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 相羽です。

 『ヒーリングっど♥プリキュア(公式サイト@東映公式サイト@朝日放送)』第1話「手と手でキュン!二人でプリキュア♥キュアグレース」の感想です。

 ネタバレ注意です。

 第15話まで視聴済みのあと、改めて第1話を観て感想を書いております〜。
 ◇◇◇

 今更ですが、改めて第1話を観てみるに、ラビリンとダルイゼンは面識があるんですね(お互いがお互いを知っている前提で会話をしている)。

 それ以外にも、今回ののどかがキュアグレースとなった時間軸の他にも、「過去」に色々とあった……という膨大な遠景が背後にある作品だというのが伝わってきます。

 ヒーリングガーデンが侵攻(?)された時にラビリンとダルイゼンは面識があったのかなと思いますが、問題はそれよりもずっと以前、「古(いにしえ)」と呼称されている頃にさらに「何か」があったらしいという点です。

 第1話でキュアグレースに変身したのどかに対して、ダルイゼンがこう述懐しています。


 「あの古(いにしえ)の? いや、人間がそんなに長生きできるはずない。あいつは別人だ」(ダルイゼン)


 第14話「元気発見!すこやかフェスティバル!」を観た後&事前広報を知っている……だと、この「あいつは別人(つまり他にプリキュアがいた)」は昔(江戸時代くらいの印象を現在だと受けています)「すこやか市」相当の場所にいた風鈴アスミ=キュアアースのことであろう……というのは想像がつくのですが。

 より踏み込んで考えてみるに、第14話で風鈴アスミの(と思われる)存在が述懐されたところで印象的なのどかのカットが時間をとって入る点。

 第1話を見返してみると、のどかが「すこやか市」にやってきたのは偶然ではなく、なんらかの必然があったような雰囲気が随所に感じられる点。

 以上から、のどかは古(いにしえ)に「すこやか市」であった「何か」の縁者、という仮説を僕は考えてみたいと思います。

 ED曲が「ミラクルっと♡Link Ring!」で「ヒー『リング』っど」と「輪」もモチーフの作品のようだったりもして。

 回転を多用するED映像に円状のメロディベル、春映画『映画プリキュアミラクルリープ』の題材(ループ、繰り返し)的に、物語の縦軸に「円環」の要素がある作品なのかもとも思っています。

 だから、(のどかの?)「輪廻」ネタとかなのかな? と思ったりもしますが。

(近年の創作で「ループ」ネタと絡めながら描かれる「輪廻」ネタと、病気やウイルスも含めた地球全体の循環(これも「回る」が視点の一つとなりそう)系的なネタを、同時に「円」的なモチーフで描こうとしているのだとしたら、すごく壮大な設計の作品です……。)

 ずっと、Twitterでの初期の感想から、『ヒーリングっど♥プリキュア』は(テーマ的に)『ドキドキ!プリキュア(感想)』っぽい作品だということを書いてきました。

 第1話、ワンちゃん(ラテ様のこと)を助けにいこうとする少年に、母親が、


 「まず、ゆう君が逃げなきゃ」


 と諭してその場を離脱するシーンがあります。

 ワンちゃんを切り捨てて、少年が助かる。それは、しょうがないことだ。

 犬、ということで、どう考えても『映画ドキドキ!プリキュア マナ結婚!!?未来につなぐ希望のドレス!』を本歌取りして、マシュマロを切り捨ててお祖母ちゃんのもとに走った幼相田マナさん……という文脈を意識している作品に思えてしまいます。


参考:映画ドキドキ!プリキュア マナ結婚!!?未来につなぐ希望のドレス!/感想(ネタバレ注意)


 そのワンちゃん(ラテ様)に対して、のどかが、


 「大丈夫、私はもう、走れる」(花寺のどか)


 って言って助けに行くんですね。

 というか、のどかは行っちゃう子として描かれているのですね。

 そして、


 「決めたじゃない。今度は私の番」(花寺のどか)


 と、プリキュアに変身する。

 今のところ主人公の花寺のどかさんが、『ドキドキ!プリキュア』の相田マナさん以来くらいの勢いで「一人では破滅してしまう」主人公のような気がしていて。

 相田マナさんが「こんなにも優秀でもマシュマロを助けられなかった」という動機の主人公像なのに対して、花寺のどかさんは「こんなにも優秀でない私が助けられてしまった」という動機の主人公でありそうと感じます。

 この先誰が、あなたは助けてもらって良かったんだよ、たとえ恩返しで自分の価値を証明し直さなくてもってのどかに言ってあげるんでしょうね。想像するだけでドラマティック。

 彼女は病気で動けなかった、そして助けられた経験から、いわばその反動で強い衝動で「人助け」をやっていくんですが、その過度の献身自体がのどかの(精神的な)病でもあるみたいな話で。

