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 「突然そんなこと言われても」(氷川いおな)

 ハピネスチャージプリキュア!第32話「いおなの初恋!? イノセントフォーム発動!」の感想です。
 ◇

 今回の見所ベスト1。


第1位:イノセント


 おそらくは純真性(イノセント)サイドの比喩として、執拗にキリンを描いているのが面白かったです。た、確かにキリンは純真な瞳をしているが……! 一方でキリンを媒介にした氷川さんと海堂くんのキャッキャッを動かず見てるだけのナマケモノがナマケルダさん連想で大人サイドの比喩でしょうか。

 ここ数話で子供の頃の気持ち、純真性にスポットがあたっていた『ハピネスチャージプリキュア!』、おそらくは、「だけど大人になる」イベントの代表として氷川さんに恋愛イベントが。ブルーとクイーンミラージュが、そしてどうやらナマケルダさんもバッドエンドを迎えたような、面倒でしんどい、大人世界の入口、恋愛です。

 摩耗してダメになってる大人サイド(神・ミラージュ様・三幹部など)連中のバッドエンドを、子供組(めぐみ・ひめ・ゆう子・いおな・誠司など)の物語でトゥルーエンドに乗り越えてみせる、という作劇と思われる本作。子供組が持ってるパラメータとして描かれているのが、どうやらここ数話(プリキュアシリーズは例年第31話・第32話近辺がテーマ提示回が多い)を観ると「子供の頃の純真性と再契約して、厳しい大人世界へ向かう」というようなことだと思うのですね。

 海藤裕哉くんがサイアーク化し、ナマケルダさん演説で恋愛・恋することが否定されてからは、画面が色あせる、という演出が使われておりました。あるいは、恋愛バッドエンドを向えて閉じこもってる大人組の視界はこうだ、というような演出なのかもしれない。プリキュアシリーズの是は何と言っても虹色に象徴される「数多の色」ですので、色褪せる演出はストレートに、それではいかん、という感じです。

 そんな大人世界も恋愛も厳しいよを受けての、氷川さんの回答は、


 「…助けたい」
 「海藤くんが話してくれたこと、嬉しかった」
 「でも逃げたりしてごめんなさい」
 「気持ちはちゃんと受け止めました」
 「でもまだ、恋とか付き合うとか分からないの」
 「だけど私のことを見ていてくれて、嬉しかった」
 「私も海藤くんのことが大切です」



 と、お付き合いします! なほど大人サイドには踏み込んでもいないのですが、総じて恋する気持ち自体を否定しない。もっと言うと、関わること、関係性を構築すること自体は否定しない、というもの。

 この話も、第30話のめぐみさんの子供の頃の純真な「人助け」が輝いていた頃は良かったけれど、過酷な大人世界では能力がない人間の「人助け」は通用しない、だけどそれでも、子供の頃の純真な「人助け」精神が無駄だったと断じてしまうかと言ったら、それは違う。と重なる流れ。

 あるいは、第31話のゆう子さんの、子供時代の犬にごはんを作ってあげた経験は、共に歩めるということに関して素晴らしい成功体験だった、でも過酷な戦争やってる大人世界の敵兵にそれは通用するのか? そんなのは綺麗事じゃないか? でもそれでも、子供の頃の純真な原点をやってみせるよ。ファントムにもごはん作るよ、と重なる流れ。

 昔あった、「人を好きになる」「誰かと関わりたい」という純真な気持ちは、過酷な大人世界に入るにあたって、恋愛ドロドロの醜い現実になってしまう。現に作中では戦争まで起きてる。だけど、だとしたら昔確かに感じた純真な「好き」という気持ち、あるいはこの人と「関わっていきたい」と思った気持ちは無意味なのか。それを間違いだとは言いたくない。

 キリンイベントとフリスビー、対照的に動かないナマケモノ(ナマケルダさん)にいつも閉じこもって横になってるミラージュ様の描写などから、純真性・イノセントの中には、好きという気持ちとか、各自の子供の頃の原点の気持ちの他に、他者と交流を構築すること・続けること、の意味合いも入ってそうです(フリスビーが行ったり来たり)。閉じこもってのディスコミュニケーション状態よりも、動いて会いに行ってのコミュニケーションを、というのはもうプリキュアシリーズの定番要素でもあります。

 恋愛を現実は厳しいと否定する大人サイドの目線から、好きになる気持ちは否定しないし、子供の頃の純真性は纏ったまま大人世界へ向かうよ、な氷川さん視点に切り替わった所で画面に「色」も復活。新フォームイノセントフォームも発動。

 久しぶりに少女創作作品全体の話と絡めれば、定番の「子供と大人の境界領域」を描いているとも言えると思います。大人世界が厳しいのは実感し始めている。だけど、児童時間に信じた純真性を否定したくはない。この気持ち、イノセントという言葉、少女の心に化粧(大人要素)を纏うという姿で表現してみよう、という。

 うーむ、この作劇だと、誠司くんとくっつくのはやっぱりめぐみさんっぽいですかね。子供の頃の純真な時間(=幼馴染としての誠司くん)と、過酷な大人世界で再契約する(=恋愛のパートナーとしての誠司くんと再契約する)……が一番テーマ的にまとまる気が。僕の当初のひめとくっつくのではという予想は外れるやも。

 しかし、このここ数話で「子供の頃の純真性と、現実の厳しい大人世界で再契約する」という話を描き始めていったタイミングで、冒頭のプリキュア十周年企画は、最後に(おそらく)キュアホワイト・雪城ほのか(十年前=視聴児童が子供だった頃のプリキュア)が登場して、「どんな過酷な状況でも心に何を思い描くかは自由」&「子供の頃の気持ちは生きている(現にこうしてキュアホワイトが新規作画でまた描かれている)」で、どどーんとフィニッシュになるのか。イジメにあってる? 勉強つらい? 恋がうまくいかない? 家が貧困に? ソフトなのからハードなのまで普通に色々とあり得るであろう現在。

 あるいはもう大人視聴者でもOKかと思いますよ。十年前雪城さんに萌えくるっていた人。鑑みるに現在は、仕事が厳しい。リストラに。病気に。介護に。人間関係を壊してしまった。色々、本当に厳しいことがあり得るであろう現在。

 繰り返しになるけど、前期エンディング『プリキュア・メモリ』の歌詞は「大人になった時も忘れないでね。愛と勇気」。

 十年前の純真性を、過酷な現在の現実に立ち向かう力に変換できたなら。

 あと、今週はRubyGillisさんの感想記事がいつにも増して良い! 僕は『ドキドキ!』が本当好きなので、こうして時々書いてくれる人がいるのは嬉しい。↓

ハピネスチャージプリキュア! 第32話「いおなの初恋!?イノセントフォーム発動!」/穴にハマったアリスたち

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→前回:ハピネスチャージプリキュア!第31話「まさかの急接近!?キュアハニーとファントム!」感想へ
→次回:ハピネスチャージプリキュア!第33話「わたしもなりたい!めぐみのイノセントさがし!」の感想へ
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