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販促回を兼ねたコメディ調中心のはーちゃん回かとも思いつつ、はーちゃんが七変化する、つまり多様に「見え方が変わる」と、わりと作品全体のテーマも直球で盛り込まれていたなと感じた回でした。
●参考:リコ(=Record)が過去を赦して未来に目を向け始める〜『魔法つかいプリキュア!』第1クールのエッセンス
この怖かった夜の見え方が変わって満天の星空の美しさに気づくとか、競争意識で捉えていたリズお姉さんの見え方が変わって変わらずに自分に向けられていた愛情に気づくとか。
今話の突然の雨が大変だと思ったら花が元気になったとか、ボールが消えたと思ったけど友情が厚くなったとか。
『魔法つかいプリキュア!』という作品にあると思われる、「見え方が変わる」ことによる、恐れ・不幸の愛情・幸せへの転換というような、テーマ。土台として、「違った見え方ができて良い」という「多様性」が世界に担保されていることが大事なのですね。
ナシマホウ界のものの見方、魔法界のものの見方、両方があるから、そこに「多様性」があるからこそ良いというお話。
今作、久しぶりに「プリキュアのお父さん」こと鷲尾天氏(『ふたりはプリキュア』〜『Yes!プリキュア5GoGo!』までのプロデューサー)が本格的に関わってるのも気になっていたのですが(正確には前作『Go!プリンセスプリキュア』から企画に関わるのに復帰)、鷲尾天氏に関しては、『プリキュアオールスターズDX1』時に、「世のグローバル化一辺倒の流れへの問題意識として敵役のフュージョンがあった」という趣旨のことをいくつかのインタビューで語っておられるのが有名です。
●参考:第3回「プリキュア」シリーズの脚本家、村山功さんインタビュー 前編
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(引用)
で、鷲尾さんのテーマが、「基本的にグローバル化は良いことだけど、グローバル化の名の下に、国や地域の個性までも奪い取るような、間違ったグローバル化はイヤなんだよね」みたいなことをおっしゃって。
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●参考:【特別対談・前編】鷲尾天×ひこ・田中、『魔法少女はAコード、「セーラームーン」はBコード、「プリキュア」はCコード。そしてDコードは?』
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(引用)
これは、「映画 プリキュアオールスターズDX みんなともだちっ☆奇跡の全員大集合!」(2009年)のテーマでもあったんです。全員同じである必要なんてぜんぜんない、違う個性が集まることにこそ意味がある。
――それに対して、敵側は「すべてをひとつにする」ために襲ってくる。
鷲尾 はい。一緒くたにして均一化すれば悩みなんてなくなる、と迫ってくる。フュージョンというキャラクターは「グローバル化」の象徴的な意味がありました。それに対してプリキュアたちは違う個性が集まることにこそ意味がある、つまりシリーズの違うキャラクターたちだって集まれるんだ、というストーリーになっているわけです。それ自体が一番のメッセージですね。
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これまでの感想に書いてきた通り、演出の様々な箇所に和歌でいう「本歌取り」のごとく、『初代ふたりはプリキュア(感想)』〜『ふたりはプリキュアMaxHeart(感想)』を意識してる箇所が見られるなと思っていた本作ですが、芯にあるテーマの部分でももう一度いわゆる「鷲尾プリキュア」を2016年verとしてやってるのかなと思い至った今話でした。
魔法界編の時の、魔法商店街のエピソード(第3話「魔法商店街でショッピング!目覚めるルビーの力!」)とか人魚の里のエピソード(第7話「人魚の里の魔法!よみがえるサファイアの想い!」)とか、「各々の地域の伝承・伝統を尊重する→リンクルストーンが登場」というフォーマットだったのですが、わりとストレートに現実のグローバル化一辺倒の流れに、それだけだとどうなの? 均質化していく世界の中で、地域多様性に根差したそれぞれの伝統文化とかも大事なんじゃないの? って辺りを描いていた箇所だったんだなと改めて思ったのでした。
一方で、このテーマだからこそ今作の通常の敵さんの呼称は「ヨクバール」で、二つのものをそれこそフュージョンのごとく取り込んで強引に均質化してしまう描き方になってると。それに対して、二人がバラバラのまま「違って」いるみらいさんとリコさんという対照になっていると。
そんな、第1クールも終わってポツポツと物語の骨格になる部分も見えてきたゆえに、七変化するはーちゃんに対して、目撃者たちが「多様な」ものの見方でそれぞれの解釈をしていって、最終的にみんな「幸せの妖精」として捉えなおす……っていう今話。本当、作品のエッセンスが詰まっていた回だよな〜と思いました。
上記リンクの鷲尾天氏のインタビューの頃よりもさらにグローバル化が加速している2016年という現在。同時に、因果関係はともかく、ますます未来に希望を感じ難く、恐れとか不幸とかに目がいきがちになっている気もします。
そんな中で、もう一度原点のテーマでもある「多様性」に回帰。ナシマホウ界の見方、魔法界の見方、あの国の見方、あの文化の見方、あの人の見方、それぞれが違っているから、世界にそういった数多の見え方の違いが担保されているからこそ、我々はじゅんぐりじゅんぐりと自分独りの中で考えていても辿り着けない「見え方の違い」を世界の方から、他者の方から受け取ることができて(ちょうどリコさんがみらいさんを通して受け取った「見え方」でリズ姉さんからの変わらない愛情に気付けたように)、もともとそこにあった愛情とか幸せとか、大切なものの存在に気付けるのかもしれない。
それは大事なことだと思うから。
七変化(多様性)=見え方の違い=象徴としてのはーちゃんを守る、という、とても現在的で、だけど『ふたりはプリキュアMaxHeart』最終回でほのかが口にした言葉から続いている、ヒーロー(プリキュア)像。
「わたし達の心の中の宇宙は誰からも自由だわ」(キュアホワイト)
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