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 プリキュアの放送がお休みの日曜日は何か一ネタ投稿しようシリーズ。久々に参加なのです。どすこい。

 『ドキドキ!プリキュア』の二次創作短編小説です。マナ×六花。ちょい百合注意。

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 ◇◇◇
 第32・5話「幸せの力士」/


 まだ芯の部分では風邪が完治していなかったのだろう。学園祭から数日後、ぶり返した熱で、マナはベッドにふせっていた。

 傍らには六花が寄り添ってくれている。

 小さなボリュームでTVをつけたままにしておくと、なんだか生活には余剰なものも必要なんじゃないかなんて気もしてきて。枕元には効率性とは関係のない心の潤いのための文庫本。積極的にそれらを堪能するような元気はまだなかったけれど、そうした優しいものに囲まれながら純粋に休息をとっている。それは、学園祭にプリキュアのことにと、駆け抜けていたここしばらくのマナの生活からすると、久しぶりの穏やかな時間でもあった。

「はい、お粥、作ってきたわよ」

 マナを囲んでいる優しいものの最たる存在、六花がベッドの横に椀がのったお盆を運んでくる。

 身体の熱と隔離された空間。何か、いつもよりも五感が敏感になってる気がする。米の香りのようなものに気がつく。六花の料理の腕は相当なもので、お吸い物の出汁を取る時に水の音を聴き分けたりできるらしい。運ばれてきたお粥も、そんな米のうま味そのものを生かしているといった類の、素朴さと自然な質感に恵まれたものなのかもしれない。あとはやっぱり、愛情。

 パジャマ姿のままのマナは上体を起こして、火照った身体の熱を逃がすように、上着のボタンを二つ外した。

 ◇◇◇

 マナが口をあーんと開けている。

「もう……」

 幼馴染とは、どこか以心伝心。体の気持ちイイところとか、心のくすぐったいところとか、お互いに知ってる。普段の万能の生徒会長様。あるいは、六花いわく「幸せの王子」様。そんなマナが二人きりでいる時には、童心に一時的にかえったような甘えをみせたりする。そんなマナが無防備に口を開けて、自分が作ったものを求めている。

 六花はスプーンで粥を少量すくって、マナの口元に運んでいく。

「ん、美味しい」

 豪華な食事ももちろん素敵だけれど、体が弱ってる時は、水の味とか、米の匂いとか、そういうものの有り難さが分かるものだ。

 もっとも、嗅覚だけからというよりは、体全体でしみじみと感じてるような、六花の匂いが大好きだなんてことを、この時のマナは考えていたりもしたのだけど。

「んー」

 何度かマナの口にお粥を運ぶと、マナは目を瞑って少し顏を傾け、唇を六花に向かって突きだしてきた。

 久しぶりに二人きりだから甘えているのかな。やっぱりちょっと心細いのかな、そんなことを思いながら、六花としては少し逡巡。マナはちょっと、ふざけてみせてるだけかもしれないし。

 受け入れますと、あらゆるガードを解いていたマナの唇に唇を合わせなかったのは、心理的には次善を選んだという六花の用心深さだったりもして。六花はゆっくりとマナの額に自分の額を合わせた。

「マナ、やっぱりまだ熱あるね」
「六花がお医者さんになったら、患者さんはドキドキしちゃうね」
「もう、マナは特別に決まってるでしょ」

 ゆっくりとマナが手を絡めてきたので、そのまま心地よく二人の世界に没入していくまであとちょっと。この、落下していくみたいな感覚が、時々子供の体と大人の体の中間にあるような今の体を持て余してしまうような六花にとっては、自分の中の敏感な部分を痺れさせてしまうほどに、快感であったりして。

