「フォーチュンがいなくても余裕ですぞ」(キュアプリンセス)

 ハピネスチャージプリキュア!第9話「空手でオッス!!プリキュアパワーアップ!?」の感想です。
 ◇

 『映画プリキュアオールスターズNewStage3 永遠のともだち』は先週観てきて感想もアップ済み(こちら)ですが、毎回のごとく、うちのブログとしては、二週くらいは感想記事中で映画の「コアな」ネタバレはなしの方向で(軽くは触れちゃいます)。その後は普通に言及していきます。

 ◇

 今回の見所ベスト1。


第1位:ご飯は美味しい


 いきなり伝説級のプリキュアにはなれないのでまずは「立ち上がった街の人」レベルのプリキュアから、とか。いきなり友達100人は無理なので、まずは最初の1人から、とか。何かと、地道にコツコツ積み重ねていこう、ということが描かれている『ハピネスチャージプリキュア!』。今回も、いきなり全力ダッシュを続けられる体力はないので、まずは「ロング・スロー・ディスタンス」のジョギング、とか。いきなり黒帯も青帯も付けられないのでまずは白帯から、とか。いきなりカッコいい攻撃はできないので、まずは防御の基本から、とか。いきなり空手で氷川いおなさんクラスにはなれないので、まずは目の前の昇段審査に自分なりに集中、とか。このモチーフがかなり描かれていた感じ。

 『スマイル』の頃の危機感だと、そんな、地道にコツコツとか言ってられないほど状況は危機的、気合だ! 状態だったと思うのだけど(厳しい頃のシリーズだ……)、2014年に描かれている『ハピネスチャージ』的には、立ち上がり始めた街の人が地道にコツコツレベルを上げてる間は、先輩が頑張ってくれている、が描かれていると感じております。前回フォーチュンさんが助けてくれたり、今回ハニーさんが助けてくれたり。『ドキドキ!』の頃の感想で使っていた言葉なら「過去のリソースが助けてくれる」という話だし、『プリキュアオールスターズ』や冒頭10周年挨拶企画とのコンセプトもマッチしてる感じ。

 「自分より強い他人」に関するスタンスが、オレスキー将軍とプリキュアサイドで対照的に描かれていたと思います。オレスキー将軍としては「自分より強い他人」は自分の地位を奪う存在なので、頑張られては困る。そういう存在は摘みたい。で、プリキュアサイドは、キュアフォーチュンにしろキュアハニーにしろ、頑張ってくれるありがたい、自分より強い先輩、だと。先人に対するリスペクトの有無、というストーリー。この辺りが、プリキュア内の先輩後輩だけじゃなく、空手における先輩の氷川いおなさんと後輩のかずみさんにもかかって描かれていて、丁寧な一話だと思いました。

 で、この先輩へのリスペクトが、劇外では過去のプリキュアシリーズへのリスペクトにもかかってるくらい、もう練られた番組というか練られた企画という感じで、今回の10周年冒頭あいさつが『スイート』のリズムさんなのは、「共有体験」にまつわるストーリーへの先輩リスペクトに関わってると感じました。

 『スイート』には、印象的に、「音」、「音楽」は「共有体験」である、というのが描かれるパートがあります。「音」は、その場にいるみんなに聴こえてしまって、否応なしにその場にいる人たちに共有できるものをもたらしていく、というパート。第30話(感想)は落ち込んでいた響さんを元気づけようと、クレッシェンドトーンが愉快な音(みんなに聴こえてしまう)を鳴らしていた、という話だし。第40話(感想)のアコと奏太が「同じ雨音」を聴いている描写とかが、ちゃんと意味がある。そういう作品。第1話の「思い出のレコード」から始まって、響と奏にも「共有体験」があったとか、アフロディテ様とメフィスト様とアコの途切れなかった「共有体験」とか、作品全体として「共有体験」は主題で、最終的には「悲しみという共有体験」を媒介にして、ノイズ様とも心を通わせる、という作品です。

 そんな所で、今話、


 「パンチやキックも凄いけど、歌ってみんなが和むよね」(キュアハニー)

 「お腹いっぱい、幸せいっぱいが、モットーだよ」(キュアハニー)


 「歌はみんなに聴こえて和む」と、「ご飯が美味しくて幸せ」は、敵味方とか関係なくて、「共有体験」なのだと思うのですよ。硬い言葉を使えば「普遍性」です。

 なので、もう、オレスキー将軍もチョイアークもラブリーもプリンセスも含めて、謎の「ご飯は美味しい」を連呼する「共有体験」の場が形成されるという。意外と、ハニーさんはもう『スイート』終盤の境地に達していて、単純に幻影帝国も悪い敵を打倒するとだけは考えていないのかもしれない。お腹が空いてたら敵さんにも飴あげそう。

 『スイート』的には、音楽が響さん担当で、ご飯(食)が奏さん担当。音楽を世界に伝えていく、美味しいスイーツで人を幸せにしていきたい、そういう『スイート』の二人の夢の続きを継いでるようなキャラクターとして出てきたのだとしたら、これも先輩から受け取るものは受け取って次の物語を、という観点からは熱いと思うのでした。

→キュアリズム



→大ずかん



→前回:ハピネスチャージプリキュア!第8話「友情の危機!!ミスフォーチュンの不吉な予言!!」感想へ
→次回:ハピネスチャージプリキュア!第10話「歌うプリキュア!キュアハニー登場!!」の感想へ
ハピネスチャージプリキュア!感想の目次へ