ブログネタ
スター☆トゥインクルプリキュア に参加中!
 相羽です。

 『スター☆トゥインクルプリキュア(公式サイト@東映公式サイト@朝日放送)』第8話「宇宙へGO☆ケンネル星はワンダフル!」の感想です。

 ネタバレ注意です。
 ◇◇◇

 『映画プリキュアミラクルユニバース(公式サイト:音注意)』は公開初日に観てきて感想もアップ済み(こちら)ですが、毎回のごとく、二週くらいは感想記事中で映画の「コアな」ネタバレはなしの方向で(軽くは触れちゃいます)。その後は普通に言及していきます。

 ◇

 前回の感想のラストで、大気圏を抜けるまでは「物理宇宙」における「境界」を超える表現、でもそこから二段階目のワープする部分は、「物理宇宙」とは違う「宇宙」の「境界」を超える表現なのではないかというプチ考察を書いておりましたが。

 今話冒頭、やはり星空界、及び星空界へのワープ現象に関して、「謎」として言及されます。


 「解析不能のパワーが作用したようです」(AIさん)

 「それにしても、星空界って私たちの宇宙と全然違うのですね」


 「世界」について。「宇宙」について。物語縦軸レベルの「謎」にさりげなく伏線を入れてきます。今年のプリキュアはガチSFです。

 僕としては、第1話の感想で書いた通り、↓


スター☆トゥインクルプリキュア第1話の感想〜マルチヴァース宇宙観で描かれる大不思議世界への物語(ネタバレ注意)


 観星町がある地球はまあ通常の物理定数で形成されてる普通の「宇宙」。星空界がある方は、何らかの「多元宇宙(マルチヴァース)」的「宇宙」観にもとづく、通常の物理定数にとどまらない「想像力」が貫入してくる未知の可能性に開かれた「宇宙」……みたいなざっくり予想をしております。

 そんな感じで、不思議宇宙での冒険が始まる今話なのですが、

 例年、その年のTVシリーズ本編のテーマも圧縮されてる春映画を観てみると、どうも今作は、たとえば「宇宙(心の「宇宙」含む)」と「宇宙」の「分断」を繋ぎ直す……みたいなテーマがありそうだ……という話を春映画の感想で書いておりました。↓


参考:映画プリキュアミラクルユニバースの感想〜分断された宇宙を接ぎ直す物語(ネタバレ注意)


 遠い「宇宙」で災害(のような出来事)が起こり、「分断」が生じてしまう。

 その「分断」をプリキュアたちが繋いで、少しずつ大事な「何か」を取り戻していく……みたいなストーリーラインですね。

 (今のところ)平和な観星町はリアルなら東京とかの大都市圏。災害が起こった「分断」された場所(映画だったら惑星ミラクル、TVシリーズ本編ではスターパレス)というのは、これは僕が東北は宮城在住だからというのもありますが、リアルだったらたとえば「分断」された被災地……というようなことも考えてしまいます。

 だから僕なんかは、番組的には販促も兼ねたストーリーフォーマットでもあるとは分かりつつ、失われたプリンセススターカラーペンが取り戻されて、スターパレスに「(かつてあった大事な)何か」が戻ってくる度に、わりと涙しております。生じてしまった「分断」に対して、取り戻してもう一度「星座(「想像力」の象徴)」を描き直す……というニュアンスなのです。おうし座のプリンセス可愛いですよね(え)。

 そんなこんなで今回から始まる不思議「宇宙」探索編でも、何かと「分断」を繋ぐ……がキーになっていたように思います。

 今話ですと、「ケンネル星」の現地住民と、訪れたひかるさんら(プリキュアたち)との間には「分断」があって、そこをどう繋いでいくのか……みたいな話ですね。

 「分断」を繋ぐ描写の一つ目、これはひかるさんのダイナミック可愛がりのシーンとかです。地球人と宇宙人には「分断」が……みたいな話を素で無効化して、ひかるさんはケンネル星人のドギー、マギー、ネギーを可愛いと思ったので、いたってナチュラルに親愛の情を示します。けっこう激しく。

 ララの触覚をナチュラルに受け入れる、カッパードさんを初見でカッコいいと言う、アイワーンさんの単眼に何も突っ込まない……と、ひかるさんが外見にこだわらない人である描写がこれまで積み重ねられておりましたが、

