プリキュアシリーズ以前に僕の心の糧になっていたアニメ作品、『おジャ魔女どれみ』のシリーズ第一期Blu-rayBOXが予約開始です。
タイミングに合わせて、昔書いていた『おジャ魔女どれみ』に関するテキストをサルベージしてみます。若かったので、ちょっと尖ってるところもありますね。(汗)
余談ですが、この文章書いた次の日に母親が倒れて僕の人生変わったのですよね。ようやっと、ちょっと距離を取ってこの頃の文章を自分で見られるようになってきました……。
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(2004年9月25日に書いたテキストです。)
■おジャ魔女どれみのココが好き
徹底して子ども向けエンターテイメントとして作っているので、安心しておおらかな気持ちで観られること。
結果としてはこの作品には大きいお友達のファンも沢山ついてるんですが、そのほとんどが子どもが観ているアニメをお父さんお母さんが一緒に観ている間に、いつの間にかお父さんお母さんもファンになっていたという健全な心理パターンの末にファンになったパターンが多いという点がポイント。作り手の意志は、大人オタクに向けられることなく、完全に子どもをいかに楽しませるかという点に集中しています。なので、美少女5人組が主役と言っても、大人のオタク向けへの媚びが一切無く、清々しい内容となっています(例えば、大人のオタク層にもアピールしようとおんぷちゃんのシャワーシーンを入れるとか、関先生に乳揺れさせるとか、そういう邪悪な演出などあろうハズがない)。オタク用深夜美少女アニメ等を大人が観てると、客観的にもうわっ…って感じだし、自分が観ても、ああ、オレ何やってんだ……感がぬぐえないんですが、おジャ魔女だとその辺りの後ろめたさが薄いです(経験談では、僕の部屋にはおジャ魔女6人組フィギアが飾ってありますが、一般人にそれを見られた時、「おジャ魔女ならセーフ!」という名言を頂いたことがあります)。このセーフ感は、心理的なものから来るものと思われます。オタク用美少女アニメだと、なんか、本当に恋愛対象として二次元美少女を見ているのか?的なキモさ感が感じられるのに対して(僕は我が道を行くならソレもアリだと思ってるが)、おジャ魔女のそれは、お父さんお母さんが娘を見守る時の優しい気持ちor自分達が少年時代だった頃のノスタルジックな気持ちを主人公らに向けているパターンがほとんどなので、比較するとキモさが薄いです(一部、本当に恋愛対象として見ている強者もいるでしょうが、そっちの方が有標ってことで)。
このように大人に媚びないだけに逆に大人が安心して観られるという現象を引き起こしている、「アニメは基本的に子どもらに楽しさを届けるための媒体」という作り手のスタンスが好きです。そして、この点が好きな理由その2にも繋がります↓
●おジャ魔女どれみのココが好きその2
徹底して子ども向けエンターテイメントとして作っているのだけれど、でも子ども騙しでは無い点。
子ども向けに作りながら、確実に子どもの刹那的な快楽中枢を刺激するためだけじゃない、「深さ」を丁寧に入れているのが好感が持てます。子どもにウケるといっても甘いお菓子ばかりを食べさせるんじゃなくて、ちゃんと栄養価の高い他品目料理でかつ美味しいもので子どもを喜ばせている感じです。そして他品目高栄養価食材は、自然に大人にも喜ばれる要素を含んでいます。
一例を挙げると、シリーズ三作目の「も〜っと!」には、全50話を通してのストーリーの縦軸として、不登校児のかよこちゃんの学校復帰物語という、非常に社会的なテーマを担った物語が組み込まれています。こういった子ども向けの中に大人も頭を使えるスパイスを入れ、かつ、でもやはりメインは子どものためなのだと、バランスを取るのに考え抜いてる作り手の姿勢に好感がもてます。かよこちゃんの一連のエピソードは是非観てもらいたいんですが、子どものためにもココは逃げずに描かなきゃならない、でもコレ以上はアニメという子ども向けの媒体では主張するべきではない……といった感じの、作り手の真剣なバランス取りがかいま見えます。このような、「好きな理由1」で言ったような徹底した子ども向けスタンスに加え、そこに深さ、難しさを入れる際のバランスの取り方に真剣な姿勢に好感が持てます。おそらく、作り手は媒体の特性、及び作品を見る受け手側の心理というものを十全に考え抜いた上で、ここまでをアウトプットしようと決めているものだと思われます。そこには、アニメを媒体の一つと捉えた上で背後に様々な媒体の情報享受、表出フィールドを持っているという懐の深さが感じられ、享受する媒体も表出する媒体もアニメしかない本当の意味で使えない偏狭なオタクとは次元の違う、優れた人達が作っているのだという雰囲気が感じられます(この、アニメという媒体でどこまでをアウトプットするべきか?等という問いが存在することにすら気づけない、自分の情報享受がアニメだけに限られている偏狭オタクの作品批判は端から見ていて非常にみっともないものがあります。「ガンダムSEEDは現実の戦争を描写していない」などの批判がそう。