 病であったことは変えられないし、今も病んでいるとしても、それはそうとしてそれなりに生きていく……というお話になっていくのかなと今のところ感じたりしております。

 ちょっと、『HUGっと!プリキュア』っぽくもあるんですよ。


参考:HUGっと!プリキュア最終回の感想〜「やり直し」に必要な居場所としての母(=プリキュア)を描く(ネタバレ注意)


 病気が治った、万歳! という方向を押していくというよりは、病であったことは変えられない、病で負っているハンデ自体はどうにもできないかもしれない、でも、「当初イメージしていた理想の自分」とは違う人間なりに、生きていけるはずだ、という。

 相田マナさんのような凄い人間になれなかった人間だとしても、この世界でやれることはあるはずだし、それはやっていいはずだ、というような。

 『ドキドキ!』第2話(感想)で真琴(犠牲になる側の存在)を助けるために躊躇なく命綱なしでタワーから飛び降りた相田マナさんもたいがいですが、病気のハンデを背負っていた身でラテ様を助けにいってしまう花寺のどかさんもたいがいです。

 この「犠牲」に対する姿勢から考察できそうなのは、昔(江戸時代くらい?)「すこやか市」相当の場所で疫病が流行った頃(第14話より)に、村には「犠牲」になった人間がいて、のどかはその何らかの縁者、という説です。

 もともと、リアルの方でもいわゆる「橋姫伝説」のように荒ぶる川を沈めるために少女が人身御供(ひとみごくう)になった的な伝承はけっこうあり、これまで「犠牲」を前提に進んできたこの「世界」に対する、何らかの祈りの作品であるという可能性はありそうです。


参考:『橋姫影物語』/カクヨム


 そんなのどかがキュアグレースになった、プリキュアになった初攻撃が、踵(かかと)落としなんですよ。

 これは、『ドキドキ!プリキュア』最終回(感想)のパルテノンハートの攻撃も(ジョー岡田さんのビッグバン発言も炸裂する!)踵落としだったのを思い出す……というか意図して重ねてたりするんじゃないのかなぁ。

 いや、踵落としは『ふたりはプリキュア Splash☆Star(感想)』で美翔さん(キュアイーグレット)もしょっちゅうやってたし、プリキュアとしてはメジャーな技ではあるんですけど。

 パルテノンハートの1/100くらいの威力しかない踵落としかもしれませんが、相田マナにはなれなかった人間の、相田マナ(的な、「幸せの王子」的な人に)に助けられてしまった自分にどこか負い目を感じてる人間の、再びの(犠牲を出すことで成立している)「世界」に対する疑義を表明する一撃としての踵落としで、戦いの幕開けなのだとしたらとても熱い演出です。

 どうやったらマシュマロ(犠牲になる存在)も共に生きていける世界が可能なのか?

 は、『ドキドキ!プリキュア』TVシリーズ本編でも一定の解答を描いていますし、続く柴田Pのいわゆる「『幸福の王子』三部作」、『ハピネスチャージプリキュア!(感想)』、『Go!プリンセスプリキュア(感想)』でも扱っている題材で、それぞれかなりの程度踏み込んで解答を描いています。

 また、さらにその後の2018年の15周年映画『映画HUGっと!プリキュア ふたりはプリキュア オールスターズメモリーズ』では、同じく「犠牲になる存在」的なポジションに対するミデンに対しての、一定の解答が描かれています。↓


参考:映画HUGっと!プリキュア ふたりはプリキュア オールスターズメモリーズの感想〜子供の頃に思い描いた理想の自分にはなれなかったとしても(ネタバレ注意)


 しかし、リアルのこの状況(2020年)で、改めて花寺のどかという決して強い人間ではない主人公をそえてこの題材を扱うのか、という点に創作としての高鳴りを感じます。

 ワクチンが開発されたとして、自分を後回しにして他人に打ってもらうことは、救いなのか?

 逆に、ウイルスそのものが要因にしろ、経済危機的な要因にしろ、「犠牲」を前提に考えなければ「世界」は成立しないというのは、「しょうがない」ことなのか?

 そういった事項に対して、16年あまりのプリキュアシリーズ文脈と、ある種の日本的「かわいい」文化にまで繋がった歴史と、そして輪廻に循環系に人体の謎にといった遠大な遠景を築き上げながら、花寺のどかという「病気だったけれど助けてもらった女の子」という、「犠牲になりかけたけど助けられたので(未来は)未知数」という主人公が相対していくという、非常に面白いシリーズだと思っているのでした。

ヒーリングっどプリキュア Blu-ray vol.1
白石晴香
ポニーキャニオン
2020-09-16


→前回:『スター☆トゥインクルプリキュア』第49話(最終回)の感想〜胡蝶の夢とイマジネーション世界(ネタバレ注意)へ
→次回:『ヒーリングっど♥プリキュア』第22話「ラテ逃げないで!消える体と芽生える気持ち」の感想へ
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