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『HUGっと!プリキュア(公式サイト@東映/公式サイト@朝日放送)』第49話(最終話)「輝く未来を抱きしめて」の感想です。
ネタバレ注意です。
複数の関係し合ってるテーマが重層的に描かれている本作ですが、あえて一つを取り上げるなら、
「やり直せる」(破綻しても、周囲の助力と一時の居場所・避難所・余裕があればやり直すことはできる)
だったのかなぁと思います。
というのも、最終回の時間ネタで明らかになったのは、はぐたん=キュアトゥモロー=未来はなさんの子……ということで、
この物語全体が、
未来世界で「破綻」を経験した未来組(ハリーなど)が、一時「過去」に退避してはなさんがはぐたん(トゥモローさん)を子育てする時間を「やり直し」(「居場所・避難所」に退避している期間)、愛や希望を受け取り直した上でまた未来世界に帰っていく(彼・彼女らからすれば破綻した現実に再び立ち向かっていく)
構造になっていたからです。
長年のプリキュア友人のTJさん(Twitter)がよく感想で書いてたのですが、「破綻」が起こった未来組の世界のラスボスは断片的な情報から繋ぎ合わせると、闇落ちしたはなさん本人と思われます。民衆に裏切られて(中学時代のイジメイベントのヴァージョンアップ版)闇落ちしたはなさん。
参考:HUGっと!プリキュア #49「輝く未来を抱きしめて」/『真・南海大決戦』
その未来での「破綻」に対して、色々情報を総合すると未来はなさん闇落ち期と、トゥモローさんを子育てしなきゃいけない時期は重なりますから、『ドラゴンボール』の未来トランクスとブルマの話じゃないですが、おそらく「もし闇落ちしない野乃はながトゥモローさんを育てていたらどうなっていたんだろう?」という後悔のようなものがずっとあった。
その後、未来での「破綻」から未来組は過去(2018年)に退避、「やり直し」を経て、また未来へ帰っていく(最終回)物語だったと。
13歳はなさんの方に「居場所・避難所」的な資質があり、作中のプリキュア=母=(未来が思った通りにいかなかった時に「やり直し」していくための)「居場所・避難所・余裕」という意味合いがある作品である……というのは、だいぶ前からこちらの記事などで書いていたので参照して頂けたらと思います。↓
参考:本当の(理想の)お母さんの代わりでもカッコいい理由〜HUGっと!プリキュア第3話の感想(ネタバレ注意)
というわけで、僕的には世界・縦軸の大きい物語レベルでも、はなさんとはぐたんというメイン二人の関係性(実は親子)においても、それらを補強する細かいエピソードレベルにおいても、全てが「やり直し」をキーワードに繋がっていて、美しい作品だったなぁ、と思ったのでした。
繰り返しになりますが、作品がはじまる1年ほど前、
『HUGっと!プリキュア』の広報も兼ねてると思われる『プリキュア15周年記念PV 公開 〜ふたりの勇気はわたしの「夢」でした〜』を観てみると……↓
『HUGっと!プリキュア』という作品は作品の裏ターゲットに「昔プリキュアを見ていたような現在20代くらいの女性」もあるようです。【#プリキュア15周年 新情報】
— プリキュア15周年公式 (@precure_15th) 2018年2月1日
プリキュア15周年記念PV 公開 〜ふたりの勇気はわたしの「夢」でした〜
オリジナルPVが完成しました!
詳しくは15周年サイトまで!https://t.co/JrAztHtNKJ #precure #プリキュア pic.twitter.com/iGgr15XEux
彼女たちは子供の頃に「イメージしていた未来」が実現できたのか?
実現できなかった人の方が多いと思います。
第1話の感想から書いておりますが、「当初イメージしていた未来が思ったように実現できない」野乃はなさんは、そんな彼女らに重なるのかもしれません。
当初イメージしていたプリキュアのような大人にはなれなかった彼女たちは、無意味なのか? 未来はもうどうしようもないのか?
