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 『魔法つかいプリキュア!』第49話に関して、既に感想記事は書いておりましたが(こちら)、今回はもう少し気づいた事柄を補遺として書いてみます。

 ネタバレ注意です。
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 『魔法つかいプリキュア!』という作品に、ちょっともつれてしまっていたり、歪んで見えてしまっていた「過去」に関して、「今」の時点から「受け取り直す」という物語モチーフが見て取れる、という話を昨年〜今年とけっこうブログに書いておりました。

 一番は第1クールのリコさんの物語にエッセンスが集約されていて。

 第1クール序盤では、リコさん視点からの「過去」。昔はあんなに仲が良かったリズ姉さんとの関係が、なんだがぎこちなくなってしまっているのが描かれます。

 そんな、リコさん視点から「今」のリズ姉さんは「プレッシャーを感じる身内」「競争相手」みたいにちょっと歪んで見えてしまっていたのが、みらいさんを媒介にすることでリコさんが「過去」を「受け取り直し」て、リズ姉さんは「過去」から変わらずにリコさんに対して「無償の愛情」を向け続けてくれている優しいお姉ちゃんだった……と気づく、「見え方」が変わる。変わるというか、歪んでいたのが本来のかたちに落ち着いてゆく、調和していく……という物語が一つあったのでした。いわば、「過去との再会」という物語モチーフですね。

 この点に関しては、第1クールが終わった時点でこちらの記事に詳しく書いておりました。おそらく去年の当ブログの一番のヒット記事ですね……。↓


リコ(=Record)が過去を赦して未来に目を向け始める〜『魔法つかいプリキュア!』第1クールのエッセンス


 この「過去との再会」という物語モチーフが、例年TVシリーズ本編の物語のエッセンスになってる春の映画、『映画プリキュアオールスターズみんなで歌う♪奇跡の魔法!』でも、ソルシエールさんが魔法使いさんとの「過去」を「受け取り直す」物語が描かれていた点からも、やはり『魔法つかいプリキュア!』という作品で大事に扱われていたのが見て取れると思います。


参考:映画プリキュアオールスターズみんなで歌う♪奇跡の魔法!/感想(ネタバレ注意)


 で、今回は第49話でも、これらの序盤から描かれていたエッセンスを継承するように、「過去との再会」という物語モチーフが主に二点描かれていたのではないか、という話です。


●一点目:大学生みらいさんが、中学生時代の「過去」(=リコさん/=魔法)と再会するという物語モチーフ

 Bパートの大学生みらいさん視点からすると、リコさんがいて、魔法があった中学生時代というのが「過去」になっているのですね。

 Bパート序盤は、もう魔法界に通じなくなったパス、カタツムリニアではない電車……という「大人の現実」の描写から始まっていて、まるで「ワクワク」もんの魔法があった中学生時代の「過去」なんて、なかったことになってるかのように始まります。あんなに魔法使いを信じて探していた勝木さんですら、魔法使いは見なくなったという話をしていているのが、「過去」はなかったことになってしまったのか? というのに拍車をかけています。やはり、もつれて、「過去」が歪んでしまっている……という所からBパートは始まっているのですね。

 そこから、ラストで「奇跡」が描かれ、リコさん、魔法、という「過去」の「ワクワク」との再会が感動的に描かれたのは、もう視聴済みの方には言わずもがなな部分です。

 幸せだった「過去」が歪んでしまって、昔大事だった人と今では離れてしまっている……という所から、そんな「過去」を「受け取り直し」て、大事な人と再会する。

 第1クールのリコさんとリズ姉さん。

 『映画プリキュアオールスターズみんなで歌う♪奇跡の魔法!』のソルシエールさんと魔法使いさん。

 校長先生とクシィさん。

 そして、第49話Bパート……と、細かいところもあげるともっともっと何重奏にもなってますが、「過去との再会」という物語モチーフを通底させていた。何度も繰り返しながら、徐々に色彩が深まってゆき、第49話でもっとも美しい色に到達するという構成を構築していた作品だったと思います。

 「別離からの再会」というモチーフは、逆説的に、今、大事な人といっしょにいられるとしたらそれはとても幸せなことだ……ということをあぶりだしていきますから、時代性もあったと思います。

 特に、第49話Bパートは「言葉」を伝えようとすることが大事なキーになりますから、ソルシエールさんや校長先生と違って、まだ死別ではないのなら、今生きている大事な人にはちゃんと「言葉」を伝えておこうという気持ちにさせてくれる、良い物語だったと思います。


●二点目:メタに『魔法つかいプリキュア!』という作品が、「過去」の『初期プリキュアシリーズ』と再会するという物語モチーフ

 こちらは少し「メタな」話になるので、オールドファン向けというか、けっこう昔からプリキュアシリーズに触れていた……という方向けの文章になりますが。

 本『魔法つかいプリキュア!』という作品には、初期鷲尾天氏プロデューサー時代の『ふたりはプリキュア(感想)』〜『MaxHeart(感想)』、『Splash☆Star(感想)』辺りの初期プリキュアシリーズの(和歌で言う)本歌取り的な表現、オマージュ的な表現が豊富であった……という点に関しては、実際に初期シリーズをじっくり観ていた方には、そんなに異論がない部分かと思います。

 で、このオマージュ要素が、表面的なものにとどまらず、上述のように作品本体が「過去との再会」を大事な物語モチーフとして扱っていた作品ですので、本作に「過去」のプリキュアシリーズ作品の要素が色々含まれていること自体が、昔からの視聴者には「メタに」「過去との再会」体験になるという、一つの「仕組み」として機能するような感じになっている、ということだと思うのですね。

