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 公開初日に観てきた『映画プリキュアスーパースターズ!(公式サイト:音注意)』の感想です。

 今回は全5回でお送りする予定で、その第3回です。

 第1回から順に読まれる方はこちらから。↓


映画プリキュアスーパースターズ!の感想1〜ワンオペ母に手を差し伸べる朝日奈みらいの物語(ネタバレ注意)


 それでは、第3回。

 ネタバレを含んでおりますので、まだ観てない方はご注意下さい。
 ◇◇◇

 第1回では、今回の映画は前々シリーズ『魔法つかいプリキュア!』(感想)の主人公の朝日奈みらいさんの(テーマ的な意味での)物語になっているというのを見てみました。

 今回の第3回では、同じように今回の映画は前シリーズ『キラキラ☆プリキュアアラモード』(感想)の主人公の宇佐美いちかさんの(テーマ的な意味での)物語にもなっているという部分を見ていってみましょう。

 『キラキラ☆プリキュアアラモード』という作品を振り返ってみると、プリキュアシリーズ的には『ドキドキ!』(感想)〜『ハピネスチャージ』(感想)〜『Go!プリンセス』(感想)の柴田宏明プロデューサー時代に3部作で描いていた「幸福の王子と街の人たち」モチーフが再び描かれていたのが特徴の一つでした。

 「宝石」を街の人達に配る「幸せの王子」と、「お菓子(スイーツ)」を街の人達に配る宇佐美いちかさん、似てますよね。

 「幸福の王子」モチーフは、何と言っても一番色濃いのは発端の『ドキドキ!プリキュア』ですので、詳しくはこちらを参照です。↓


参考:ドキドキ!プリキュア感想/第32話「マナ倒れる!嵐の文化祭」


 ざっくりとは、自己犠牲で「街の人たち」に宝石を配っていた「幸福の王子(=相田マナさんのようなヒーロー的な人)」だけでは世界は救えない。「幸福の王子」の自己犠牲をルートブレイクして、全員が助かるハッピーエンドに向かうためには、「幸福の王子」から宝石を受け取っていた「街の人たち」側が立ち上がる必要がある……という物語モチーフですね。

 『ドキドキ!』にしろ、このモチーフの一旦の完結編である『Go!プリンセス』にしろ、最後に「幸福の王子」ポジションのヒーローと、立ち上がってくれた「街の人たち」が共闘するのが、胸熱な物語モチーフです。

 で、『キラキラ☆プリキュアアラモード』の場合は、最初の「幸福の王子」はいちかさんのお母さんですね。海外でお医者さんをやっていると、本当に困ってる人に宝石を配ってるような生き方をしている人です。

 そのお母さんの生き方が、子であるいちかさんに犠牲をしいてしまっているんじゃないか? というのが物語の一つの核心ですが、いちかさんは昔お母さんから貰った愛を胸に立ち上がります。いちかさんが、立ち上がる「街の人たち」の一人でもあるんですね。

 立ち上がったいちかさんが、今度は次の「幸福の王子」のポジションになります。

 そこで、最終回ではいちかさんのお母さんといちかさんの関係を繰り返すように、「幸福の王子」であるいちかさんは、自己犠牲をしいられるゆえに、自分のやりたいこと、自分の大好き、自分の「想い」を遂げることはできないんじゃないか? というテーマが描かれます。

 そこで、今度は次の「街の人」であるペコリンが立ち上がってくれて、いちかさんの自己犠牲は軽減、いちかさんは自分自身のやりたいことである「世界へ出る」ができるようになる……というのが『キラキラ☆プリキュアアラモード』終盤の物語でした。

 今回の映画では、自分のやりたいことを遂げるのが困難なのははなさんです。ちょうどはぐたんという赤ちゃんも連れていますし、お母さんというポジションも、いちかさんのお母さんのような「幸福の王子」と重なります。

 はなさんは、クローバーに謝りたいという個人的な「想い」を持っている。でも、自己犠牲をしいられる「幸福の王子」は自分の「想い」を遂げることができないのか?

