のために愛を伝えにいこう。幸せの王子はもう一度立ち上がる。
第3位:プリキュアディケイド
「過去からのリソースの追加」は『映画プリキュアオールスターズNS2』(リンクを繋いでキュアブラックをはじめ過去のプリキュアが参戦する話)からしても、TV本編にこれまでのプリキュアシリーズの要素が組み込まれてるっぽい内容からしても、メタにこれまでのプリキュアシリーズからの助け、という表現が『ドキドキ!』には組み込まれていると思っているのですが、今回の映画でも、ざっと。
・無印〜MaxHeart
原点。孤独の救済。会いに行くこと。一人ではなく二人。お祖母ちゃんと犬という要素。
・SplashStar
永遠に止まった未来、無を、一人ではなく二人、"星空の仲間たち"で乗り越える。
・5〜GoGo!
分断された閉じたセカイへと埋没。でも、それでもあなたに会いに行く。
・フレッシュ
忘れられた存在が襲ってくる。お祖母ちゃん(お祖父ちゃん)から愛(ラブ)という名を名づけられる。
また、未来へ進むシーンで、フルCG化するのだけど、初めて映画でCG桃園さんが駆けたフレッシュから、未来へ向かう意志の尊さを演出してる気がする。やっぱり走っていくシーンなんだけど、今回は仲間もCGになったりで凄い。たぶんだけど、古い手法と最新の手法で作ったシーンを意図的に両方入れている。
・ハートキャッチ
通りすがりの外部からの助け。
やっぱりTV本編のキュアエース登場回からの一連の流れと同じく、キュアエースが担っていたのではないかと。メイン四人とも「幸せだった頃の思い出」に埋没していって、特にまこぴーが重傷なんですが、助けは外部からやってくる。昔は良かった。悲しいことが起こる現実になんか帰りたくない。閉じこもりたい。でもそんな時、閉じたセカイの外から誰かがやってきてくれる。
・スイート
過去の共有体験。
僕は本当スイート好きなんだと再確認したのだけど、幼六花と幼ありすが虚構の思い出空間ですれ違う時に、お互い何かが気にかかる、というシーンは良かったですよ。時空を超える、現実の児童時間の共有体験。第33話が効いている。あの児童時間をナメないでほしい。あの時マナさんから伝えられた愛とリンクをナメないでほしい。
そして、そのシーンで両親との手を離すのね。昔、愛をありがとう。その受け取った愛を次は未来に伝えるために、仲間のもとへ行きます。
・スマイル
昔受け取った愛を、次へと伝えていく。伝承されるメルヘン。スマイルはかなり核心で、やよいさんエピソードの中核がブラッシュアップされた映画といえるくらいの勢い。スマイルプリキュア!第19話。とても好きなので何度でも引用。
私はパパからいっぱいの愛をもらったおかげで、人に優しくしようって思える。
優しさはきっと、人から人へと伝える愛の表現なんだ。
あなたに愛がないのなら、パパからもらった愛を受け取って。(キュアピース)
また、都合よく改変されたセカイに閉じこもりたくなるのを乗り越えていくあたりは、なまけ玉のくだりや映画のニコちゃんと魔王なんかのくだりと近い感じでした。
第2位:全員は助けられない
最後、マシューは復活した幸せの王子(マナさん)から捨て身で愛を伝導されて立ち直るんだけど、それでも、一人の幸せの王子では見捨てざるを得なかった存在。たとえばお祖母ちゃんのもとに駆けるために置いて行かれたマシュマロ。次の未来の新しい存在を選ぶために、忘れ去られた過去の存在。あるいは結婚モチーフの作品なので、一人を選んだために、捨て去られるその他の人々。そういう存在の象徴としてのクラリネットに、わりと容赦なくお祖母ちゃんから、お母さんから伝導された愛のウェディングに身を包んだマナさんが一撃を撃ち込んで葬り去っていたのが印象的な映画でした。忘れ去られた、捨て去られた存在の怨念が、未来を壊そうと襲ってくる。それでも、昔受け取った愛を次へと伝導する未来を選ぶ。その分捨て去った何かが怨念で襲ってきたとして、それを打ち砕くことになっても。
第1位:二階堂くん
●プリキュア雑記(2013年9月16日"二階堂くんのポジション")
という記事を書きましたが、もちろん分かりやすくは描かないのだけれど、マナさんと結婚するのはやっぱり二階堂くんなんじゃないかと改めて感じました。
映画の序盤でマナさんが二階堂くんに伝えていたハートのおまじないは、マナさんがお祖母ちゃんから伝承されたものであり、思い出の世界を撃ち破れるくらい強力に願いを叶え得る類のものなので、それを伝承された二階堂くんがそのおまじないを使えば、自然とマナさんと結ばれることになる(二階堂くんがマナさんを好きなのは、TV本編以上にほのめかされている。)。「昔受け取った愛を次に伝承し、未来と契約(エンゲージ)する」というこの映画のテーマともマッチする感じ。
そして、TV本編の第32話で、幸せの王子(マナさん)から伝えられた愛を胸に最初に立ち上がったのが二階堂くんという描写から、マナさん(幸せの王子)と二階堂くん(街の人の代表)のエンゲージエンドが、ほのかな「世界」の救済エンドとして機能する。
つまり、クラリネットは立ち上がれたなら、という話。
クラリネットは選ばれなかった、忘れ去られたと怨念でもって幸せの王子(マナさん)の前に立ちふさがり、未来を壊そうとしたのだけれど、彼にも愛を伝導する人がいてくれたなら、彼が、二階堂くんのように立ち上がれる人であったなら……という残留感。
やはりどこかに、TV本編の主題とも連動した「一人の幸せの王子では全員は助けられない」と、次の通りすがりのヒーローたる、世界を行きかう沢山の、そして様々な幸せの王子、リソースの追加と調整が実現した世界が訪れたなら……という願いが、底の方で息づいてる映画だったと思いました。
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