15周年記念作の本作は、10周年作品の『ハピネスチャージプリキュア!』でも扱っていた、「プリキュアは無意味だ」という主題に改めて向かい合っている……という話を第46話の感想で書いておりました。↓
参考:HUGっと!プリキュア第46話の感想〜ハピネスチャージ以来もう一度「プリキュアは無意味だ」に向き合う(ネタバレ注意)
我々が生きてる現実世界の方も連想してしまう事柄ですが、未来は破綻しています(超少子高齢化、財政破たんするかも、格差が広がり過ぎると戦争が起こるかも、また大きい災害が起こるかも、などなどあげだしたら「破綻的な未来」要素はたくさんあげられてしまいます。)。
もう、覆すのは無理。バッドエンドが決まっているのだとしたら、プリキュアとか、ヒーロー的な存在とか無意味です。
このもう諦めよう、絶望の方が楽だ、という諦念にずっと抵抗の意志を示してきたのが15年続いてきたプリキュアシリーズという作品群だったりするわけですが。
この諦念にどう立ち向かうかに関しては、三段階くらい、最終回の一つ前、第48話で描かれていたと思います。
第一段階。
まず、最初の一人。はなさんが立ち上がります。
この時のはなさんの言葉は、「諦めない」で、これはプリキュアシリーズ的には初代のなぎさとほのかの姿です。
どんなに絶望的な状況だとしても、人間には諦めないことを選ぶという心の自由がある。
初代『ふたりはプリキュア(感想)』〜『MaxHeart(感想)』で、最終回で雪城ほのかが口にする「わたし達の心の中の宇宙は誰からも自由だわ」(プリキュアシリーズのファンの間では有名な台詞だったりします)が、まだ死んでない。
メタには、最初は(プリキュアシリーズは)一作品だった。そして最初に、孤独にあえいでいた雪城ほのかさんが立ち上がった。
はなさんは「居場所・避難所・余裕」的なヒトなんだということを書きました。
一つ居場所が、避難所が立ち上がればどうなるか。
別な一人が、あるいは複数人の傷つき絶望しかけた人が、「やり直す」きっかけが生まれます。
第二段階。
本作では、プリキュア=「やり直し」のための居場所・避難所・余裕(が連想として重なる母的な存在)……ですから、一人が立ち上がると、他の現在過酷な現実の前にダウンしている複数も「やり直し」て立ち上がることができます。
はなさんの周囲、さあやさんやほまれさん、えみるさんとルールーさんが立ち上がって行きます。
「やり直し」のための「居場所・避難所」リソースが追加されたのです。
本当、やってることは『ドキドキ!プリキュア』の「幸福の王子と街の人たちメソッド」の2019年ヴァージョンなんです。
参考:ドキドキ!プリキュア感想/第47話「キュアハートの決意!まもりたい約束!」
一人の「幸福の王子」相田マナさんが配った宝石が、「街の人」を立ち上がらせて「次の幸福の王子」に変えた。「次の幸福の王子」がまた宝石を配って、その次の「街の人」をも立ち上がらせて……。「愛」の「街アカリ」は、連鎖的・波及的に広がっていく。
第三段階。
「やり直し」の「居場所・避難所」が連鎖して、「街の人」全員がプリキュアになります。
なんか、アンリくん近辺の話を中心に、プリキュア=自己実現と誤読して、ジェンダーの壁を超えて自己実現する様を描いたのが凄いんだみたいな浅い受け取り方がバズったりもしていた世の中ですが、
参考:HUGっと!プリキュア第19話がジェンダー論というよりメタフィクションである話(ネタバレ注意)
繰り返しになりますが、本作ではプリキュア=傷ついた人・想い描いていた未来が実現できなかった人たちの「やり直し」のための「居場所・避難所・余裕」です。
第48話でいえば正人くんがアンリくんを抱き支えてる描写こそがコアで、あれこそが、正人がついに傷ついた人(アンリ)を一時支えてあげられる(避難所になってあげられる)存在になったんだ、そういう意味で正人もプリキュアになれたんだ、という描写なのです。
「街の人」個人本体が連鎖的に「立ち上がる」展開は『ドキドキ!(感想)』〜『ハピネスチャージ!(感想)』〜『Go!プリンセス(感想)』の柴田P「幸せの王子」三部作でしっかり描いていたのですが、この「居場所・避難所」的存在、個人というよりは、空白・余裕(スペース)が連鎖して多弾道に出来ていくという展開は、中々に熱いものがありました。