 というところで、「助っ人」として、『キラキラ☆プリキュアアラモード』で同じ物語を抱えていた宇佐美いちかさんが現れる。はなさんに助力する。応援する……というのが今回の映画でありました。やはり、今回の映画は(テーマ的に)『キラキラ☆プリキュアアラモード』の映画でもあるのですね。

 第2回で、「悲しい過去」をルートブレイクする一つの要素として「応援」が描かれているということを書きましたが、この「応援」という要素が、一人では自分の「想い」を遂げられない「幸福の王子」への「応援」……という文脈と重なってる感じなのですね。

 『キラキラ☆プリキュアアラモード』には、もう一人剣城あきらさんという「幸福の王子」ポジションの人も出てくるのですが(彼女も、「街の人」ポジションである妹さんのために自分の「想い」は後回しにする人として最初は描かれていました)。

 『HUGっと!プリキュア』だと、この「幸福の王子」的に「一人で背負い込みがち」な属性を持っているのは輝木ほまれさんです。

 『HUGっと!プリキュア』TVシリーズ第5話でも、「自分の暗部、シャドウとの対峙を一人で背負い込んでしまいそうになるほまれさん(キュアエトワール)」というシーンがありました。


参考:挫折を可能性と捉えなおすということ〜HUGっと!プリキュア第5話の感想(ネタバレ注意)


 そのノリで、今回の映画でもウソバーッカの閉鎖空間の中から、ほまれさんは一人で扉に体当たりして出ようとしてしまうシーンが描かれます。

 そんなほまれさんに、一人で背負い込む必要はないという趣旨の言葉をかけるのが、上記の物語を背負っている剣城あきらさんです。この辺り、この台詞をこのタイミングで言うのは(各作品のテーマ的にも)このキャラクターだよな〜というのが隅々まで行き届いている感じの映画でありました。

 ほまれさんに向かって「二人でもダメな時は、どうすればイイと思う?」って言葉がかけられるところは、上記の「幸福の王子」モチーフのこれまでの物語をだーっと思い出してしまって、かなりグっときたのでした。

 そもそも、本映画でも脱出のキーになる「イチゴメロンパン」が、『魔法つかいプリキュア!』では「人と人とのつながりの象徴」として使われていましたから、はなさん一人ではどうしようもなかったところから始まって、いちかさん、みらいさんとどんどん「助っ人」の「応援」が加わっていき、最後は「イチゴメロンパン」を増やして閉塞を突破、そこからほまれさん一人でなく、さあやさんと二人だけでもなく、みんな(劇場のミラクルライトを振ってる子供たち含む)で扉を突破、最終技は「フォーメーション」(一人ではできない技)という流れまでが綺麗な映画であったのでした。

 『映画プリキュアスーパースターズ!』の感想、第4回以降も数日中に更新していく予定です。

▼『映画プリキュアスーパースターズ!』の感想
第1回〜ワンオペ母に手を差し伸べる朝日奈みらいの物語
第2回〜悲しい過去も何とかなる物語
●第3回〜「幸福の王子」宇佐美いちかの物語
第4回〜アニミズムとしてのプリキュアシリーズの物語
第5回(最終回)〜過去の思い込みから解放される物語

→オフィシャルコンプリートブック



→「映画プリキュアスーパースターズ! 」主題歌

「映画プリキュアスーパースターズ! 」主題歌シングル
「映画プリキュアスーパースターズ! 」主題歌シングル
Marvelous Entertainment Inc.LDC(PLC)(M)
2018-03-14


 あと、何となく今年から実験的にしばらくコメント欄を開けておいてみるので、何かプリキュアの話とかありましたら〜。

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Amazon・ビデオでプリキュアシリーズを観る(初代〜ドキドキ!へのリンクまとめ)

→前回:HUGっと!プリキュア感想/第6話「笑顔、満開!はじめてのおしごと!」(ネタバレ注意)
→次回:一条蘭世さんが大事なキャラクターである理由〜HUGっと!プリキュア第7話の感想へ
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