- ブログネタ:
- フレッシュプリキュア! に参加中!
前川淳さんによる『小説フレッシュプリキュア!』の感想です。
ネタバレ注意です。
TVアニメシリーズ『フレッシュプリキュア!』から、リアルの方で8年とか経過しております。
その間に、現実の人間関係の方でも、以前は一緒にいたのに、今ではバラバラに過ごしてるとか、そういうことは普通にあると思うのですが。
間には、東日本大震災がありました。様々な人々の分断を引き起こした出来事でした。
また、この期間の間に、「無縁社会」というキーワードが取り上げられるようになり、いよいよ人の孤立化が深刻な世の中になってきた、ということもよく話題に上がる社会になってきてしまいました。
そんな、現実世界の世情ともリンクするように。
今回の『小説フレッシュプリキュア!』には、このような「以前は一緒にいたのに、今ではバラバラになってしまった(しまう)」という人間関係が、何重奏にもなって描かれています。
ざっと、あげるだけでも。
・解散するトリニティ(ミユキ―レイカの関係)
・今ではこちらの世界とラビリンスとで離れて暮らしている、ラブとせつな
・ゲストキャラの、かつては幼馴染だったけれど、今ではバラバラになってる愛美と健太郎
・美希のママ―美希のパパ
・ラブと美希のバラバラになる予感。
などなどです。
特に、トリニティのレイカさんが「家庭の事情」で離れなければならないくだりは、「家庭の事情」の内容は明言はされてないのですけど、世情がら、親の介護問題なんだろうなと。僕も長い間親の介護をしてる身なので、身につまされる話なのでした。親の介護をしながら、華やかな活動はできないのですよね……。
そういった、どんなに仲良しで一緒にいたくても、「バラバラになっていってしまう力学」に満ちている世界で、それでも、何らかの意味で「途切れないもの」はある。あるいは、そういうものがあるから「再合流」もできるはずだ、という希望的なものを汲み取っていた作品でした。
あんまりリアルと重ねすぎるのもアレですが、これはプリキュア仲間にも当てはまります。『フレッシュ』とか『ハートキャッチ』の頃、しょっちゅうオフ会やっていた仲間とも、めったに会えなくなってきているこの2016年。だけど、「途切れた」という感覚はそんなになくて、たぶん、普通にまた「再合流」します。早ければ、今年の年末にも会います(笑)。
この、「再合流」できるはず……というテーマを、いくつかのテーマがある『フレッシュプリキュア!』の中でも、一番のテーマと言ってもよい、「やり直せる」とリンクさせて描いてもいるという、構成力が光る一冊でもありました。
メインは、ゲストキャラの愛美と健太郎が再合流するまでを、プリキュア達が助っ人するという構成ですが、愛美がメフィストになっていましたので、「罪」のようなものを背負っているのですね。これが、そのままTVシリーズ本編の、せつなさん(イース様)に重なります。
罪を犯したイース様だけど、側にいてくれる人(桃園さん)がいれば「やり直せる」。これを、罪を犯した愛美さんだけど、側にいてくれる人(健太郎さん)がいれば「やり直せる」と重ねて描いているということですね。
熱いのは、「やり直せる」を先行して経験しているせつなさんが、今度は、これから「やり直」さなければならない愛美さんの助っ人ポジションになっていることです。もう、そういうテーマもあってか、せつなさん大活躍の小説でしたね。
上記の、「今ではバラバラになってしまったけれど、再合流はできる」のテーマもかかってくるシーンだったので、せつなさんが再びこっちの世界にやってくる所は盛り上がりましたよ。
ラストシーンは、TVシリーズラストでせつなさんが旅立って行ってしまうのに重なるように、美希たんが夢を追って旅立って行ってしまうのですが、ここでも、プリキュアシリーズでずっと描いている、「離れていても、繋がっているものはある」という感じで幕を閉じておりました。
もう、何回このテーマの描写で泣かされてるんだって感じですが、例えば、初めて『映画プリキュアオールスターズDX(感想)』が作られて公開されたのは、『フレッシュ』の時でした。その時、夢原さんが言っていた、その後のプリキュアシリーズ全部に通底していく台詞、「だってみんな同じ空の下にいる」の精神ですね。
物理的に離れてしまっても、それは本当の別れというわけではない。同じ空の下で生きている。「途切れないもの」はある。
最近の、ブディズム(仏教)チックな要素もけっこう取り入れてるよなと感じている、僕のプリキュアシリーズの見方からすると、それは「縁」のようなものかな、とも思います。
子育てなんかしている方とは中々会えなくなったし、介護でそれまでの共同体からは離れる人もいるし、震災では沢山の人達がバラバラになったし、孤立社会は進んでゆく最近だけれど。
ラブとせつな。&美希たんにブッキーさんのように、表面的な「分断」を超えた、ある種の「永続性」がある「縁」のようなものは、きっとある。
ちと、スピリチュアルに聞こえるかもしれませんが、最近の『魔法つかいプリキュア!』感想で書いてるように、トーテミズムとかアニミズムとか、草木国土悉皆成仏(そうもくこくどしっかいじょうぶつ)とか、そういう要素もプリキュアシリーズには入ってるよねって視点からすると、『フレッシュ』はもろに、「やり直せる」のテーマに絡めて、「転生」を扱っていたシリーズです(イース様からせつなさんへ。劇場版のトイマジンさんからクマのぬいぐるみさんへ)。
参考:過去が今と繋がる時、熊のぬいぐるみは変身し、赤いあいつは蘇る/メインブログ
そういうのも踏まえると、バラバラになってもバラバラじゃない、「縁」のようなものには「永続性」はあるさ的な話の部分は、この『フレッシュプリキュア!』という作品、「死別」まで射程に入った上で描いていたんだろうなと、今なら思えます。
ルーレット伯爵的には、やがてみんな辿り着くのはゴール(死)です。それでも、「縁」のようなものには「永続性」があるのを信じて。あの日劇場でエンジェル化する桃園さんに向かって向けられたミラクルライトの光が綺麗だったのは、真実だ。それは、途切れない類の何かだ。ということ。
どうせバラバラになるという虚無感に襲われそうになった時、改めてこの感覚は思い出したい。そんな気持ちも再燃してきた一冊でした。
子育ても介護もあるし、また災害もくるかもしれないし、世界金融崩壊とかもあるかもしれないけれど、あの頃信じられた気持ちを忘れずに、ちゃんと夢なんかも追いつつ、ゆけるところまでは、何やかやと生きてゆきまっしょい。
→Blu-rayBOX
→せつなさんの石積みが見られるコミックス版
→Amazon・ビデオでプリキュアシリーズを観る(初代〜ドキドキ!へのリンクまとめ)
→タイムリーTV放映時の『フレッシュプリキュア!』全話感想へ
→魔法つかいプリキュア!感想の目次へ