 第49話だと、巨大はーちゃんとデウスマスト様が戦うという展開が、やはり『初代』〜『MaxHeart』のオマージュということになるかと思います。ここで、視聴者は、巨大な光のクイーンとジャアクキング様が対峙していた絵を思い出して、一つの「過去との再会」を経験するわけですね。

(はーちゃんと光のクイーン/九条ひかりさんが設定として似てますし、デウスマスト様とジャアクキング様も設定として似ているのも、オマージュ要素であると感じます。)

 そして、それ以上に、「別離」の要素に関して、お祖母ちゃんの言葉が「再会」のキーになるというのが、「MaxHeart」最終回のオマージュになっていたと思います。

 「MaxHeart」にもなぎさとほのかの「別離」を匂わせる要素があり(ほのかの留学関係)、それは、幼い頃に両親が遠くへ行ってしまった(別離)ことにずっと傷ついている、ほのかの痛みとして描かれていきます。あの時、両親も離れていってしまったのに、なぎさとも別れることになるのだろうか、と。

 そこでタメた上で、ほのかのお祖母ちゃんの、


 「また会えますよ、だからもう泣かないの、希望を捨てずに頑張ってれば、明日はきっとイイ日になりますよ、ね、ほのか」


 の台詞がキーとなり、「願い」が「奇跡」を起こし、「再会」エンドとなるのが「初代」〜「MaxHeart」のラストです。

 やはり、第49話の、リコさんとの「別離」から、みらいさんのお祖母ちゃんの、


 「素直な言葉は力になる。想いが繋がっていれば、それは奇跡を起こすのよ」


 の台詞がキーとなり、「願い」が、「言葉」が、「奇跡」を起こし、「再会」エンドとなるのとシンクロします。

 ここでも、視聴者は少し抽象的ですが、物語展開の経験として「過去との再会」を経験する感じになっていたと思ったのでした。

 また、さらにメタに作り手側の方にも目を向けてみますと、六年前の三月に、初期プリキュアシリーズの集大成である『映画プリキュアオールスターズDX3未来にとどけ!世界をつなぐ☆虹色の花(感想)』が別れと再会の物語になったのは、震災が起きたタイミングとは関係ない偶然(制作期間から考えたらその通り)とはインタビューで仰ってるのですけど、その映画も鷲尾天プロデューサーと大塚隆史監督のタッグで、六年後のこの第49話も別れと再会の物語で、同鷲尾天プロデューサーと大塚隆史監督(とあえてまだ呼びますが)が関わっている……というのは、もちろん偶然かもしれないのですけど、察するところはある表現でもあると思うのです。

 視聴者的には、六年ぶりに鷲尾天プロデューサー的なもの、大塚隆史監督的なものとの「過去との再会」という形になった方もけっこういらっしゃると思うので。

 さらには、

 の話ですか。

 意図した演出で第49話がこの制作布陣になったのだとしても、そこまでの意図はなかったとしても、まあ、劇中で描いたように、かつて一緒にやってた同期と、時間が経ってから「再会」していっしょに何かやるっていうことは、リアルでも実はあったりするよ! みたいなことを視聴者が受け取って、作品本編の物語モチーフによりしみじみしたりできる話にはなってるなぁと思ったのでした。

 三塚監督が暴走して(え)「闇の魔法」に手を出して暴れまわってるのを、大塚監督が殴って(え)正気に戻す謎のスピンオフ作品とか、お願いします!

 みらいさんがリコさんと別れた中学二年生の終わりから、Bパートの大学生での再会まで何年経っているのかは、4年説、5年説、6年説、それぞれ、それぞれなりにしっくりくる感じだったりです。

・4年説(中学二年の終わり〜大学一年の始まりの春)
 →春の映画のソルシエールさんが魔法使いさんを恨んでいた時期とほぼ同期するので(参考ツイート)、これも演出としてありな気がします。ただ、みらいさんが既に海外に仕入れにいったりしてる経験があるという情報からすると、ちょっと早い気も。

・5年説(中学二年の終わり〜大学一年の終わりor大学二年生始まりの春)
 →中間くらいで、塩梅が良いです。東日本大震災を意識してるとしても、本作がメインは2016年の作品だったと捉えると、五年で合致します。去年のアニメーション作品に、「5年」という要素が多く見られたことに関しては、別ブログのこちらの記事を読んで頂けたら幸いです。→2016年「アニメ作品」ベスト10〜過去の悲しい出来事を受け取り直し始める震災から五年後の想像力(ネタバレ注意)/ランゲージダイアリー

・6年説(中学二年の終わり〜大学二年の終わりor大学三年生始まりの春)
 →個人的にはこれかもなと思ってるところですが。この国の多くの人が大事な人と会えなくなることを経験した東日本大震災からリアルで経過した時間と重なりますし、Bパートはテーマ的にみらいさんが「大人」になってるというのがキーなので、20歳という年齢は成人としてどんぴしゃな気がします。

 最終回で具体的な年数が分かる情報が明かされたら同人誌なんかを作る身としてはありがたいですが(え)、明言されなくても、ようは、「魔法」的、「ワクワク」的なものが失われがちな「大人」になるまで、何年くらいかかるか、視聴者それぞれの時間で受け取れるようにボカしておく、解釈の幅を残しておくというのもまた良いかな〜とも思います。Bパートのみらいさんの気持ちが分かる「大人」的な心情を解する年齢になるのに、共通の普遍的数字とかはなく、18歳だったり19歳だったり20歳だったり、受け手側なりに色々だとも思うので。

 素晴らしい第49話でした。この世界に出現させてくれて本当にありがとうございます!

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→前回:『魔法つかいプリキュア!』第49話「さよなら…魔法つかい!奇跡の魔法よ、もう一度!」の感想へ
→次回:『魔法つかいプリキュア!』第50話(最終回)「キュアップ・ラパパ!未来もいい日になあれ!!」の感想へ
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