「でもちゃんと、体温計ではかって熱は正確に把握しておいた方が良いのじゃありませんこと」

 しかし、その落ちてゆく感覚は背後から聴こえた聞き慣れた声によって遮られた。

 慌ててくっつけていた額を離す六花に、特に何事もなかったように落ち着いてパジャマのボタンをとめなおしながら応対するマナ。

「ありす、お見舞いにきてくれたんだ」
「あ、ありす。いつからいたのよ!」

 二人それぞれの反応。六花の方がちょっとキョドっているのはご愛嬌。

「差し入れに果物でも持ってきてって連絡をくれたのは六花ちゃんですよ。マナちゃん、お加減いかかです?」

 ありすはいつも通りの流麗な所作でベッドの横に正座する。

「うん。まだちょっとボーっとするけど、こういうのもたまには快適。ずーっと、昔観てた教育テレビの番組とか観てた」

 自然と三人の視線が集まるのは、既にどこか懐かしい、昔お茶の間でみんなで観ていた、そんなこともあった気がする、テレビというメディア。映っていたのは、夕刻の時間に何とはなしに流れていた大相撲中継。のこったー、のこったー、という行司のかけ声もどこか昔日の音で。

「私、お相撲さんって、アイドルだと思うの」
「マ、マナ、急に何を言い出すの?」

 先ほどまでの良いムードもどこ吹く風、マナが力士について語り出したのに、六花としては落胆半分。もう、何でもいいからついていくわ、といういつもの諦め半分。

「水の味、お米の香りのような素朴さというか。お相撲さんがのしっのしって体動かしてるの見てると、何か元気になってくる」
「お年寄りには、大人気ですよね。あるがままの力強さというか、そういうものが、例えば少し認知機能が衰え始めたりした人にも、伝わりやすいのかもしれません」

 マナとありすの見解は面白いなと思いつつ、華の中学生女子の会話ではないなとどこか冷静に六花は聞いている。

「お相撲さんの柱にドンってやるやつ、最近はやってもらうと女子もときめくそうですし」
「ありす、『壁ドン』と『鉄砲』は全然違うわよ?」

 束の間の冷静でいた時間を、ツッコミに消費させられる六花。そんな六花をよそに、何やらお相撲さんに関する閃きが、マナの頭の中では加速していってるらしい。

「ほら、このお相撲さんなんてエジプトから来てるって。絶対、すごいよ!」
「最近新聞などにも取り上げられている方ですね。ムスリムなので、ラダマンの時期は食を絶ったりしながらも、頑張ってるそうです」
「ありす、詳しいわね?」

 三人がテレビを通して見守る中、果敢に自分よりも巨躯の相手に立ち向かったエジプト出身の力士さんは、残念ながらうっちゃりで負けてしまった。

 しばし語らい合う乙女の相撲談義。

 内心、六花は、良いムードとか、耽美な時間とか、期待していたのとは違うなと思いつつ。それでも子供のように破顔して色々と喋りまくるマナは元気になってきたようだと、静かにお相撲さんに感謝した。

 ◇◇◇

「引退を考えています」

 早朝稽古の後、力士は親方に打ち明けた。

 異国の地での孤独。体力的な消耗。祖国での政変。勝てていない今場所。胸の内に苦しさや痛みを抱えていた。

 明後日は横綱とあたる。自分と同じ、異国からこの地にやってきて、勝ち抜き続けている強い存在。あんな風には、自分はなれないのではないか。焦燥と、抱いていた理想が現実の前に崩れ去る予感を感じた時特有の、自分には価値がないという感覚。

 大きな、例えばお年寄りたちから見たら勇壮な体躯をもてあましながら、そのエジプトから長い距離を超えてこの国にやってきた力士の内面は揺れていた。

 ◇◇◇

 病床から回復したマナが六花とありすと連れ立ってクローバータワーの展望台まで赴くと、和服の巨漢が憂いの表情で街を見下ろしていた。先日TVで取り組みを見た、うっちゃりで敗北した、遠い異国から来ているという力士であった。

