ブログネタ
魔法つかいプリキュア! に参加中!
 『魔法つかいプリキュア!(公式サイト@朝日放送公式サイト@東映)』第50話(最終回)「キュアップ・ラパパ!未来もいい日になあれ!!」の感想です。
 ◇

 シリーズ構成が前半2クールのVSドクロクシー様編と後半2クールのVSデウスマスト様編で、一つの作品の中に二つあったり。(そしてそれぞれ、前半が初代『ふたりはプリキュア(感想)』、後半が『ふたりはプリキュアMaxHeart(感想)』のオマージュにおそらくなってるのですよね。)

 一つの作品に二つの主題歌だったり。

 一人ではなく二人、という劇中の要素と絡めるように、「メタに」作品の作り方にも「一つの中に二つ」要素を様々な面で入れていたと思われる本作。そういう流れで、最終回も二本立て方式。

 最終回一本目、前回第49話で、別離〜(「過去」とか、「魔法」的なものとかとの)再会……のラインの物語は美しく収斂したので、最終回二本目の今回第50話は、「欲張ることではなく分かち合うこと」、そして「(思いがけない)「未来」について」。この辺りの話を描いて、楽しく終劇させていたと思います。

 イチゴメロンパンがみんなに届く展開などをかけながら、とても楽しい、受容的で、「和」に至る、的な風景が描かれていきます。

 人魚の里のシシ―、ナンシー、ドロシーらに(この三人はやっぱり「未来」世代の象徴だったのですね。第7話の感想参照)、補習メイトのジュン、ケイ、エミリーたち、家族(リコさんの父母、リズ姉さん)、敵だったバッティさんたちも含めて、(「融合」ではなく)独立性を保ちながらも、一緒にいられる風景。

 この、独立性を保ちながら手を繋ぐように繋がっていき、みんなでいられる風景というのが「メタ」にまで繋がっていって、映画という別媒体のソルシエールさんにクマタさん、次回作TVシリーズという別媒体のキュアホイップさんまで登場……というのは、「メタ」好きにはイイな! という展開でした。イチゴメロンパン+クリーム(次回作の象徴)で、独立性を保ちながら「未来(=次回作)」に繋がるという表現だったので、残念ながら「鍋」の出番はなかったか!?

 魔法つかいプリキュアさん(今作)。ホイップさん(次回作)。ソルシエールさんにクマタさん(映画)。各々に独立しながらも、相互貫入し合っているこの風景。ゾクゾクする方向で良いですね。

 そして、こうした独立性を保ちながらも、一緒にいられる風景……の土台になっているのが、「欲張ることではなく分かち合うこと」という本作のテーマの一つにして、大事では? と描いてきた事柄ですよ、ということだったのだと思います。

 ドクロクシー様の虫歯が全てのスイーツを手に入れようとしている……というのは、まさに「欲張る」の表現なのですね。それだと、「虫歯」になっちゃうよ、と。

 そうではなくて、次世代みらいさんとリコさんを彷彿とさせる二人の少女がやっていたように、一つのイチゴメロンパンを、「分かち合うこと」が、上記の楽しい風景の実現には、大事なんじゃないか? と。

 もともと、敵側のヨクバールが二つのものを融合的に取り込んでしまう「欲張る」モチーフで、プリキュアさん側がミラクルとマジカルの「分かち合う(分担)」モチーフだったので、最終回のピースも、これまで描いてきた背景の絵の適所にピタっとハマった感じですね。

 そこから、最終回は「(思いがけない)「未来」について」の風景へ。

 もともと、人魚でも空飛んでイイ(思いがけない「未来」)とか、「過去」を受け取り直した上で、ワクワクもんの最高の思いがけない「未来」へ向かおう……という要素が随所にあった作品でありました。

 それらを継承した上で、作品的に最後に描かれる、(思いがけない)「未来」は。

 「メタ」には『キラキラ☆プリキュアアラモード』という次回作の存在自体がワクワクもんの「未来」だとか、リコさんが校長先生になるかも、とか、この辺りもいくつも重ねて描かれていると思いましたが、メッセージ的に感じたのは主に二つで。

 一つ目は、いわゆる「トーテミズム」的、「アニミズム」的考え方がアリな「未来」。

 ドクロクシー様の虫歯存在も、レインボーキャリッジ(冷凍みかん)も、最後はなんか意志を持っていて、なんかモフルン化(物質に心が宿る)、及びはーちゃん化(植物:花に心が宿る)してるのですよね。

 融合させて眷属の自我を奪ってしまうデウスマスト様と、それぞれの宝石に自我が宿るレインボーキャリッジの対比から繋がって、物とか植物にも、心が宿る……という「アニミズム」的な世界観の出現に繋がっていったのは上手いなーと思いました。

 もう一つは「トーテミズム」的な世界観で、次世代のみらいさんとリコさんを彷彿とさせる二人の少女が、外見とは逆に、キャストがみらいさんっぽい方が堀江由衣さんでリコさんっぽい方が高橋李依さんなのですね。もしかしたら、わたしはあなたかもしれないし、あなたはわたしかもしれない、もっといって、わたしは地中のヤムイモかもしれない(「トーテミズム」っていうのは、こんな感じの考え方です。あんまり、自分が自分であることにこだわらない感じなのですね)。