 何だか犬的な「ケンネル星」のあいさつにアクティブにチャレンジ、骨の雨が降ってきても「キラやば」ですます……などはその延長線上の描写かと思われます。違う「宇宙」をナチュラルに観る女なのです。

 二つ目は、とは言っても違う「宇宙」を「観る」だけでなく「理解」するのは中々大変……と、「分断」のガチさが描かれるパートで、こちらはかなり風刺に満ちています。遠い「宇宙」。違う「宇宙」。「理解」してるようで、「理解」してなかった。

 今話のストーリー後半に関してはTJさん(Twitterブログ)の感想が詳しいです。↓

 TJさんの感想で注目したいのは二点。

 一つ目は、今話は「毛」という「外見」の「観え」方を題材にして、これまで髪の毛がないカッパードさんをバカにしていた視聴者がいたとしたら、ほらほら「ケンネル星」の方々が「毛」がない地球人のひかるさん達を低評価してるけど、それってあなた達みたいだヨね……と描いているということ。

 価値観は文化圏によって、あるいはどちらの立場に立つかによって変容する……という点に風刺的な一話になっているという話ですね。

 言われてみると、今作の敵さんたちは、カッパードさん=頭、テンジョウさん=鼻、アイワーンさん=目……と、「外見」に捉えようによってはネガティブに捉えられる特徴を持ってます。その流れの延長線上に、今回の毛があり過ぎる「外見」の「ケンネル星」の住人たちが登場してきたという感じです。

 「外見」をネガティブに笑ったりするのってどうなのか? リアルの世の中にも、はげている人とか、目が見えない人とか、身体に欠損がある人とか、いるのに?

 毛があり過ぎても(「ケンネル星」の人)、なくても(カッパードさん)、ナチュラルにカワイイ、カッコいいって言えるひかるさんが、やっぱりカッコいい部分です。(ただし、春映画を観てみるに、ひかるさんはあんまり「理解」まではしていない。)

 二つ目は、今話は「全体のために部分を、マジョリティのためにマイノリティを犠牲にするのか?」という話でもある点。

 「顔を合わせて笑顔になれたら、もう友達なんだけどな」、うんうん、口では言えるヨね。被災地、沖縄、みんな絆です!

 でも実際に自分がマジョリティ側に属していて、マイノリティを犠牲にすることで自分が利益を得るという場面で、本当にマイノリティのことを考えられる?


 「宇宙の平和とどっちが大切でプルンス!?」(プルンス)


 プリンセススターカラーペンを強引に奪えば、宇宙というマジョリティは救われ、そこに属しているえれなさんも利益を得られる。でも、そのために地域住民の「ケンネル星」の人々の心を犠牲にしてイイのか?

 えれなさんの結論は、


 「それでも私はペンを守る」(天宮えれな)


 一度口にした綺麗事を、本当にするように。こういう流れで、えれなさんはやっぱりプリキュアなんだなと思わせてくるのは上手いです。ちなみにペン=「想像力」を具現化していくものですから、この台詞は「想像力」を守るというニュアンスにもなってます。

 プリキュアシリーズは、土着の神とか大事にしていく方向です。

 全体のために地域を犠牲にしない。強引な神社合祀政策で地域の小さい祠(ほこら)などを消してしまった明治政府のようなことはやらないという方向性です(え)。

 もともと、えれなさんは「家族」が一番大事な「小さな共同体」派の人なので、もう、生き方として「小さな共同体」を犠牲にできないのですね。遠い「ケンネル星」という共同体と、近い地球にいる「家族」という共同体は、イマジネーション(想像力)があれば結べてしまえるのだから。

 ですが、実際のところ、その「理想」を追う道はえれなさんに負担がかかります。

 僕としては、「理想」を追う人なんだという気高さからもう一歩いって、数カット迷い、苦悩の表情のえれなさんも映ってる部分に、でも、一人で全員は助け続けられない……というえれなさんが背負ってる命題のようなものも感じてしまったりします。

 第4話の感想、


スター☆トゥインクルプリキュア第4話「チャオ!きらめく笑顔☆キュアソレイユ誕生!」の感想(ネタバレ注意)