自分のアンテナがアニメしかないので、戦争という情報は現実も含めてトータルにアニメで扱われるものと誤謬しており、アニメという媒体でどこまで戦争を描くべきか?などという問いが存在することにすら気づかない。アニメで描ける範囲の戦争をガンダムで描いているのであって、現実の戦争をそのままアニメに写像しているワケではない。そう言う人は、例えば経済的なものとか、国際関係学的なものとかを存分に取り入れて現実の戦争を説明するようなガンダムだったら満足だったんだろうか。頼むんで、そういうのはアニメじゃなくて現実の専門書や言論に求めて下さい、感性的なものなら、戦争文学に求めて下さい。その点、どこまで戦争をアニメでアウトプットすべきか?と考えた末に、巻き込まれてしまった少年の視点から見た戦争という形を取ったSEEDは、ターゲットが日本人の少年少女であったということなら、非常にまっとうな判断に思えます)。
●おジャ魔女どれみのココが好きその3
キャラクター同士の関係性が考え抜かれていること。
おジャ魔女はコレがスゴい。ガンダムSEEDだとメインは四人+フレイって感じですが、キラとアスランはお互いをどう思っているのか物語の進展に合わせて執拗に描写されていましたが、例えばラクスとカガリがお互いをどう思っているのか?辺りの描写は非常に薄いものでした。フレイとアスランに至っては接触すらしてないし。
おジャ魔女の場合、この辺りが鬼です。メインの5人+ハナちゃんに関して、全ての組み合わせに関して、お互いがお互いをどのように思っているのか物語の進展に合わせて非常に納得の行くように描かれています。一例を挙げるとおんぷとももちゃんは最初ちょっと反発し合ってたとか、あのイベントの後これくらいの距離にまでなったとか、そういうのが全組み合わせに関して、非常に濃密に描かれています。ここにも作り手の必死の思考が見て取れます。ああ、この時点ではあいこはももこにこう言うだろう、でもおんぷは言わない、とか。はづきだったらこういう言い方をするだろう、とか考え抜いた上でキャラを動かし、台詞を与えています。「関係性の発展を丁寧に描いているのが魅力」とは、最近プリキュアで僕が言ってたことですが、もとをたどれば、これはおジャ魔女に感じていたことです。プリキュアが基本的になぎさ−ほのかの二人の関係を描いているのに対して、おジャ魔女は初期から3人、最終的に6人の関係性を完璧に描いていたので、その辺りはまだまだプリキュアよりもおジャ魔女の方が上の部分かもしれません。
●おジャ魔女どれみのココが好きその4
ももちゃん。
僕の場合に限り非常に好きな理由にあたってのファクターが大きいです。
めちゃめちゃイイ娘なのですよ。でもまあ、性格の話なんかをしてもしょうがないんで、ももちゃんストーリーをちょっとだけ紹介しますが、基本的に「も〜っと!」では、「マジョモンローという死別した恩人との気持ちに区切りをつけ、それに変わるものの獲得」、「ドッカ〜ン!」では「夢探し」がももちゃんストーリーのテーマになります。
とりあえず今回は「も〜っと!」の方だけですが、基本的に「マジョモンローの存在に変わるもの」というのが「どれみ達との絆」に他ならないんですが、50話通してのその獲得過程がステキ過ぎます。最初、絆の獲得も何も、ももちゃん日本語が喋れません。帰国子女だから。絆の獲得にあたってプリキュアのなぎさもほのかも良かったですが、とりあえず二人は日本文化の土壌は共有していた所からのスタートでした。ももちゃんの場合、まず言語の壁、文化の壁を打破する所から物語が始まります。道のり遠すぎ。とりあえず文化の壁からクラスメイトやらおんぷやらと衝突し、逐一それをどれみを初めとする仲間達の助力の中で乗り越えていく、その非常に漸進的な過程が胸にキます。どれみ、はづき、あいこ、おんぷ、一人一人とのイベントを通してようやく仲良くなったと思ったら、自分には無い「4人とハナちゃんの関係」という壁にぶつかって、またまた落ち込んだり、どこかいつまでもマジョモンローのことが忘れられないでいたり……そういうのを積み重ねての、ももちゃんストーリー最終話、「も〜っと!」49話、泣けます。マジョモンローへの気持ちの昇華と、49話分のどれみ達との絆、是非、いつか観てやって下さい。
しかもももちゃん、最初こそクールな帰国子女ポジションでしたが、後半ではボケキャラ化します。そこが熱い。ももちゃん大好き。
最後に客観的な面白さデータですが、最近の商業的売り上げNo.1のアニメと言えば『ガンダムSEED』ですが、実はこの『おジャ魔女どれみ』、グッズなどの商業要素はともかく、ビデオリサーチ調べなんかを参照にすると、視聴率はSEEDよりも高いです。この辺り、いかに広い層に楽しまれる要素を持ったアニメだったのかが滲み出ていると思います。完全に子ども向けに作りつつ一般視聴者も獲得と、この順番で人気が出てるプロセスも、熱いです。僕的にお薦めのアニメです。
(ここまで)
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参考:おジャ魔女どれみ16/1巻/感想(ネタバレあり)