ドキドキ!プリキュア第48話「ドキドキ全開!プリキュアVSキングジコチュー!」の感想です。
今回の見所ベスト1。
第1位:選択の結果切り捨てられた側だとしても立ち上がる
マナさん壮大に正体バレ。みんなして、徐々に、確かにうちの生徒会長だったらプリキュアして人助けくらいやるだろうと受け入れていく感じが面白かった。
そして、街の人達から応援される幸せの王子。自身をすり減らして街の人に宝石を分け与えて回っても、残るのは街の人達の自己中心的な喧騒だけ、王子本人は孤独に溶鉱炉行き、という『幸福の王子』バッドエンドが、乗り越えられた様が改めて明確に描かれる。
「頑張れマナ! 俺がついてるぞ!」(二階堂くん)
物語についてまわった、幸せの王子一人では全員は選べない、全員は助けられない問題。第32話で最初に立ち上がってくれた街の人たる二階堂くんも応援。幸せの王子相田マナさんが誰かを選んで助けている間、選ばれなかった誰かは、立ち上がった俺が助けておいてやる、というニュアンスが感じられる熱い台詞。映画で言うなら、存分にお祖母ちゃんの元へ駆けて行ってくれ、マシュマロは、俺が助けておいてやる。
そういう流れなので、幸せの王子が「家族のリンク」という、物語冒頭からマナさんが守り続けてきたものを、この最終局面でも守ろうと、レジーナ、亜久里とお父さんのリンクを守ろうと駆けていく間、プリキュアメンバーらが「ここは任せて先に行け」というのも、「幸せの王子とそれをサポートする立ち上がった街の人達」文脈が加わってるので熱い。「ここは任せて先に行け」はテンプレだけど、もうちょっと豊かな文脈がこの作品ではのっています。
特にね、人間態になる回で、「幸せの王子から愛を受け取って立ち上がった、次の通りすがりのヒーロー」の象徴として描かれていたシャルル、ラケルに対して(第29話の感想、第36話の感想を参照)、そこまでのメイン回がなかったランスがね。巨大ランスになってキングジコチュー様とガチで戦うとか、ええっ!? って感じだったけど熱かったですよ。ランスもやはり次の通りすがりのヒーローだった。シャルルとラケルが仮面ライダー的な方向での次のヒーローだったのに対して、ウルトラマン的な方向(大きさ的に)での次のヒーローだった。また、マナさんも「大丈夫? 私も手を貸そうか?」みたいなことは微塵も言わないのもいい。「君を信じる。」だからね。シャルル、ラケル、ランス、ダビィ、六花、ありす、真琴、立ち上がってくれる人だと信じている。
そして今話のハイライト。そうは言っても、怨念のようにつきまとう、「全員は助けられない」問題。選択の結果、選ばれなかった存在という犠牲は出る、という問題。
マナさんの己の名を賭した愛の散布を前にしても、それでも、王が娘を選んだために選ばれなかった存在、トランプ王国の民が許すと思うのか? ということを問い詰められる。トランプ王国の民というのが、映画版のマシュマロにクラリネットといった、「選ばれなかった存在」の代表なんですね。そして、そこに颯爽と現れて怨念を断ち切るまこぴー。
「愛に罪はない。悪いのは人を愛する心を利用した、あなた達よ!」(剣崎真琴)
一人の大事な人を選んでしまうというような、ある種の自己中と表裏一体の愛自体に罪はない、憎むべきものがあるとしたら、そういう愛を利用する存在だと。エゴは肯定しよう、でもエゴを利用しようとする心は否定しよう。
一番大事な台詞を真琴が言うのかよ、という方向でも熱かったし、このシーンが「選ばれなかった存在」側の矜持になってるのも熱かった。映画の感想で、選ばれなかった側の存在であるクラリネットが立ち上がってくれたなら……という素地を残してるというようなことを書いたのですが、まさに、王が一人を選んだために、「選ばれなかった」側であるトランプ王国国民の最後の一人の代表としての、この台詞なんですね。選ばれなかったけど、助けて貰えなかったけど、その後の物語で、真琴は立ち上がったんだと。第2話の、マナさんに抱きしめられて助けられる真琴の、逆のシーンになってるんですね。今度は、真琴がマナさんを抱きしめて助ける。「トランプ王国バッドエンド」を乗り越えた瞬間。あの時、王が「愛する娘か国か」の二択じゃなくて、それこそ立ち上がった王国の騎士とか忠臣とかに相談して、何とかリソースを追加して解決する方法もあったのかもしれないのだから。でも、その時の真琴は無力であったから。立ち上がれていない街の人であったから。その後の劇中でも、ポンコツ仕様極まりない感じに描かれてたフシがある真琴なんですが(王女様を探すアイドル活動あんまり意味なかったし、王女様の好きな事シリーズでクリスタル集めて辿り着いた王女様フェイクだったし。)、全てはこのシーンのためにあった感じ。この先も、幸せの王子的な人が、誰かを選んだ結果、選ばれなかった人が犠牲になるかもしれない。でも、選ばれなかったと怨念を向けるのではなくて、立ち上がって、次の誰かを助けられるヒーローになろう。この、幸せの王子相田マナを助ける剣崎真琴を、実質ラスト2のクライマックスにもってくるのはメッセンジャブルでしたね。
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