 周囲にはひそひそ声。有名人にサインでも頼みたいという好奇心と、差し出がましいことは避けたいという謙虚さ。それに加えて、当の力士の陰鬱な表情が、周囲を行き交う人々が彼に声をかけるのを遠慮させていた。

 六花は、そんな暗澹たる表情をした力士を見たマナが、何かを直覚したのを敏感に察した。動物と比べては彼に失礼かもしれないが、そのマナの胸に湧き起ってきているものは、その昔マナが傷ついた子犬に向けた感情と同種のものに感じられた。

 力士は何かに諦観したように一人頷くと、こちらに向かってゆっくりと歩いてきて、マナたちとすれちがった。その時、フと目が合ったからだろうか、マナに向かって一礼。その所作には、彼がこの地にやってきてから身に着けたある種の精神性が反映されているように思えた。

 力士はエレベータの前で下に降りる扉が開くのを待っている。

 ここで、彼との縁も終わるのが普通であるということなのに。相田マナという人が、今の彼のような表情をした人にこそ駆けつけてしまう人間だということも、六花には長い付き合いで分かっていた。

「乗ります。乗ります!」

 力士が乗り込んだ下界行きのエレベータの扉が閉じる間際、そう言ってマナは駆け込んだ。

 ◇◇◇

「●●●関ですよね?」

 先日の力士談義にて、彼は特に最近世間的にも話題に上がってる存在だと知ったマナは、四股名でその力士に呼びかけた。

 うぉーんという重低音でエレベータが下に下降していく中、マナの声の調子は明朗だった。エレベータの閉じた空間にはマナ、六花、ありす、そしてその力士の四人しかいなかった。

 こくりと力士は頷く。

「やっぱり! 応援してます!」
「ありがとう。でも、ダメだね。中々、勝てない」

 縦にも横にもマナたちの二倍はあろうかという文字通りの巨漢であったが、現在の彼は萎んでみえる。空気が足りていない風船。電池が切れかかってる電球とでも言おうか。

「そういう時も、ありますよ……」

 控えめに言って深く落ち込んでいると分かる人間に、どう声をかけたものかという塩梅で、六花には無難な言葉しかかけられない。

 これは、エレベータがクローバータワー展望台から地上に降りるまでの、一分ばかりの会話であった。かけられる言葉はせいぜい一言、二言。それくらいの儚い縁でもあるようで。

「豆まき、やってましたよね?」

 マナが言ったのは、大きい地震が起こった頃に、力士たちが被災地域で行ったチャリティーの色彩が強い豆まきのイベントのことだった。力士の感覚としては少し前の出来事だった。そういえば自分も同行していたと彼は思い出す。

「お祖父ちゃんがテレビで観てたそうです。すっごい、勇気づけられたって。言ってました」

 続いて、ありすからはこんな言葉を。

「勝つのはもちろん大事なことですけど。お相撲は格闘技であると同時に興行だと思いますわ」

 ありすの流麗な微笑は、力士に、客席に観に来てくれる大勢のお客さんたちの笑顔を思い起こさせた。

 ちょっとだけ咳払いをしてから。六花からも一言。

「このご時世なので病院に来るのもお年寄りが多いんですけど。みんなお相撲大好きだって、母が言ってましたよ」

 やがて、エレベータは地上に辿り着いた。

 ゆっくりと、扉が開く。

 別れ際に、あとちょっとだけ。

「ちょっと、体にさわっても、いいですか?」

 マナの申し出は、力士にとっては慣れたもので、時には直接は面識がない人から子供を腕にぶら下がらせてくれませんかとせがまれたりもする。力士とは、そういう稼業でもあった。