「破綻」はあって、子育てに失敗とかはあるかもしれない。でもそういう時、「やり直し」のための「居場所・避難所・空白・余裕」がたくさん存在している世界なら、きっと何とかなる。子育ては一人でするものじゃないというメッセージを、ここまで昇華させていました。カッコいいと思います。僕も、ずっと親の介護とかしてる人ですが、「避難所・居場所・空白・余裕」というような意味合いでプリキュアになりたい。
今後結婚して子供が生まれるようなことがあれば、彼・彼女が失敗しても、「やり直し」ができるような存在として、プリキュアです! という顔で側に立っていたい。
最後に、メタフィクションとしての本作の結論もそこにつながります。これから先、視聴者のあなたも「破綻」を経験するかもしれない。想い描いた未来は実現できないかもしれない。
でも、それでも「やり直し」のための「居場所・避難所・空白・余裕」的な存在として、虚構だとしてもプリキュアシリーズは存在し続けていく所存ですヨ、と。
◇◇◇
最終回の時間ギミックに関しては、長年のプリキュア友人のRubyさん(Twitter)が考察してるので、こちらの記事をどうぞです。↓
本当、最終回終わってから一週間くらい仕事と子育ての合間にずっとえみるさんのこと考えておられましたからねw「感想:HUGっとプリキュア! 第49話(最終回):愛崎えみるは如何にして研究室に行ったか」 #precure https://t.co/FDqWNZ0bQJ
— RubyGillis (@RubyGillis) 2019年2月1日
僕的には本作の時空移動手段であるカエル列車が(15周年の歴代ネタもかけての)『魔法つかいプリキュア!(感想)』の列車(二つの世界の移動手段)のオマージュだとすると、未来分岐説もあるかな〜という気もしてます。
はなさんが闇落ちしない未来と闇落ちした未来(ハリー・ルールーら未来組が帰っていった方)があって、両者を移動できる(ラストシーンのハリーとトゥモローさん?)的な世界観もありかな〜みたいな。
Rubyさんは、僕がまとめさせて頂いたこちらのまとめも1万PV超えちゃってありがとうございます。↓(Rubyさんにはいちおう許可とってあります。)
1万て! という感じですが、でもこの感想ツイートけっこうじんときますよね……。「プリキュア視聴歴15年の今では父になったRubyさんがお子さんとプリキュアライブに参加した連続感想ツイートがしみじみと面白かったのでまとめてみた」https://t.co/7pwP7qNA4l
— トゥギャッター公式 (@togetter_jp) 2019年1月21日
がきてるみたいっ。ネットで話題のまとめだよ。 作成者:@sabishirokuma
そうそう、最終回まで観終わった今、春映画の感想を読み返してみると、けっこう色々分かると思うのでまた張っておいてみますね。こちらもよろしくです。↓
参考:
▼『映画プリキュアスーパースターズ!』の感想
●第1回〜ワンオペ母に手を差し伸べる朝日奈みらいの物語
●第2回〜悲しい過去も何とかなる物語
●第3回〜「幸福の王子」宇佐美いちかの物語
●第4回〜アニミズムとしてのプリキュアシリーズの物語
●第5回(最終回)〜過去の思い込みから解放される物語
クローバーくんの転生エンドとか、今思うと、かなりトゥモローさん物語関係の構造と重なる感じだったりするのですよね。
→Blu-ray@『映画HUGっと!プリキュアふたりはプリキュア〜オールスターズメモリーズ』@こっちは秋映画
→ボーカルベスト
ライブドアブログのトラックバック機能がなくなっちゃったので、長年の友人のプリキュア民(笑)たちの感想にもリンク張っておくよ〜↓
●HUGっと!プリキュア #49「輝く未来を抱きしめて」/『真・南海大決戦』
●HUGっと!プリキュア 第49話(最終回) 輝く未来を抱きしめて/四十路男の失敗日記
●HUGっと!プリキュア第49話(最終話)感想&考察/あおいろ部屋
あと、今年も実験的にしばらくコメント欄を開けておいてみるので、何かプリキュアの話とかありましたら〜。
そして、Twitterなどもやっておりますので、興味ありましたらフォローしてやってください〜。↓
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→前回:HUGっと!プリキュア第47話の感想〜はながイジメられてしまう構造の世界で「やり直し」ができるように愛を守る
→次回:スター☆トゥインクルプリキュア第1話の感想〜マルチヴァース宇宙観で描かれる大不思議世界への物語(ネタバレ注意)へ
→『HUGっと!プリキュア』感想の目次へ