 これは、異世界の誰かが、あるいは未来の誰かが、自分自身かもしれない……みたいな考え方なので、じゃあ、異国のあなたも排斥するんじゃなくて、大事にしておこうか……という発想に繋がっていきます。何気ない異国の人、縁あって手にしたクマのおもちゃ、そういう「存在」が、自分自身かもしれないし、自分の大事な誰かかもしれない。そういう世界観になると、ぞんざいに扱ったり排斥したりというよりは、大事に、尊重しようという方にいくので、やはり、上記の「独立性を保ちながらも、一緒にいられる風景」に繋がっていく考え方だよなと。今話だとかかしのドクロクシー様ですね。あれが、もしかしたらクシィさんかもしれない……みたいな世界観がさりげなく描かれていました。だから、最後の風景にはかかしドクロクシー様もヤモーさんもいっしょにいられる(校長先生は別に排斥しない)という。

 エゴ。わたしはわたしだけで、そんな凄いわたしが全てを飲みこむ! という方だけに行っちゃうと、帝国主義(他者を侵略する)とか、飲みこむ方のグローバル化とか、そういう方向に行っちゃうので、鷲尾天プロデューサー的には、グローバル化に対する試論としてプリキュアを制作していった過程からすると、そういうのに対する日本的・和的価値観ってなんだ、となると、「アニミズム」とか「トーテミズム」とか「両部神道(神道と仏教を同時に存在させられた考え方)」とか、そっちの方向になってくるのかなぁと、僕も共感する部分だったのでした。


参考:鷲尾天氏のエッセンス〜均質化に向かう世界で「見え方が変わる」を守るということ―魔法つかいプリキュア!第15話「ハチャメチャ大混乱!はーちゃん七変化!」の感想(ネタバレ注意)

参考:映画魔法つかいプリキュア!奇跡の変身!キュアモフルン!/感想(ネタバレ注意)


 二つ目は、内面のイメージの具現化・実現化としての「未来」。

 みらいさんが、水で内面のイメージを具現化することとか(第6話の感想参照)、ペガサスの回の「飛ぶ」イメージを実現するところとか(第8話の感想参照)、パチパチ花の正解を選び取ってしまうとか、「内面のイメージを実現化する」魔法というか奇跡を持ってる子として描かれておりました。

 第49話Bパートも、もちろんリコさん側ががんばってたのもあると思うのですが、みらいさんに残ってたこの「内面のイメージを実現化する魔法」が発動して再会できた、とも、裏付けを想像したりもできます。

 で、重要回のモフデレラ回(第29話の感想参照)とかも、もろに「内面のイメージが実現化する」話でしたので、一つ、「未来」の源泉は、我々の想像力=内面のイメージにあって、そこから創造されるものだ……というような要素があった作品だと思うのですね。この感覚は、何かしらクリエイター的な活動をやってる方には、分かる部分があると思います。我々の内面のイメージには、そのうち実現する「未来(作品など)」が先行してイメージされてるわけですから。

 で、そんな「内面のイメージ」=お城にいきたい……を「未来」に実現化させてくれる「架け橋」の象徴がシンデレラモチーフにおける「馬車」(=お城=イメージが実現化する「未来」まで移動させてくれる存在)ですから。ラストシーンがレインボーキャリッジに乗って、みらいさんやリコさんやはーちゃんさん、様々なキャラクターたち(補習メイトさん達を中心に、それぞれが「内面に抱いていたイメージ」が未来で実現した様が描かれていきます。ついにニューヨークにきたジュンさんとか)の「内面のイメージ」を、ワクワクもんの「未来」に運んでいくシーンで終劇っていうのは綺麗だなと。

 デウスマスト様的な、いつかまた大きい破綻がやってくる未来……的な予感というのはリアルの方にもあります。災害にしろ、戦争にしろ、金融破たんにしろ。

 で、結局、今われわれが「内面のイメージ」として抱いているワクワクもんの(思いがけない)最高の「未来」を、実現化していくことで、そういう暗い未来はルートブレイクしていくって方向で一つどうか、と。

 魔法と奇跡と、出会いと別れと再会と、そして繋ぐことにまつわる物語。

 堪能しました。制作陣に百万の感謝を。

 TJさんの最終回絵にもリンク張っておきますよ〜。↓

→『魔法つかいプリキュア!』オフィシャルコンプリートブック



→Blu-ray

魔法つかいプリキュア! Blu-ray vol.1
高橋李依
ポニーキャニオン
2016-09-21


Amazon・ビデオでプリキュアシリーズを観る(初代〜ドキドキ!へのリンクまとめ)

→前回:『魔法つかいプリキュア!』第49話「さよなら…魔法つかい!奇跡の魔法よ、もう一度!」の感想へ
→前回:コラム:『魔法つかいプリキュア!』第49話に組み込まれている二つの「過去との再会」という物語モチーフへ
→次回:『キラキラ☆プリキュアアラモード』第1話「大好きたっぷり!キュアホイップできあがり!」の感想へ
魔法つかいプリキュア!感想の目次へ