 慇懃に頷いて承諾した力士に向かって、マナは重心をがっちりと地面に噛ませて踏み込んだ。

 腰も入れて、体重が乗った拳を、この萎みかけていた巨体の胸元に一撃、撃ち込む。

 それでも、力士は微動だにしなかった。

「うん。やっぱり、お相撲さんは、すごいです!」

 一礼してマナは駆けだしていく。六花とありすは、連れが失礼なことをしましたとばかりに苦笑いを浮かべながら、丁寧にお辞儀をして、後を追う。

 この時、「幸せの王子」から注入されたものの正体を、力士はまだ知らない。

 ◇◇◇

 翌日の夕方、横綱と彼の力士の取り組みが始まる直前は、世が湧きたっていた。

 それでもテレビ放映を見つめる層はやっぱりお年寄りが中心で、みんながみんな同じものを観ているというほどの一体感は、この社会から失われて久しいままだったのだけれど。

 それでも、あるいは車椅子生活のお年寄りが。

 務めていた企業から解雇されて、たまたまこの時間にテレビで相撲を見るというタイミングに巡り合ってしまった元サラリーマンが。

 病気の療養で、少し学校生活のような社会からは距離を取って自宅で過ごす時間が多い子供が。

 その瞬間。少しだけ目を輝かせて、堂々たる大横綱と、その横綱を狙う異国からの伏兵の取り組みが始まるのを待っていた。

 マナたちもそうしたテレビ越しの聴衆であったが、ちょうど取り組みがはじまる直前に、ありすの携帯電話が鳴った。

「セバスチャンからです。イーラが作り出したジコチューが、駅方面で暴れているそうです」

 マナはテレビを消してすばやく立ち上がると、ラブリーコミューンとキュアラビーズを取り出す。お相撲さんたちにそれぞれの戦いがあるように、彼女たちにも彼女たちにしかできないことがあった。

「まこぴーと亜久里ちゃんは?」
「直接向かうそうです」

 六花も準備はオーケーで。心の片隅で、少しだけ彼の力士の健闘を祈りながら。

 時刻は夕方の薄闇に包まれる頃であった。街の片隅に、虹色の光が煌めく。

「「「プリキュア・ラブリンク!」」」

 ◇◇◇

 キュアハートを先頭に、街灯の光が揺らめき始めた街をプリキュアたちが駆ける。

 道を、橋を、時に建築物を縦横無尽に駆け抜けるその姿を、街をゆく人々が見ていた。

 それは、テレビでお相撲さんの戦いを観ている層とは少し違っていたけれど。

 あるいは会社帰りのちょっと疲れている企業戦士の人とか。

 子育てに忙しい中、夕食の暖かさを守るために買い出しに出てきていた主婦の人とか。

 恋愛に友情に、少し人間関係で傷ついてしまっていた若人とか。

 生きているだけで大変な世界であった。だけど疲弊した心に揺らめく気持ちは、ちょっとだけ共通のもので。それは例えば、今日もプリキュアたちは戦っているのか、という、微かな、でも優しくて確かな、灯台の光のようなもの。

 ある会社員は、常人離れしたスピードで駆けていくキュアハートの横顔を見た後、振り返り前を向いた。今日の万策尽きたと思った案件、明日早起きしたら、もう少し練り直してみよう。そんなことを思いながら。

 ◇◇◇

 戦いの後、マナと六花は再びクローバータワーの展望台を訪れていた。ありすは気を利かせたのか、席を外している。

「●●●関は、負けちゃったみたいだね」
「今の横綱、ものすごく強いらしいものね」

 夜の展望台はちょうど二人腰かけられるような台座から街を眺め下すことができて、ちょっとムーディーであった。ありていに言えば、カップル向けのスポットになっている。

 戦いを終えた安堵感がある。ジコチューにされてしまった人も無事元に戻った。せわしく駆け回る宿命にあるようなマナとも、少しの間だけ静かに、湧き起る喜びを胸に、向き合っていたい。そんな気持ちの時もある。

 六花はやさしくマナの手の甲に自分の掌を重ねた。伝わってくるマナの体温は、彼女の温かな内面の温情をも反映してる気もする。瞳を瞑って、こうしてマナの存在を感じているのは心地よい。