 で、えれなさんは近年のプリキュアシリーズの「幸せの王子と街の人たち」モチーフの文脈も継いでる人っぽいという話を書きました。

 「みんな」を笑顔にする人。でも、えれなさん一人で世界の全員を幸せにしたりはできない。いつかえれなさん自身が擦り減って倒れてしまうかもしれない予感も付きまとってしまう。宝石を配り続けて、最期に自身は溶鉱炉行きになったオスカー・ワイルドの「幸福の王子」のように。

 えれなさん一人では限界がある。家族も遠い星の住人も、日常も被災地も助ける的な、「理想」は一人では背負いきれない。物語のどこかで、まどかさんが助力してくれるようになったり、「とうま君」が立ち上がってくれたりするのかもしれない。でも今はまだ……というところで、まさかのプルンスがえれなさんを手助けしてくれる展開。


 「毛のおかげで怪我しなかったでプルンス。モジャモジャ、意外と悪くないでプルンス!」(プルンス)


 えれなさんの「ケンネル星」の人たちも尊重しようとする態度は、嘘じゃないんだと証明するように、自ら毛生え薬でモジャモジャになって、相手の価値観に「理解」を示します。なるほど、毛もイイね!

 ついマジョリティの傲慢さを見せてしまったプルンス本人が考えを改めて助力してくれるなら、マイナスがプラスになったようなものなので、これは「理想」を目指していくにあたっての大いなる「リソースの追加」です。

 ちゃんと傲慢だった自分を反省して行動を修正する、プルンスが超カッコいい。

 現時点のカッパードさんと違って、プルンスには相手の立場になって考える「想像力」があったんだよ。

 そんな感じで、今話は「想像力」で「分断」を繋ぐ話。

 ラスト。「想像力」で相手の立場に立つのをがっつりやった結果、自分も毛をはやしてみたプルンスが、ちょっとギャグチックに元に戻ります。

 微妙なニュアンスですが、でも自分自身に還っていくエンド。

 「宇宙」での「境界」の向こう側の非日常の旅を終えて、日常、いつもの自分の状態の戻ってくるというニュアンスを感じます。

 「冒険」の後、帰宅時間が訪れたら帰ってくるということ。メタに、虚構から現実に帰ってくることも含意してるっぽく、日常からの逃避で異世界で無双する近年の「異世界転生」ものには、そこはかとなくノーと言ってる部分のようにも思えます。「異世界転生」とかじゃないんだよ。『ドラえもん』なんだよと。

 「ケンネル星」に降り立つ時に、「足跡をつける」(=未踏の地と勝手に決めつけて支配するニュアンス)のにひかるさんが失敗するというのも示唆的です。異世界を支配するのではなく、「理解」していくということ。

 TJさんがあげておられた『モジャ公』は未読なのですが、こういった誠実さは、『大長編ドラえもん のび太の宇宙開拓史』にも現れているように思います。(『大長編ドラえもん』は「のび太と夢幻三銃士」まで全部読んでる)

 いつか「境界」の向こう側への扉が閉じるかもしれない。でも、一抹の夢めいた冒険で、相手の「宇宙」に対して誠実であることなんだよ、「理解」しようと努めることなんだよ、と言っているように思えます。

→『モジャ公』

藤子・F・不二雄大全集 モジャ公
藤子・F・ 不二雄
小学館
2012-01-25


→『大長編ドラえもん のび太の宇宙開拓史』



 ライブドアブログのトラックバック機能がなくなっちゃったので、長年の友人のプリキュア民(笑)たちの感想にもリンク張っておくよ〜↓

スター☆トゥインクルプリキュア 第08話「宇宙へGO☆ケンネル星はワンダフル!」/真・南海大決戦
スター☆トゥインクルプリキュア 第8話 宇宙へGO☆ケンネル星はワンダフル!/四十路男の失敗日記
スタートウィンクルプリキュア第7・8話感想&考察/あおいろ部屋

 あと、今年も実験的にしばらくコメント欄を開けておいてみるので、何かプリキュアの話とかありましたら〜。

 そして、Twitterなどもやっておりますので、興味ありましたらフォローしてやってください〜。↓

管理人(相羽)のTwitter

→前回:『スター☆トゥインクルプリキュア』第7話「ワクワク!ロケット修理大作戦☆」の感想(ネタバレ注意)へ
→次回:『スター☆トゥインクルプリキュア』第9話「友情のリング!スタードーナツ☆」の感想へ
『スター☆トゥインクルプリキュア』感想の目次へ