「ねぇ、六花。地球上には、こうしている間にも、悲しいことが起こってる場所が沢山あるんだよね」

 六花は瞳を開いて、表情を崩さないマナの横顔をみやる。幾星霜、魂の深い部分を近くに置いてきた六花にしか分からないこともある。マナは深い悲しさと、そうした悲しい場所にいる人々への慈しみを感じていた。

「革命とか。貧困とか。戦争とか」
「マナ。今度は、そんな遠くまで行って人助けをしようなんて考えてるの?」

 マナは首を横にふる。そんなことはないと。自分はそんな凄い人間じゃないと。

 それでも例えば今、無条件に六花と触れ合っている幸せな気持ちを受け入れられない。そんな時がある少女であった。こんなにも凄い女の子なのに、フと折れてしまいそうで怖い時がある。そしてその予感こそが、六花が彼女から目を離せない理由の一つでもあった。

「遠くまで駆けて行きたいって気持ちは、確かにあるの。でも、それはいけないことだって、どこかで分かってる」

 六花の脳裏に、古い映画館で映写機に映されたような、色褪せた、でもそれゆえに大事なことのような記憶が蘇る。自分自身の胸にチクリと刺さる、胸の痛みと共に。どうして自分は、あの時、マナがお祖母ちゃんの元に駆けて行っている間、彼女の愛犬を守れなかったのか。

 六花とマナの子供でいられた時間は終わりに差し掛かっている。今、大人と呼ばれる世界へ向かう境界線上に自分たちはいるのだと。この十四歳という時間の一度きりの輝きと、それゆえの危うさと。六花は体の中心に残るような痛みと共に、十分にそのことに気づけるだけの利発さを携えた少女であった。

 ただし、それは痛みを伴うことであったけれど、マナと六花の関係を「次」へと進めていく類の事柄でもあった。

「お相撲さん……」
「え?」

 私、変な事言ってるなと、空から俯瞰しているもう一人の自分が言っている。いつもは、こういう事を言い出すのはマナの方なのに。

「マナは、マナの向かいたい所へ。あなたの魂が指し示す場所へ、駆けていけばいいわ。その間、街の事が心配だっていうのなら。お相撲さんが何とかしておいてくれるわ」

 こちらも、それだけで伝わるというような、ずっと心を側に置いてきた者同士にしか分からないこともあるようで。

「マナも分かったでしょ。お相撲さん、強いわよ? ちょっと何か怖いものが襲ってきたくらいじゃ、ビクともしないわよ?」

 マナは六花の手を握って立ち上がった。展望台から見える夜景を、もっと一緒に見たいとでもいうように。

「それはそうと、私はマナの行く場所へ、ついて行くけどね」
「うん。ありがとうね。六花」

 六花は、マナという幸せの王子のツバメであった。それでも、どうしようもなく悲しい事に触れた時に。そんな悲しい事を二人では覆せないと理解した時に。一緒にこの世界から消えることができたなら本望なのかと言ったら。そんな願いはどこか歪なものだと、心の奥では分かってる。

 それでも、全員が幸せになれるなんていうような。子供の頃に夢見た世界の処方箋なんて、まだ分からなくて。今もこうして、お互い片手だけ繋いで、身体をあずけながら眼前に広がる街明りを茫然と見つめている。

「ねぇ、マナ」

 続けたい言葉を口にできないまま、六花の時間はゆっくりと流れていく。

 この先、とても悲しい破綻的な出来事が起こるその時に。この宝石を配って駆け続けた最愛の幸せの王子のために、立ち上がってくれる人たちが現れることを、六花はまだ知らない。

 お父さんへ。
 お母さんへ。

 街角の車掌さんへ。お嫁さんへ。お相撲さんへ。

 この祈りに似た気持ちの名称が明らかになるのはもう少し先の話。今はただ、暗闇の中に灯る人々の営みのアカリが、マナと六花の視線の先で黄金色に輝いていた。

    /第32・5話「幸せの力士」・完


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